第7話 金策狩り 初日①

狩り初日の朝は早い、五時起床の六時冒険者ギルド出発だなんて、『遊び人』には辛すぎるんだぜ?

 だが今日中にクルトとターシャに実力を認めさせるのと、GランクからDランクに上がるだけのモンスターを狩りたい俺にとっては、時間がいくらあっても足りないのだ。


 冒険者ギルドが開く時間の六時にギルドに来ると、すでに冒険者が沢山いた……普通こんな時間から狩りにでる真面目な冒険者は少数なのだが?

 何この町の冒険者たち、ちょっと勤勉すぎません?

 まあ、察するになにか緊急クエストでも発生しているんだろうけども、Gランク『遊び人』の俺には関係のないことだ。


 見知った顔も何人かいる、この町のAランク冒険者のイケオジのヴェルナーさんや、やんちゃ盛りのガルクさんやらだ。


 ガルクさんと目が合うと、こちらに近づいてきた。

 おっおっお?なんだなんだ?昨日の続きやるってのか?

 

「エラム、昨日は俺が全面的に悪かった、この通りだ許してくれ」


 といって頭を下げてくる綺麗なガルクさん。

 

「ちょっと色々問題があってな、昨日は飲み過ぎていた、だがもう同じ過ちは起こさない、今は前を向くしかないからな、貸し一つってことで手打ちにしてほしい。頼む。」


 俺は元々根に持つタイプではない……

 いやまて、一生根に持つタイプ?

 やられたら絶対にやりかえすタイプだな俺……

 でも謝られてはしょうがない、酒に流すしかないってやつだろう?


 でもねガルクこれだけは言っておくぞ、酒の過ちは繰り返す!


 まあこの町で有力っぽい冒険者に貸し一つ作っておけるのは美味しいかな?

 でもあと三日で去る予定なんだが?その貸しかえしてもらえるんでしょうか……

 なんなら現金払いにしてもらってもいい?


「気にしないでください、酔っていたならしょうがないですよ、酒に流しちゃいましょうなんてね!それにしてもガルクさんのパンチは痛かったなぁ……それより何かあったんですか?こんな朝早くにこんな大勢の冒険者が集まってるなんて?」


 どうせ貸すなら大きく貸そう、痛かったアピールは入念にね。


「助かる……ちょっと俺のPTメンバーに色々あってな、まあエラムは自分のクエストをがんばれよな、クルトはあれで冷酷なところあるからな、見込みがないと分かれば容赦なく切られるぜ。今日はどこで狩る予定なんだ?」


「西の森にしておきますよ、一応まだGランクなんでね、ガルクさんのランクBまですぐ上げるから待っててください。」


「そうだったな、SSランク目指してるんだったな……うん、西の森には今日は冒険者は近づかないだろう、ほとんどが東の方角へ向かう、あの森ならクルト達さえいれば滅多なことはおきないだろうが、増援もないと思って気を引き締めておけよ。」


 なにやら大規模なイベントが勃発してるのは間違いないのだが?

 今のところキーワードは「ガルクのPTメンバー」「東の方角」あたりしかないけども、遊び人としての血が騒ぎだしてるんだが?

 俺に声がかからないのはなんでなんだい?

 新参者のGランクの『遊び人』だからですね、よくわかります。


――――――――

 

 俺は俺のクエストをということで、クルトたちと合流して西の森に到着する。

 歩いて2時間走って1時間のところをちょいと速足で40分で到着したが、二人とも無事についてきた。

 身体能力はCランク冒険者基準はちゃんとあるようだ。


「ハァハァ……エラムさん結構走り込みとかやってたんです?Gランク冒険者とは思えないスタミナですね。」

「ハァハァ……もう限界かもークルト今日は回復精度落ちるかもだから気を付けて動いてね。」

 

 クルトもターシャも少し息が上がっているが、しゃべれるなら問題ない。

 さあ、休む暇なんてないんだよ、狩りのお時間です。

 

「二人とも良くついてきたね、でも本番はこれからなんだぜ?では狩りを行う前にクルト君に質問です、この森で一番警戒すべきモンスターはなんですか?」


「この森唯一のDランクモンスターのホワイトタイガーです。」


 ふーん、ホワイトタイガー出るんだ?

 勉強になったわ!


「そうだね、では次にターシャさんに質問です、クルトとターシャ二人で狩る場合ホワイトタイガー何体が撤退基準となる?」


「三頭です、二頭までなら一人が一頭ずつ相手にできますが、三頭いて2対1になってしまうと不測の事態が起こる可能性が高くなります。」


 そっかー、三頭までいけるのね?

 勉強になったわ!


「そうだね、自分より格下のモンスターだとしても、囲まれるとまずい、今回はホワイトタイガー三頭見かけたら二人は撤退して俺に任せるように!」


「はい!」

「はい!」


 二人とも聞き分けのいい子だ!

 ってついつい宮廷魔術師として魔術学園の生徒に教える感覚で話してたけど、試される大地にいるのは俺の方だったわ。

 二人も違和感なくサクサクついてくるのでこのままサクサクいこう!

 

「じゃあ早速狩りを始めようか?まずはクルトたちからお願いね。狩りの基本は索敵だけど、今回は省略してここに呼び込むことにします、ジャンジャン呼ぶからジャンジャン倒してみよう。全部格下だからサクサクでね。」


「え?モンスター探さなくていいの?それは楽ちんですね。」

「でも、沢山来ちゃうとあぶないのかな?」


 森や平原でモンスターを狩るときは、まずは見つけることが大切になる、先に見つけ奇襲攻撃をしかければ格上モンスターにだって大ダメージを入れることができる。

 索敵は目視でしてたんじゃ効率が悪いので、スキルや魔法で索敵することになるが、上位のモンスターだと索敵した段階でこちらの存在に気が付かれることもある。

 でもこの森は初心者用モンスターしかいないことは分かっているのでジャンジャン呼んでしまうことにする、それを可能にするスキルが遊び人にはある!


 遊び人固有スキル『口笛』:使用中、口笛がとってもうまくなるもの!

 俺の口笛があれば、そこらの酒場で口笛服だけで吟遊詩人の真似事で食べていくことだってできる素敵スキル。

 おまけとして、モンスターの好む音色を出してやることで、モンスターを集めることができる自殺スキル。


「ぴーひゃらららら~~~ぴーひゃらららら~~~」


 ちょっと間抜けだが、モンスターが好む音色が森ににこだまする。

 最初は手加減気味に半径100mくらいの範囲で呼ぶこととしたんだが………

 なんだか今日は口笛の調子が良かったようだ、森中に響き渡った気がするが気のせいか?


「残念なお知らせがある、スキル調整に失敗した!モンスター呼び過ぎた気がする!」


 俺が伝えるとすぐに、クルトとターシャの二人は地面に耳を付けモンスターの足音を確認する。


「北の方角からモンスター100体くらい来てるね」

「南からは50くらいです、ちょっと多すぎるわっ!」


 クルトとターシャが伝えてくれる。

 やはり思ったよりいるなあ……

 俺も地面に耳を付けてみる、うん?さっぱり判らんぞ。

 

 俺は立ち上がって遊び人スキルを発動する。

 遊び人固有スキル『地獄耳』:使用中、耳が良くなるもの!

 どんな小声でささやかれる悪口や噂話も聞き漏らさない、井戸端会議大好き遊び人には必須な素敵スキル!

 とんでもなく耳が良くなるので、おまけとして、探知魔法替わりともなる。


「二人ともいい耳してるな、北から125体ほどで南が40体だな、北の125体は俺が先回りして狩ってくる、二人は南からくる40体の対応を頼む、俺が戻るまでは守り重視で命を大事にな!」


 大規模なモンスタートレイン状態になっているが……何も慌てる必要はない、だって全部雑魚なんだもの。

 遊び人が同じ狩場にいたらモンスタートレインに巻き込まれかねないなんて馬鹿げたこと言うやつが昨日の冒険者ギルドにはいたが……あながち馬鹿ではなかったようだな!

 つーか地味な前振りだったか!

 君の実力、見直しておこう……

 

 だがしかし、敵が雑魚で余裕だってのは、俺一人だった場合の話……クルトとターシャというCランク冒険者にとっては囲まれたら命の危険が出てくる数だろう。


 実はちょっと焦ってます(汗

 

「北をエラムさん一人で持つなんて無茶です……ここは三人固まって少数の南から対処しましょう」


 クルト良い判断だ!俺が同じCランク冒険者ならそうするべきだろう。

 残念だが俺は駆け出しのGランク冒険者で職業は『遊び人』だ!

 常識は通用しないんだぜ。


「クルト良い判断だが、囲まれると低級モンスターとはいえ危険だ、北は俺に任せておけ。南を抑えきれないと判断したら徐々に北ににげてくるんだ!危険な方は俺が受け持つさ、呼び過ぎたの俺だしな!」


 っというと俺は北に向かって駆け出す、決して逃げるわけじゃないんだから?

 南からくるホワイトタイガー五体+雑魚モンスター35体はクルトに任せたんだぜ。

 二人の撤退基準は確かホワイトタイガー十体のはずだ、きっと確かそうだった、だからきっと大丈夫!

 急げ俺!


「ってエラムさんちょっとまってー--ってもういないっ!逃げ足は速すぎぃ!」


 クルト君僕は逃げてません!

 敵に向かって逃げるなんてことは馬鹿のすることなんだぜ。

 あとまだ遊び人スキル『地獄耳』でばっちり聞こえてますから!

 

「お兄ちゃん……エラムさんのあのスピード、只者じゃないのは確かだと思うの」

 さすがターシャちゃん!

 

「そうだね、SSランクを目指すっていうエラムさんを信じて僕らは南に専念しようかぁ、ホワイトタイガーがいたらちょっと困るけど雑魚モンスター40体ならなんとかなるでしょ」

 そうだクルトお前は男だ、ホワイトタイガーいるけどなんとかしろ!


 「うん、戦い方はどうする?」


 「そーだね、殲滅速度重視、ホワイトタイガー以外は急所にあてれば一撃でやれるはずだ、昔のスタイルに戻そう!」

 「分かった、感が鈍っていなければいいのだけど……」


 そうして僕らの戦いは別々の場所で始まった、マジですぐ戻るから待ってて!

 あと昔のスタイルってなに?今のスタイルも知らないんですけど??

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