第6話 狩り前夜の話し合い

 そうして、CランクPTの『暁の剣と盾』の二人に保護者のように付き添われて、彼らの宿までやってきた。

 幸い部屋はまだ空いており、俺用に一部屋借りることができた。


 うーんなんていうか…安宿!

 一応貴族で、一応宮廷魔術師で、一応第三王子のPTメンバーだった俺は普段は結構……いやかなり、宿や食事には金を使う派なのでちょびっと新鮮、「衣食住足りて礼節を知る」っていうしね、王子の教育の為にも必要なのよね、PT資金の無駄使いなんて絶対いわせないんだから!

 普段冒険中はテント生活になることが多いので、休めるときに休んで食べられるときにはしっかり食べるのが良きなのである。

  

「改めて初めましてエラムさん!クルトです、今日から宜しくお願いします。」

「はっ初めまして、ターシャです、宜しくお願いします。」


 金髪ボーイのクルト君が挨拶をしてくれる。

 金髪ガールのターシャちゃんからも恥ずかしがりながら挨拶をくれる。

 俺のイケメンがもうハートに火を灯してしまったかな?

 すまないが対象年齢外だ!


「うん……色々迷惑かけたみたいだね、助かったよ。」


 本当は自分で助かる予定だったんだけどね、君のお陰で色々台無しだクルト君!

 だがその年にして弱きものを助けようとするなんて、どこかの近衛王国騎士団序列七位のリーシェさんにも見習せたいものだぜ。


「ガルクさんも普段は面倒見のいい兄貴的な性格なんですけど、最近良くないこともあって、お酒が悪い方向に働いちゃったみたいですね、僕からも謝るから許してあげももらえませんか?この通りお願いします。」


 クルト君が頭をさげて、それを見たターニャちゃんも追うように頭を下げてくる。

 なんだ酔っぱらってたならしょうがないよ?

 無礼講無礼講!

 なんていうと思います?

 こちとら、防御力下げすぎてから殴られたから思いのほか痛い思いしてるんだ、この痛みは忘れない!


「まあ、気にしないでくれ、冒険者ギルドの中で『遊び人』を伝えたんだ、殴られる覚悟くらいあるさ、まーったく気にしない気にしない気にしないぞおお!それより明日からの狩りの前に軽く自己紹介でもしないか?」


 なんか宿までついてきちゃってるけど、君たち何者なんだよ!

 どっかの組織的誘拐犯じゃねーかと今でも疑ってるんだが?


「それもそうですね、僕はクルト職業は「重戦士」年は14歳ですがCランク冒険者です!っていっても先週Cランクにあがったばかりで、まだCランククエストはこなしてるわけではないんだけどね。二人PTだから僕が前衛全般を担ってます。見ての通り俺とターニャは双子の兄妹です、その分意思の疎通や連携には自身があります。」


 クルト君が『重戦士』だとっ!

 重戦士は分厚い甲冑に覆われ、PTでタンクの役割をこなしつつ、ドでかい武器を担いで大ダメージを繰り出すPTの花形的職業である。

 そしてその性質上大抵はゴリゴリのマチョマチョマッチョがその職に就くことになる。

 ああ、クルトは今はまだ14歳と若いから体の成長が職業についてきていないのだろう。

 将来的にはクルトもゴリマッチョになるんだろうなあ……ウホッ!


「わっわっわたしはターニャと言います!年はクルトと同じ14歳で職業は『回復魔術師』PTではいつもクルトの影でおびえてばかりで攻撃はほとんどできないんですけど、回復魔法と支援魔法を少しだけ使えます。」


 ターニャちゃんは『回復術師』かあ、かわいいなあ、似合ってる似合ってる、こんな子に回復されてたらさぞかし癒し効果が高まるだろうなあ!


「俺はエラム職業はなにを隠そう……『遊び人』だ!」


 どーだ驚いた?

 って冒険者ギルドでさんざん言いふらしてたわ!

 普段秘匿してるから、なんだかね、もったいぶりたくなるんだよね。


「年は19歳、訳あって冒険者になった、深い事情は追々話すよ。狩りでは、まあ前衛後衛なんでもできるよ。って口で言うのはた容易いけど、信用されるとも思っていない、明日の狩りで実践するから楽しみにしていてくれ」


 事情が深すぎるので3日程度一緒に行動するクルトたちに事情を話すつもりはない。

 だが『遊び人』としての能力は見せつけるつもりだ。


「そうですか、『遊び人』どんな職業なのか気になりますね、で明日からの行動なのですが……」


「明日は西の森に行く、初級モンスターしか出てこない森だ、そこでクルトとターシャの力量を見せてもらおう、西の森でモンスターを乱獲して初日で一気にGランクからDランクまでギルドランクを上げるつもりだ。結構ギリギリのスケジュールだから、休憩は各自で取る、モンスターのドロップ品は倒した人のものとしよう。」

 

 一気にまくしたてる……

 クルト達には悪いが明日からの予定は俺の中で決まっている、それにクルト達が付いてこれるかこれないかが問題なのだ。

 ソロで予定していた通りの予定を貫き通す所存である。

 

 「一日で一気にDランクを目指すんですか?そんな無理だ……」


 クルトが絶句するが気にしてられん、二日目三日目の予定も話してしまう。


 「二日目はCランク昇格クエストの一つ『ホワイトタイガー討伐×10体』とBランク昇格クエストの一つ「レッサードラゴン討伐×10体」両方を達成できる可能性がある、東の大森林にいく、ホワイトタイガーは一緒についてきてもらって構わないが、レッサードラゴン討伐はまだ君たちには荷が重いクエストになるかもしれない、ここらでお目付け役を辞退してくれると助かるかな。ちなみに三日目はAランク昇格クエストの達成を目指すが、一日で終わりそうなクエストがなかった。ここはレッサードラゴンの乱獲し納品物量作戦でギルマスに直接交渉を依頼するつもりだ。」


 クルト君とターニャちゃんがポカーンとした顔をしている。

 どうした?

 俺はSSランク目指す『遊び人』だぞ、これくらいできないでどーするよ。

 

「……みっみっみ三日目でAランクを目指すなんて無茶苦茶です!ガルクさんの言う通り『遊び人』なんて……冒険者になるべきじゃない………いや、僕は自分からエラムさんの面倒を見るといったんだ、最後まで見捨てることはできない、最悪ギルドマスターに止めてもらうしかないか……あうあうあうぁーどどどどうしよう」


 クルトが錯乱している。

 

「エッエラムさんさん、そんな無謀な計画じゃ死んじゃいますよぅ!……あうあうあうぁーどどどどうしよう」


 ターシャは錯乱している。


「大丈夫だ、俺は問題ない!それより自分たちがどこまでついてこれるかシッカリ考えておいてくれ、計画を変えるつもりはない、危ないと思ったら俺の方から二人を切ることになる、せっかく俺についてくると言ってくれたんだ、ついてこれるもんなら最後までついてくるがいいさ。」


 俺は俺で二人に興味深々だ、14歳という若さで冒険者をやっていてCランクまで上がっている奴なんて今まで聞いたことないんだぜ?

 色々訳ありだったりするんだろ?

 だが狩りは三日と決めている、俺はほかにもやることが多いんでね!

 遊び人に暇無しっていうだろう?


 混乱気味な二人を自室に戻すと、どっと疲れが出てきた……

 思い返せばまだ一日だ、大変な一日だったな……

 

 いきなりPT追放されたとおもったら、戻って来いと言われたのに、元PTメンバーに襲われ、元PTメンバーの襲撃を撃退し、新規冒険者として再起を誓い、ギルドに登録したら、なんか違うPTに入ってしまった。

 浮気者にもほどがあるんだぜ?


 追放されてちょっと今後どーするか?考える時間もう少しくれてもいいんじゃない?

 セオリーは一端スローライフを目指すだろうが!

 

 とりあえず今日は寝ます、いい夢見れそうだぜ。


 ――――――――――――――――――――――――


「おにーちゃん?起きてる?」

「ターニャどうした?」


「……大丈夫かなあ?」

「エラムさんかぁ……面白い人だね、大丈夫かは明日わかるさ。」


「そっちもだけど、ガルクさんのこと……」

「……そっちはわからない、でももしあの人が関わっているとしたら、僕たちで止めなくちゃいけない、どんな手をつかってもね。」


「私たちは力お貸ししなくていいのかなぁ?」

「今はまだ情報収集中だからね……動く必要がでたときには全力で動かさせてもらおう。」


 遊び人の眠りは浅く、耳は地獄耳。

 なんだか二人には抱え込むものがあるようだが、所詮三日の付き合いだ、下手に首をつっこんでは首が締まる、悪いが自分の問題は自分で頑張って解決してくれ。

 

 俺は俺で問題抱え込みすぎてパンクしちゃうんだぜ、とにかく早くおやすみ。

 明日は忙しくなるぞ?

 

 っというかもう俺何かに巻き込まれちゃってます?

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