第5話 追放された「遊び人」今後の計画

 PTを追放され、迫りくる追ってからも何とか逃げ切った俺は次の行動について考える。


 まずは、情報収集が最優先、今回の追放劇は誰が主導しているのか?

 それ知らずしてはPTに戻れたとしても、二度目の追放だなんて悲しいことになりかねない。


 怪しいのは上の王子二人だが、俺を第三王子のエドワードから離してどういう利益があるのかわからない。

 とにかく情報収集せねばなるまい、向かう先は王都以外ないだろう。


 現在地は王都から東に歩いて二日ほどの位置にいる。

 

 だが手ぶらで帰るわけにもいかない……

 情報収集には対価が必要となる。

 

 結構な額を身銭を切ってPTの強化のために使ってしまっているので、実は結構貧乏だったりします。

 高価な魔道具は沢山持ってるが、どれも有用だから高価なのであり、また高価すぎてすぐに換金というわけにもいかないだろう。


 金だ、金だ、追放された俺には現ナマが必要だ!


 そうと分かれば金策だ。

 そうだ狩りに行こう!


 さて、どこで何をどう狩るか……しばし考えてみる。

 「金策」「遊び人」「狩り」「効率」「冒険者ギルド」「遊ぶ」「追放」「大きな成果」「宮廷魔術師序列6位」

 

 重要ワードを頭の中でぐるぐる回してみる。

 

 金策をするだけじゃつまらない。

 追放されて冒険者ランクはどうなるんだっけ?

 この近くの町はどんな町だったか。

 情報収集もしながら、大きな成果を目指し宮廷魔術師の序列も上げて早期にPTに復帰する。


 そんな一石三鳥な策は……あるわけが……ってこれか?


 近くの町の冒険者ギルドで新人冒険者として職業『遊び人』で登録し、冒険者としてサクセスする!

 エドワード王太子のPTでのランクがSランクだったので、目指すはSSランク冒険者!

 王国内でも10人もいない冒険者の頂点の仲間入りし、『遊び人』が遊んでるだけの馬鹿げた職業じゃないと喧伝し、『遊び人』の評価を上げる。

 SSランク冒険者になる過程で「大きな成果」を出す必要もあり、国王の要求にも答えられる。

 SSランク冒険者として地位と名声を固めたあたりで、宮廷魔術師エラムでしたとネタ晴らしする。

 エドのPTにはもう隠し事なく『賢者』兼『遊び人』として堂々と戻る!!

 エドのPTで大活躍しチヤホヤされる俺!


 なにこのプラン完璧か?考えた人絶対天才じゃん!

 やべーわ、俺の要求すべてが満たされる最高のプランやん!!


 うん、基本戦略はこんな感じでいこか?


 というわけで近くの町まで地道に走りだす。

 西に半日くらいの場所にそこそこ大きくエドたちが立ち寄る可能性も低い中規模なヘルネという町がある。

 今からならギリギリ冒険者ギルドが閉まる前につくことができるだろう。

 とりあえず、冒険者登録をして三日くらいクエストこなしていれば、情報収集に必要なお金も溜めることができるだろう。



 三時間ほど走って無事にヘルネの町につくと、そのまま冒険者ギルドに駆け込んだ。

 冒険者ギルドには酒場も併設されており、冒険帰りと思われる冒険者たちで結構な賑わいを見せていた。

 見慣れない顔の俺に全員が視線を投げかけてくる、初めて入る冒険者ギルドでは誰しもがどこでもこうなる。

 今度来た冒険者は自分より強いのか?

 自分たちのクエスト達成の邪魔にならないか?

 PTに入れてみたらどうだろうか?

 様々な理由で新顔は注目されて当然なのだ、そして俺はイケメンなので注目されることには慣れている!

  

「すみません、冒険者登録したいのですがまだお願いできますか?」


 俺は俺で冒険者たちを見ながら知った顔がいないことにほっとしつつ、登録できるか確認する。


「ええまだ大丈夫よ。私の名前はマチルダよ、宜しくね。10万ジェニー登録にかかるけど大丈夫かしら?」


 物腰柔らかな受付のお姉さんで大変助かる。

 年齢も20中盤で、中堅職員的で良いし、顔も美人の類に入るだろう。

 文句なしってやつなんだぜ!


「もちろんです、あと色々事前にしらべてあるので、説明は全部省いてくれると助かります。」


 エドのPTで冒険者をやっていた俺は、一度説明を受けてるし実戦で学んだものも多い。

 冒険者にはランクがあり下からG~Dランクまでは一定のクエストをクリアしていけば自動で上がっていく。

 最弱と言われるスライムを狩り続けていてもクエストを地道に続けていればDランクまでは行けるので実力の判断には使えない。

 C~Aランクはそれぞれ一定難易度のクエストを一定数達成しなくてはならない為、ランクが最低限の実力を保証してくれる。

 よってCランクからが本当の冒険者の始まりといってもいいかもしれない。

 SランクSSランクはギルド支部長の推薦が必要となり、ギルド本部で認定の可否が決められる。

 冒険者全体の割合としてはG~Dランクが全体の40%でもっとも多くCランクが40%、Bランクが18%、Aランクが2%、Sランクが100名程度、SSランクは現在10名のはずだ。


「全部省くって……まあいいかな私も楽ちんだし?じゃあ職業適性見るからちょっと待っててね。」


 物わかりのいい受付嬢マチルダさんのお陰で色々時間節約できて助かったな。

 マチルダさんが金庫から冒険者の身分登録をするプレートを持ってきてくれる。

 魔力を流すことで、自分の名前、冒険者ランク、そして職業適性が印字される魔法がエンチャントされているものだ。


 本来ならしばらくは偽名で活動したいところだが、そうはいかないのが冒険者の辛いところ。


「じゃあこのプレートに魔力流してくださいね。」


 俺は受け取った魔道具に微弱に調整した魔力を流す。

 

 『名前:エラム・フォン・マイセン 冒険者ランクG 職業:遊び人』


 俺はプレートを見てヨシヨシとうなずく、職業が『賢者』として出ないか?

 冒険者ランクがエドのPTにいた時のSランクを引き継いでいないか、心配だったのだ。

 『遊び人』のエラムとして新規冒険者登録に無事成功したのだ。


「お名前はエラムさんで……職業は………えっえっえっ?何かの間違いかな?もう一枚持ってきますね?」


 職業『遊び人』を見てマチルダさんの脳内ではプレートの誤作動と判断したようだ。

 ところが、どっこいそれが俺の本職です。


「マチルダさん間違っていませんよ、僕の名前はエラム!職業は『遊び人』!!そして最速でSSランク冒険者になる漢です。」


 俺はギルド中に聞こえるよう、声を張って言う。

 宮廷魔術師だったときは『遊び人』の件は隠していたが、冒険者としての俺は『遊び人』であることを前面に押し出していく必要があるからね。

 

「遊び人ってなんだそれ?そんな職業聞いたこともねーぞ」

「職業遊び人で冒険者やりたいだと?笑わせやがって冒険者なめてんのか!」

「SSランクっておい、なれるわけねーだろうが」

「死にたがりは死ねばいいのよ」

「自分の職業高らかに宣言しちゃってあのお兄さん大丈夫かな?」


 予定どおりギルド内は俺の話でもちきりになる、ほとんど否定的な意見なのは仕方がない……けど、くやぢいぃぃ、あとで見返してやるよ。

 

「遊び人だとっふざけてんじゃねえ!」


 ひと際大きな声で20半ばくらいの剣士風の男が机をぶったたきながら立ち上がり俺の方へ歩いてくる。

 

 手には水の並々と入ったグラスを持っている。

 その水、掛けてくるんだろう、お見通しだ!

 

「これで頭冷してろってんだ」


 漢は、俺の顔面を目掛けて水を掛けてくる……予測していた俺は、当然頭からすっぽりずぶ濡れになってやる。

 避けるのは簡単だし、反撃することだってできる、だが初めて来た冒険者ギルドで誰が実力者でどういう力関係になってるかもわからないのに敵を作りすぎたり、力を見せつけるのは良くないという判断だ。

 気が済むまでやられてやろうじゃねーか?

 

 だが、俺はお前のことを忘れんぞ!顔は覚えた、あとはやられたこと全部頭のノートに書きこんでしかるべき時に30倍にしてかえしてやるから今を楽しむがいいさ。


「ところでマチルダさん、手続きは以上で終わりかな?狩りは明日から早速行うよ。」


「ええ……それより大丈夫ですか……ガルクさんもやめてください……」


 俺はガルクと呼ばれた男をあえてさらに刺激するように無視して、マチルダさんと話す。

 不満や怒りはため込ませて、陰でネチネチ嫌がらせや悪口言われるのは精神に堪えるからね。

 この男にこのヘルネの冒険者ギルド内の怒りや不満を代弁してもらう作戦だ、その分この男は俺の怒りを買うが仕方ない、死ぬことはないさ。


「てめーこの野郎っ聞いてんのか、ここは遊び人が来るようなところじゃねーんだよ。みんな命がけでクエストこなしてるんだ、おめーみてーなフザケタ職業の奴が近くにいたんじゃ安心して狩りもできねーんだよ、とっととママのところに帰りなっ」


 火に油を注いだ結果、俺はガルクに胸倉を掴まれて宙に浮いた状態になる。

 おーガルクさん力持ちじゃん、Cランクはありそうだな。


 「はっはっはチゲーネー、こいつの起こしたモンスタートレインに巻き込まれて死んだらたまんねーぜ」

 「そーだそーだー遊び人はママのところでままごとでもして遊んでな!」


 ギルドの皆さん『遊び人』のこと知らない癖に嫌いすぎ!


 俺はガルクだけに聞こえるように囁く。


 「弱い犬ほど良く吠えるんだよな、キャンキャンうるさい。ここには雑魚しかいないのか?」


 「ふざけやがってー!」


 激高したガルクが右手を俺の胸倉から話して、グーパンを顔面に入れようとしてくる。

 うーん、躱すか迷ったがこれも食らっておこう。

 

 俺はガルクのパンチが当たる瞬間、その最後までガルクの目を睨みつけてやる、お前の顔わすれないぞー

 そして、ガルクのパンチが顔面に当たり派手に俺は吹っ飛んだ。

 

 うまい具合にテーブルに吹っ飛んだ俺は、テーブルをへし折りながら、受け身を取るがノーダメージもよろしくない。

 防御力をいい感じにさげて、いい感じにやられてあげる。

 やられる演技とか初めてやるけど、これはこれで難しいものだ。

 ちょっと下げ過ぎたようだ!


「痛い!」

 

 痛いじゃねーか馬鹿やろう!


 さてガルク、防御力下げたのは俺だとはいえ、君は少しやりすぎたんじゃないかな?

 今のパンチは効いたんだぜ!

 今日は力を隠す予定だったが、モンスタートレインの心配までされたんじゃ流石の俺も動きにくい、ここらで少し本当は強いんだぜアピールさせてもらおうか?

 何よりお前は俺を痛めつけた!


 などと悠長に俺が今後の予定を考えていると俺の想定とは裏腹にイベントは勝手に進行していった……


「ガルクさんやりすぎです!これ以上やるつもりなら僕らが止めさせてもらいます。」

「ほーう。Cランクなりたてのお前ら二人で、俺に勝てると思ってるのか?随分なめられたもんだなぁ!」

「止めるくらいならなんとか……してみますよ!これでも冒険者ですからね」


 知らない金髪の可愛い男の子、その男の子によく似た女の子推定年齢14歳?が俺を守るようにガルクとの間に入り込む。

 いい動きだ!

 君たち素早いね!


 剣士風のガルクと、かわいい男の子と女の子の間でピリピリとした空気が流れる。

 電撃系魔法でもつかってるのかい?


「ガルク君、そこまでだ、君の言いたいことも分からんでもないが、新しい仲間を歓迎してはどうかな?」


 白髪が良く似合う40代中ごろのイケオジがガルクを止める。


「ヴェルナーさん……職業『遊び人』だぜ?職業適性はその人間の性格や今までの行動、生き様が反映されるもんだ、遊び人に狩場で遊ばれたんじゃみんなも落ち着かねーだろ?どーするつもりだ?またアンタが面倒みるのか?人が好過ぎるのも大概にしておいてくれよ、『冒険者』に向いてねー奴もいるんだ。」


 ……言い返せん、俺も弱者だったとしたら、初心者のいる狩場には近寄りたくないもん、さらにそいつが遊び人なんて職業ならなおさらだ。

 

 さて今後どうなんの?反撃して実はそこそこ強いんだぜアピールしたかったんだが、機を失った。


「ガルクさん、その気持ちはよくわかります、エラムさんのことは僕らCランクPT『暁の剣と盾』に任せてもらえませんか?3日もあれば冒険の基礎は教えれますし、エラムさんがどーしようもないなら僕らからギルドに頼んで狩りに行けないようしてもらいます。僕らが初めてこの冒険者ギルドに来た時、ガルクさん貴方が僕らを試験してくれたようにね。」

 

 金髪の男の子がどんどん話を進めるんだが??

 俺ソロでサクサクがんばりたいんですけど……

 

「っち!昔のことだ……早く忘れろ、俺もヴェルナーさんにお世話になった身だからな……Cランクになったクルトが責任もって対処するっていうなら俺は何もいわねーよ、だがうちの仲間に被害がでるようなことがあれば、こいつの冒険者資格停止処分と同時にお前のCランク取り下げも併せてギルドに申請するぜ。」


 どんどん話が進んでいき、ガルクさんまで大人しくなってきたぞ!


「クルト君折角Cランクに昇格したばかりだというのに面倒ごとを任せてしまって済まないね、でも助かるよ、君とターニャが居れば滅多なことは起きないだろう、君たちの目で見てダメならその時は私からもギルドマスターに掛けあうよ」


「我が町唯一のAランク『金色の狼』PTリーダーのヴェルナーさんにはいつもお世話になってますからね、これくらいはさせてください!」

 

 いつもなにかPTに強制加入された?そ

 『暁の剣と盾』とか超かっこいいんですけど?

 そのメンバーになれるってか?

 超うれしいんですけど……って俺の計画ーこれじゃ雑魚のまま終わるやん!

 ガルク殴り返す雰囲気じゃなくなってるやん!


「エラムさんもそれでいいかな?三日間僕とターニャで貴方に冒険のイロハを教えながら、貴方のことをテストさせてもらいます。全力でサポートしますが万が一あなたが冒険者にふさわしくないと判断した場合は俺とヴェルナーさんの連名でギルドマスターに冒険者資格はく奪のお願いをすることになります。でも、僕とターニャがしっかりサポートしますから絶対大丈夫ですよ、大船に乗った気持ちでいてください!」


「今いるみんな聞いてくれ、クルトが責任をもって対処したいといってくれている、『遊び人』が狩場にいるのは嫌な奴もいるかもしれないが、CランクのクルトとAランクの私ヴェルナーが責任をもって三日間あずからせてもらうって判断だ、文句があるなら遠慮なく言ってもらいたい!」

 

 といって、ヴェルナーがギルド内を軽く睨みつける、ギルド内がシーンと静まる、クルトとヴェルナーはこの町のギルドではかなりの実力者で、信頼も厚いようだ、これじゃあ文句があっても言えないってやつなんだぜ。

 

 でも俺は納得いかない……

 まだガルクなぐってないし、しっかりとした謝罪もうけていないんだが?

 

 とても言い出す雰囲気じゃなかった……

 まあ流れに身を任そうじゃないか、それもまた一興よ。 

 

 そうして俺は『暁の剣と盾』のクルト君とターニャちゃんに保護者のように付き添われて、宿屋に向かったのであった……

 14歳の子供に守ってもらう19歳なんて……追放されて一番の屈辱をあじわったのである。


 この怒りはガルクに全部ぶつけてやろうじゃないか?最速で「ざまぁ」ってのをやってやるんだぜ!


 元々三日はここで金儲け……じゃない害獣駆除という慈善事業をする予定だったし、俺は俺で三日間だけお遊びに付き合ってやるよ、遊びは好きだけどちょいと予定が立て込んでいてね。

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