馬鹿息子 プリティーダーティー

ぶらボー

と〇がりコーンの日

「チョベリバァァアアア!」


 手刀で心臓を貫かれた大統領は、派手な断末魔を上げ派手に血飛沫ちしぶきをあげて派手に倒れた。


 ゲッツビー・バニーマンは大統領を倒すと、デスクの上の四角いケースを手に取る。核ミサイルの発射スイッチだ。


 ゲッツビーは非情なテロリストである。ここに至るまでに554人のバトル上院議員と、世界を裏で牛耳る暗黒元老院「爺7」のメンバー全員を殺害した。


 一体何が彼をここまで残虐非道な行いに走らせるのか? それは彼の内から湧き出る絶望と憤怒であった。大統領の陰謀により、ゲッツビーの母は死に、父は冷凍刑。姉は人斬りに斬殺され、妹は鬼にされた。双子の弟は高校野球の試合に行く途中で交通事故にあってこの世を去った。


 愛する家族を国家権力に抹殺されたゲッツビーに、この世に対する未練は微塵もない。歪んだ世界は消し飛ばすべし。


 ゲッツビーはケースを開き、中の赤いボタンに指を乗せる。




 そのとき、ふと大統領のデスクが目に入った。お菓子が置いてある――と〇がりコーンだ。




 ファンキーなそのパッケージを目にした瞬間、ゲッツビーの体に雷に打たれたかのような衝撃が走る。脳裏に浮かぶのは、まだ無垢だった少年時代の思い出……。


 ゲッツビーの父は10個のと〇がりコーンをゲッツビーの手の10本の指全てにめてこう言った。


「奪うより与える人間になりなさい」


 その時は幼さ故、父の言っていることが理解できなかったゲッツビーは、と〇がりコーンを嵌めたままの指で父の尻にカンチョーをしばらくかまし続けた。


 ――その言葉が今、大人になったゲッツビーの心を揺さぶる。


「俺は父さんの息子だ……父さんは奪うより与える人間だった。今ここで息子の俺が、このスイッチを押せば、父さんは本当に死んでしまう……」


 ゲッツビーは涙を流しながら、と〇がりコーンを一つ、口に運ぶ。




「……柿の種だこれ」


 ゲッツビーはミサイルのスイッチを思いっきりぶっ叩いた。


(世界は核の炎につつまれた! おわり)

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