第23話 無職驚愕!慣れないクラスメイトと予想外のモンスター

「あ、あの、同じクラスの人です、よね?」


 話しかけられて少し戸惑う。自分の友人ではない。でもまっすぐ俺を見ている。オロオロしながらも「そ、そうです」と答えた。


「ですよね?いやー良かった!この町で一人だけかと思って心細かったんだよ!」


 そう言うと、持っていた飲み物を僕の隣に置いてきた。ヤバい、まったく分からない。焦っていると、真鍋さんが助け舟を出してくれた。


「君は…真狩まがりくんだよな。パーティは組んでいないのか?」

「あ、い、いや…俺は一人、です」


 その人物は真狩、というらしい。真狩くんは僕に対しての態度と真鍋さんに対する態度が全然違う。真鍋さんに対する態度を見ると、どことなく似た者同士な気配を感じるが、僕に対しての態度は正直慣れ慣れしい。

 真狩くんはパッと僕のほうを向くと、水を得た魚のように顔をほころばせ、マシンガントークを放ってきた。


「ここの町に来て少し経つけど、全然クラスメイトと会わないから不安になってたんだよ~。平はもしかして今日来たのか?だったらこの辺に出るモンスターとか分からないよな?教えてやろうか?まー俺もそこまで詳しいってわけでもないから、自分が倒したモンスターだけしか教えられないけど。まーそっちは4人パーティだし、4人もいたらこの辺のモンスター余裕だと思うぜ。俺は自分の能力で…っと、それはまだ内緒だけど。それでさ~」


 といった感じで、超一方的に話しかけられた。僕はその間一切返事をしていない。真鍋さんに少し似てる感もあるが、真鍋さんは勘違いをしたり思い込んで話すだけで、ここまで一方的な話し方ではないように思う。

 ただ、話の中には有益な情報もあった。その中でもこの辺のモンスター情報はとてもありがたかった。最初の町ではスライムとイモ虫的なモンスター、あとはウサギのようなモンスターという3種類だけだった。

 今いる次の町は、大きく分けて4種類。スピードタイプの狼型、ハチ型、鳥型、テクニカルな猿型とのこと。この間倒した木のモンスターについては話が出てこなかった。聞きたかったが、あまりに一方的過ぎて聞くこともできなかった。


「それで、この町にはいつまでいるんだ?みんなのレベルは?レベル次第では結構長いこといる予定だってあるのか?」

「え、え~と、あの…」

「この町には噂を聞いてきたんだ。夜になるとモンスターに襲われるということでな!住人たちの助けになればと思いやってきたのだ。どうだろう?そんな話は聞かないだろうか?」


 僕が回答をまごついてると、真鍋さんが代わりに答えてくれた。困った時の真鍋さん。本当に頼りになります。他の二人はというと、白雲さんは初めての男性に怖がっているようで、食事も思ったように進んでいない様子だった。氷柱さんはスルー。自分の頼んだ分の食事はすんだようで、お茶を飲みながらのんびりしている。


「え、あ、あの、聞いたことはある、かな?で、でも俺、あの~」


 本当に同一人物だろうか?僕に対しての態度と全然違う。違いすぎて少し怖くなってきた。戸惑っている反応を見て、真鍋さんが口を開く。


「む、そうか!パーティも組んでいないし、モンスターの襲撃があったら怖いよな。すまない、酷なことを聞いてしまったな。安心してくれ!私たちが来たから安心だ!」


 そう言いながら豪快に笑う真鍋さん。一体どこからこの自信は出てくるのだろう。確かに4人パーティになったし、レベルもかなりあがった。真狩くんの話だと4人パーティならこの辺のモンスターは余裕で倒せるらしいけど、油断はしていられない。

 そもそも、モンスターが群れをなして町を襲うということが異常事態なんだ。原因も突き止めないといけない。襲ってきたモンスターを倒すだけで済めばいいが…。

 懸念事項を考えていると、真狩くんが「ま、まぁ何かあれば協力しようぜ!じゃぁな!」と僕の肩をたたき去って行こうとした。その時、まったく会話に参加していなかった氷柱さんが口を開く。


「待った。真鍋くん、最後に1つだけ。真鍋くんの職業は?」


 真鍋くんは歩き出そうとした足をピタリと止めた。表情は見えないが、おそらく焦っているというか戸惑っているのだろう。女性に話しかけられた時の僕を想像すればわかる。自分で言っていて少し悲しくなった。

 真鍋くんはこちらに向くでもなく、何か話すでもなく、静止した姿のままで時間だけが過ぎていった。この間が耐えきれず、僕は思わず口を開く。


「あ、あの、人に言いたくないことも、あるかと思いますし。ほら、僕なんて、職業無職ですし。ね、ねぇ真鍋くん?」


 もしかしたら僕みたいに人に言いづらい職業なのかな?と思い助け舟を出したところ、「そ、そうなんだよ。また仲良くなったら教える」と言い、食堂から出ていった。氷柱さんを見ると、食堂の扉をじっと見ている。「何か気になることでも?」と声をかけたが、「いや…なんでもないよ」と言われてしまい、それ以上話をすることはなかった。

 変な空気になってしまったため、いったん自由時間ということで、各々好きなことをして過ごすことにした。僕は自分の部屋でのんびりしながら、真鍋くんのことを思い出す。本当はパーティに誘いたいのだが、正直うまくやっていける気がしない。真鍋さんは快諾してくれるだろうが、白雲さんと氷柱さんが正直どう思うか…。

 あーでもないこーでもないと考えていると、時間はあっという間に過ぎ、ついに夜が来た。早めの夕食をすませ、食堂に集合して襲撃を待つ。町の人の話だと、襲撃はだいたい21時頃が多いようで、出現場所は宿屋付近が結構多いらしい。ドキドキしながらその時を待つ。

 すると遠くから男性の声で、「き、来たぞー!モンスターだ!」という声が聞こえてきた。すぐに立ち上がり、食堂の扉を開けて外に出る。声のしたほうに目をやると、町の人が松明をもって振り回しているのが遠目に見えた。振り回している松明の高さ的に、四足歩行動物だろう。僕たちはすぐに作戦どおりの隊列を組み、悲鳴のほうに駆け出した。


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