第24話 無職疑念!拭えない違和感
駆けつけると、狼型のモンスターが今にも住人に襲い掛かろうとしていた。とっさに真鍋さんが間に入り、シールドバッシュで敵を弾き飛ばす。事前に話していたとおり、隊列を整え、次の攻撃を待つ。モンスターは少し警戒するような素振りを見せたが、また襲い掛かってきた。
再びシードルバッシュで弾き、モンスターが着地しようとした瞬間に白雲さんがアイスロックを唱える。足が固まり、動けなくなったモンスターに対して僕が乱刀をお見舞いする。幸い、僕だけの攻撃でモンスターを倒すことができたようだ。
「よし、行けそうですね。この調子で、1体ずつ確実に倒していきましょう!」
周囲を確認する。話ではモンスターが群れをなして襲ってきた、ということだった。それが本当ならこの1体で終わるはずがない。そう思っていると、今度は別の方向から悲鳴が聞こえてきた。方向的に一番近かった氷柱さんが飛び出す。速さでは断トツのため、走り出されたら追い付ける者はいない。僕たちは隊列を組みながら氷柱さんの後を追う。僕たちが到着した時にはもう戦闘が終わっていた。
「つ、氷柱さん、一人で行くのは危ないですよ!一番レベルが高いかもしれませんが、何かあったら…」
「平くんの乱刀一撃で倒せるなら、私の乱刀ならまず間違いなく倒せる。話に聞いてた狼型だったこと、この付近のモンスターならスキルさえ使えば一撃だと分かったことから、町の人の安全を最優先で動いた。間違ってる?」
「………間違ってはないです。ですが、心配なんです」
「それはごめんなさい。でも、真狩くんが言っていたモンスターなら一撃だから安心して」
そう言うと、氷柱さんは周囲の音に耳をすませているようだった。氷柱さんの言うことは正しい。このレベルならまず氷柱さんがやられることはないだろうし、集団行動していればすぐ僕たちも助けに入れる。町の人の安全を優先するなら、一番早く動けて火力がある氷柱さんに自由行動してもらうほうがいい。
そんなことを考えていると、氷柱さんがピクリと反応し、すごいスピードで駆け出した。僕たちは何が何だか分からないまま、バタバタとついて行く。
ギリギリ見えたが、空中に向かって乱刀を放つ姿を捉える。どうやらハチ型と鳥型モンスターを倒したようだ。さすがすぎる。
「す、すごいですね、さすが氷柱さん」
「………おかしい」
肩で息をしながら賛辞の言葉を贈るが、当の本人は浮かない顔をしていた。
「平くん、さっき狼型のモンスター倒したでしょ。経験値入った?」
「経験値ですか?入ったんじゃ…いや、言われてみると確かに…」
レベルアップはステータス画面を開かなくても感覚的に分かるのだが、経験値はステータス画面を見ないと分からない。
すぐにステータス画面を開いて確認するが、モンスターを倒す前の経験値を見ていなかったため、経験値が入ったかどうかが分からない。
それを聞いていた白雲さんがステータス画面を開き、「あ」と声を漏らした。
「少なくとも私には入ってないみたいです。私、この前ステータスを見たときに、経験値がゾロ目だな~運がいいな~と思ったので、間違いないと思います。狼型モンスターを倒した経験値、入ってません」
そう言われ、氷柱さんもうなずく。確証はないが、経験値が入っていないような気がする、とのこと。どういうことだ?経験値が入らないモンスターなんているのか?
そう考えていると、また別のところから悲鳴が聞こえる。今はこんなことを考えている場合じゃない、と頭を切り替える。氷柱さんは大活躍で、その後もモンスターをバッサバッサと倒してくれた。モンスターの組み合わせは様々で、狼型とハチ型、猿型と鳥型、狼型と猿型などなど、パターンはなさそうだ。しかも同じところからゾロゾロとではなく、あっちこっちから現れるため、戦うのにも苦労した。
十数体くらいのモンスターを倒したぐらいから、モンスターが現れなくなった。1時間くらい待ってもあらわれなかったため、今回の襲撃はおさまったと判断し、僕たちも宿に戻る。今日は遅いので明日の朝話し合うことにして、今夜は眠りについた。
突然襲われるようになった町、群れることがないはずのモンスター、入らない経験値、出現時間は夜…。
僕はベッドに横たわり、今持っている情報を頭の中に浮かべながら、天井をじっと見上げる。他の町を知らないし、他のモンスターも知らないので確かなことは言えないが、やはり今の状況には違和感を感じる。
氷柱さんも何かを感じていたようだが、詳しい話はしてくれなかった。明日はしてくれるだろうか?そんなことを考えていると、僕の瞼も重くなってきて、いつしか眠りについてた。
翌日、元気のいい真鍋さんに起こされ、ちょっと早い朝食をとっていた。真鍋さんはなぜか僕だけ起こしてくれる。なぜなんだ?朝が弱いと思われてるんだろうか?
寝ぼけ眼でパンをモサモサしていると、ちょうど真狩くんがあらわれ、僕の横の席に座った。
「やあ!眠そうだね、昨日はよく眠れなかったの?俺は久しぶりにクラスメイトに会えたからかぐっすりだったよ。そうそう、ここのご飯でおススメが~」
朝からこのマシンガントークは正直キツイ。一方的に話されることがこんなにもつらいことだとは。愛想笑いしつつ、パンを頬張っていると、真鍋さんが途中で割り込んできた。
「そうだ!昨日も思っていたのだが、真狩くんは一人なんだろう?パーティに入ってもらうのはどうだ?一人だと何かと心細いだろうし」
それは確かにそうだ。僕も真鍋さんに救われた手前、一人でいる真狩くんを放っておくのは少し心が痛んだ。だが、うまくやっていけるかどうかは…まぁ、僕も慣れたんだし、真狩くんも慣れるか。
真狩くんはソワソワしながら「あ、え、えっと、入っていいっていうなら、その…」と快諾する方向のようだ。これからのことを考えないとな、と思ったその時、冷たい声が聞こえてきた。
「私はパーティに入れるの反対」
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