第22話 無職前進!未知の魔物と未知な町
白雲さんがコントロールできる魔法はファイアボールとアイスロック。ファイアボールも岩場で試してもらったが、火球の大きさが文字通り桁違いだった。僕のファイアボールがサッカーボールより少し小さいくらいだったが、白雲さんのはサッカーボール2〜3倍の大きさがあった。それでいてまだ本気ではないとのこと。確かファイアボールは敵単体攻撃のはずだが、この大きさで単体だけに当たることはあるんだろうか?
ウィンドガードはコントロールがきかないまでも、自分の身を守るときには有効なスキルだ。効果範囲もさほど大きくないため、いざという時はガンガン使っていこう、という話になった。
そんな話の結果、隊列は真鍋さん、僕、白雲さん、氷柱さん という順番になった。実のところ僕は体力、耐久ともにパーティー内最低となっており、一番守るべきは僕だろうという話になったのだ。情けないというか恥ずかしいというか…。
そして今後についても話をした。今後というのは、今の町でレベルアップするか、次の町に行くか、というものだ。レベルアップの事を考えたら次の町に行きたいのだが、木のモンスターレベルがうじゃうじゃいたとしたらかなり厳しい。体力が0になる=死なのかどうかも分からない現状、死と考えておいたほうがいいだろう。
「ここは慎重を重ねて、みんなが10Lvに達したら次の町に行くというのはどうでしょうか?白雲さんもスキルが思うように使えるみたいですし、真鍋さん、白雲さんだけでモンスターを倒していけば、1〜2週間で10Lvに達すると思いますが」
「言いたいことは分かるが、そんなに悠長にしていて良いのだろうか?4人パーティーになったんだ。次の町に進み、効率良くみんなで倒しながらレベルを上げるという手も…」
僕と氷柱さんで方針について話し合うも、なかなか決まらない。というのも、お互いに次の町には行きたいが、慎重になりたいと考えており、どちらかが次の街案を言うと、どっちかが慎重案を言うという、イタチごっこになってしまっていたのだ。
どちらが正解なんてないからこそ悩む問題。4人で机を囲みながら、僕と氷柱さんがうんうんうなっていると、真鍋さんが急に立ち上がった。
「?真鍋さん、どうかしたんですか?」
「何か困っているみたいだ。ちょっと話を聞いてくる」
そう言うと、3卓ぐらい隣でご飯を食べていて男性2人組のほうに歩いていく。よく聞こえたなと思う距離だ。男性2人は最初こそ警戒していたが、真鍋さんの豪快さと笑顔で、とたんに心を開く。しばらく話を聞くと、真鍋さんがこちらに戻ってきた。
「よし!次の町に進むぞ!」
「「「え?!」」」
3人同時に驚く。本人はまったく気にしていないようで、話を続けた。
「そうと決まれば善は急げだ。自室にある荷物を持って、10分後にここに集合しよう!急げば明るい内に…」
「ちょちょ!ちょっと1回落ち着いてください。まずは話を聞かせてもらえないですか?」
自室に走って行ってしまいそうな真鍋さんをなだめ、話を聞いてみると、最近次の町で、夜、モンスターに襲われるようになり、困っているというのだ。あの男性達は行商人で、本当は次の町に進みたいが、その噂もあって行けなくて困っているという。
それを聞いた真鍋さんが「私に任せろ!」と問題解決を引き受けた、という流れだ。
「理由はわかりました。しかし、今日の移動はさすがにやめましょう。道中モンスターに合わなければいいですが、モンスターとの戦闘になり、この前みたいに長引けば、森の中で夜を過ごすことになります。そうなったら危険すぎます。助けたい気持ちはわかりますが、明日の朝一出立にしましょう」
白雲さんと氷柱さんを見る。二人とも静かにうなずいてくれた。今後は真鍋さんを見る。目を閉じ、何か考えているようだったが、最終的には同意してくれた。
自分たちの身の安全も大事だが、町の住人達もないがしろにする気はない。明日は朝の6時に町を出ることとし、各々部屋に戻った。
そして翌日、当然のように真鍋さんは朝4時に僕をお起こしにきた。体力おばけだよ…。
まだ外が明るくないことを理由に、しっかりと6時まで待つ。全員がそろうと、話したとおりの隊列で進むようにした。
道中、新しいモンスターが来ないか不安だったが、意外なことにモンスターに会うこともなく、次の町に到着した。最初の町に比べると、少し店や家が多いように見える。それに比べ、最初の町より少し物静かというか、どこか怯えているような雰囲気を醸し出している。町全体が暗そうだ。
「よし、それではまずは宿を探しましょう。泊まるところとご飯がないと、ここでやっていくのも難しいですからね」
そう言って宿を探したが、モンスター襲撃騒動があったからか、泊まれる宿はすんなり見つかった。荷物を置き、夜を待つことにする。レベルアップするために森に入ることも考えたが、体力やMPが減り、夜の襲撃をしのげないとまずいと考え、初日は夜の襲撃に備える事とした。
宿屋の食堂で昼ご飯を取る。ここの町もどこか日本の食べ物に似ていて、抵抗感なく食べることができた。食べ物は大事だと個人的に思う。。食事も中盤になってきたかと思うと、後ろを通りかかった人物の「あ」という声に振り返る。
その声をあげた人物は、クラスメイトの一人だった。名前は…なんだったかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます