第2章 力の方向性

第21話 無職満帆!パーティーとしてのレベルアップ

 パーティー結成から翌日。僕たちはさっそく森に入り、白雲さんのスキル練習と、パーティーの連携について話をしていた。

 白雲さんのスキル練習は今までどおり、スキルを狙ったように使えるようになるための訓練。僕と真鍋さん氷柱さんで、今後どのような隊列で戦うかや、遠距離モンスター、近距離モンスター、その他どういったモンスターだったらどうしたらいいか、今のスキルをベースに話した。

 スキルを新たに取得したのは真鍋さんのみ。白雲さんもスキルを覚えるかと思ったが、今回は変化がなかった。もしかしたら、1Lvなのにスキルを4つも覚えていたことと関係があるのかもしれない。

 真鍋さんは新たに範囲防御スキルを覚えたようで、「これでまた皆を守れる可能性があがったな!」と嬉しそうに笑っていた。真鍋さんらしくて、こっちまで笑ってしまう。

 結果的に、ステータスアップによる攻撃力上昇以外、火力的にはレベルアップ前と変わっていないということになる。だとすると、期待できるのは白雲さんのスキル向上と作戦。そんな時に朗報が舞い込んできた。


「わ、私、スキルが上達したみたいです!見ててください!」


 訓練開始早々、嬉しそうに僕たちを呼ぶ白雲さん。3人が見守る中、深呼吸を一つ。集中したかと思うと、スキル名を口に出すことなく、突如としてアイスロックが発動した。

 結果、1つ目の石を中心に、2つ目の石少し超えたあたりまで凍る。おそらく2つ目の石まで凍らせるように発動したのだろう。今までだったら3つ目までいったり、2つ目まで到達しなかったり、中心がずれたりするなど、いろいろと課題があったのだが、これは大きな成長だった。


「ど、どうでしょうか?」

「すごいじゃないか白雲さん!隠れて修行していたのか?私も負けられないな!」


 そう言いながら白雲さんに抱き着く真鍋さん。「く、苦しいよ~」と嬉しそうに言う白雲さんを見ながら、百合っていいなと和む。そんな我々とは違い氷柱さんは冷静に今の状況を分析していた。


「白雲さん、どうして突然スキルの精度があがったのか、疑問に思わない?」

「そうですね…考えられるとしたら、木のモンスターとの戦闘か、レベルアップですかね」

「私もそう思う。あの戦闘でここまでの精度が上がる要素が考えられなかった。だとしたらレベルアップが影響してると考えるのが自然かな」

「確かに。でもなんでレベルアップしたら…あ!」


 一瞬のひらめき。すぐさま白雲さんに駆け寄る。真鍋さんとキャッキャウフフしていたが、僕が近づいてきたことに気づき、ビクリと体を震わせ、真鍋さんの背中にピャッと隠れてしまった。仲良くなれたと思ったが、自然体で接するようになるにはまだまだ時間がかかりそうだな…。


「白雲さん、"ウィンドガード"を使ってみてもらえますか?離れているので。範囲は自分自身の高さ、周りを囲うようにで」

「は、はい!分かりました」


 僕はあの1件から、女性相手でもみんなとならどもらずに話せるようになっていた。どもっていた時は、僕なんかが言葉を発したらキモがられるんじゃないか、だったら早く話して早く終わろう、と自分で自分を焦らせていたので、それが余計にどもる原因になっていた気がする。

 今はみんなを信頼しているので、キモがられるなんて思わずに堂々と話せるようになった。白雲さんにもいつか、そんな風に思ってもらえたら嬉しいな。


「"ウィンドガード"!!」


 そんなことを考えていると、詠唱も終わったようで、白雲さんのスキルが発動した。

 アイスロックではスキル名を言わなくても発動できていたが、"ウィンドガード"はスキル名を言っている。訓練していないから慣れていないだけかもしれないが、気になるところはそこだけではない。ウィンドガードは風が自身の周りを囲うように吹き荒れ、攻撃などから自身の身を守るスキルだ。『自身の高さ、周りを囲うように』とお願いしたのに、高さは1.5倍、自分を中心に人が3人くらいは入れそうな範囲でスキルが発動していた。

 スキル効果が終わり、白雲さんに近寄る。白雲さんは分かりやすく落ち込んでいた。


「全然ダメでした…私なんて、アイスロックしか使えないダメダメ魔法使いなんです…」


 発言も分かりやすく落ち込んでいる。そんな白雲さんに対し真鍋さんは、「魔法が使えるだけでもすごいじゃないか!私は盾を構えるくらいしかできないぞ。みんな違って、みんないいいんだ!」と励ましていた。ほんと人を誉めるの上手だな。

 白雲さんには悪いけど、これで謎が解けた。


「分かりました。白雲さんがスキルをうまく使えなかった理由は、使うスキルのレベルに達していなかったからだと思います」


 それを聞き、白雲さん、真鍋さんはキョトンとする。氷柱さんは納得したようで、腕組をして木にもたれかかりながら目を閉じていた。


「白雲さん、最初に覚えていたスキルってファイアボールだけじゃなかったですか?」

「は、はい、そうです」

「それ以外のスキルはどうやって覚えたんですか?」

「えっと、本を読んで。私、本を読むのが好きで、どうしても本が読みたくて、この世界の本を買って読んでたら、いつの間にか覚えていました」


 どうやら予想どおりだ。これから話すことはあくまで個人的な見解だと付け加えたうえで、白雲さんに説明する。

 白雲さんはパッシブスキルの効果でスキルを覚えたが、そのスキルをうまく使いこなすにはそのスキルを覚えるレベルに達さなければならない可能性がある、ということ。おそらくパッシブスキルはスキル取得、威力増加が効果であって、スキルを上手に扱うためには、それこそ訓練するか、レベル上げをしてスキルを覚えるレベルに達することかもしれない、というものだ。

 二人とも感心したようなまなざしで僕を見てくる。そんな目で見られたら勘違いしちゃうじゃないか。なんて、冗談でも言えない。


「これで白雲さんも含めた作戦が立てられそうね。もう一度作戦会議しましょうか」


 氷柱さんがメンバー召集をかける。素直に集まる我々。もう氷柱さんがリーダーのほうがしっくりくる気がするのは僕だけだろうか。

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