第10話 無職困惑!嬉しさ20、戸惑い80!
僕も真鍋さんの後に続き、真鍋さんの背中から顔を出すような形で白雲さんに話しかけてみる。白雲さんは大人しそうで、僕的には他の女子に比べると話しかけやすい。
「あ、あの、白雲さん…」
僕の声に気づき、キョロキョロと辺りを見回す白雲さん。声の発信元が僕だと分かると、白雲さんは固まってしまった。
「え!あ、あの…」
「平くんすまない。白雲さんは恥ずかしがり屋さんでな。男子が声をかけると緊張で何も話せなくなってしまうのだ。だから一旦、私と白雲さんだけにしてくれないか」
「あ、はい、分かりました」
そう言って白雲さんから距離を取る。もう大丈夫だぞ、と白雲さんをなだめながら、なんで布をかぶって地面に座っているのかを聞き出しているようだった。
僕が傷つくと思った?むしろ逆だ。一般的な男子ですら緊張して話せないんだ。僕レベルが話しかけても話してもらえないのは当然である。
確か白雲さんは魔法使いだったはず。スキルは想像しやすいし、複数の敵も倒しやすい。かなり重宝しそうな職業だ。おそらくどこかのパーティに属していて、はぐれたとかなんだろう。
そう考えていると、真鍋さんが戻ってきて一言。
「これからは3人パーティだな!」
晴れやかにそう言った。僕は意味を理解するのに10秒かかった。
「ま、真鍋、さん?3人パーティというのはいったいどうして…」
「白雲さんはどこのパーティにも属しておらず、まだ1Lvらしい!とても一人では生きていけないだろう。現に、お金がなくなって途方にくれて、地面にうずくまっていたのだそうだ。そんな人を放っておくわけにはいくまい?」
言われていることは確かにごもっともだ。僕もそういう人がいたら助けるだろう。だがそれでも、パーティに入れるとなると話は別だ。僕は真鍋さんとでさえまだどもってぎくしゃくしてしまうのに、そこに新たな女子メンバーが入ってくるとなると、プレッシャーが半端ない。
真鍋さんはストレートな性格なので、僕がキモかったりウザかったりしたらストレートに言ってくれそうだが、白雲さんは言えずに我慢していまいそうな危うさもある。不快な思いをしているのにいうことができず、それがストレスになってしまったらどうしようと、悪い方向にばかり考えてしまう。
「な、なら真鍋さんと白雲さんの二人パーティーに…」
「何を言う。一番助けないといけないのは平くんじゃないか。それに白雲さんだが、話を聞けばもう4種類の魔法が使えるらしいぞ」
「な…!1Lvで4種類?!」
これにはかなり驚いた。いくらちゃんとした職業だとしても、多くて2種類だと思っていたからだ。魔法使いの特権なのか?それとも白雲さんが特殊?どちらにせよこれはかなり強力な仲間の登場になったのでは?
そう考えていると、真鍋さんの後ろに隠れていた白雲さんのほうから、ギュルルルル~と大きな音が鳴る。
「おぉ!そうだった!悪いな白雲さん、お腹が空いていたんだったな。腹が減っては話も出来ぬ、まずはご飯を食べに行こう!」
白雲さんの腕をつかみ、ご飯屋さんのほうへずんずんと歩き出す真鍋さん。白雲さんも、最初は少し戸惑っていたが、よほどお腹が減っていたのかおとなしくついて行っていた。
僕も仕方なく後ろをついて歩くが、今後のことについて頭を悩ませていた。
僕みたいな陰キャが美女2人とパーティーを組むなんて…これはとんでもない罰が当たりそうなきがするぞ。
真鍋さんは僕よりも少し身長が高く、スラっとしていて、見るからに運動ができます!という美人タイプ。白雲さんは僕よりも少し身長が低く、天然パーマで頭がいつもモサッとしている。メガネをかけて大人しく、守ってあげたくなる小動物のようなキャラクターだ。
一緒に冒険ができるのは本当にうれしいが、同時にちゃんとコミュニケーションがとれるか心配でもある。だがそれ以上にワクワク感も。
期待と不安が50対50といったところかな。
「実はな、白雲さんは魔法がモンスターに当てられないらしい」
晩御飯食べている最中、フォークとナイフを置いて真鍋さんが俺に言う。口に頬張った肉を咀嚼しながら、真鍋さんの言葉の意味も咀嚼し、口の中のものを飲み込んでから一言。
「それは、いったい、なぜ…ですか?」
心からの言葉だった。チラリと白雲さんを見ると、少し恥ずかしそうに机に体を隠しながらポテトを頬張っていた。よっぽどお腹が空いてたんだな…。
「理由は私と少し似ていてな、モンスターを倒すのに躊躇してしまうんだとか。あと、それだけでなく、仲間を魔法に巻き込んで、何かあったら怖いらしい」
真鍋さんはそう言い終わると、サーモンに似た魚のカルパッチョ風サラダにフォークを突き刺した食べる。食べながらしゃべったりとかしないあたり、いいところのお嬢様まのかもしれない。
真鍋さんから白雲さんのステータスとスキルは聞いたが、これはまた嫉妬対象だなぁ…そもそも僕が嫉妬しない職業なんてないと思うけど。
−ステータス−
名前
Lv 1
年齢 15歳
性別 女
職業 魔法使い
体力 30
筋力 4
耐久 6
MP 50
賢さ 20
器用 15
速さ 4
勘 8
運 8
属性 水
【パッシブスキル】
・魔法の理解者
書籍や伝聞、魔法使用を繰り返すことで、新たなスキルを習得したり、そのスキルの理解度を高めることができる。
【アクティブスキル】
・ファイアボール
敵に炎の火球を放つ。
・アイスロック
氷で敵の動きを封じる。
・ウィンドガード
風の力で攻撃から身を守る。
・ストーンファイア
無数の石を放つ。
分かってはいたさ。分かってはいた。でも、もう傷ついたりしないなんて、言わないよ絶対。やっぱりステータス差は何度経験しても傷つく。
それにしてもこの段階でスキルを4つ使えるのは驚きだ。しかもいい感じに効果もバラけている。これは魔法が使えるようになったらかなり助かるぞ。
そんなことを思いながらチラリと白雲さんのほうに視線を向ける。白雲さんもちょうど俺を僕見ていたようでバッチリと目が合い、すごい勢いで引っ込んでいった。
これにはいくら女子からの雑な扱いに慣れている僕でも少々こたえた。
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