第4話 無職覚醒!それでも陰キャな性格は変わらないようです!

 Lv10 ステータス微増

 パッシブスキル Lv3


 よし!予想どおりパッシブスキルのレベルも上がった!

 前回の時とは比べ物にならない速度でステータス画面を開き、直ぐ様[無限の可能性]の画面を開いた。

 予想はついている。スキル保有・使用数の上昇だろう。シンプルだが強力だ。これがいつまで続くか、だが。

 と思っていたのだが、そんな僕の予想とは違い、数には変化がなかった。


【パッシブスキル Lv3】

 無限の可能性

【説明】

 無職。職がない。

 逆に言えば"何にでもなれる"。

 つまり、そういう事だ。

【効果】

 ・触れた相手のスキルを2つ使えるようになる

  ただし、スキル利用ステータスを満たしていない場合は利用できない

 ・スキルは2つしか保有出来ない

 ・相手に触れると、必ずスキルを選ばないといけない

  スキルを選ぶまで、所有スキルは利用不可となる

 ・スキルに効果を付与する


 パッと見、何も変わっていないように見えるが、最後に一文追加されていることに気付く。

 スキルに効果を付与?一体どういう事だ?


 とりあえず、[無限の可能性]の詳細画面を開いてみる事にした。

 

【無限の可能性】

 ・手抜き上手

  経験値が2倍。

  (+)自分がモンスターを倒していない場合、経験値がさらに2倍。

 ・一心振乱

  (筋力+速さ+器用)×10回剣を振ると、筋力が1上昇する。

  (+)必要な素振りの回数が半分になる。


 …………は?


「はぁーーーーーー?!」


 これ………やばくないか?


[手抜き上手]なんて、ただでさえ経験値2倍だったのに、誰かに倒してもらったら、経験値4倍ってこと?!

[一心振乱]はシンプルだ。シンプルゆえにこの効果のヤバさが分かる。


「僕………一体どこまで強くなるんだろう」


 スキルの名前どおり、無限の可能性に思わずビビってしまう。これ、本当に最強になっちゃうんじゃないか?

 自分の可能性に驚きつつ、今後の成長に胸が膨らんでいるところに、不意打ちがきた。


「安心しろ!私が守ってやる!」

「うわああああぁぁぁーーー!!!」


 急に後ろから声がしたので、情けないくらいビビり倒してしまった。

 腰が抜けたような姿勢で振り返ると、クラスメイトの一人がそこに立っていた。

 確か職業は”守護者”の、少々堅物だが決して悪いやつじゃない、ザ・真面目女子だ。

 そんな真面目女子がなんて?僕を守る?

 発言の意味がわからず、とりあえず真意を確認することにした。


「あっ……えっと……その、ま、真鍋……さん?だよね?えっと……その……」


 そう。自分のスキルのことやこれからのことばかり考えていて、僕はすっかり忘れていた。

 僕が、異性といえば母親かおばあちゃんとしかろくに話ができない、女性免疫0の陰キャだと言うことに。


「そうだ!真鍋だぞ!」


 ニコニコとそう返してくれた。違う違う。そうじゃない。だが、僕のどもりまくりの言葉をバカにするでもなく、嫌な顔をするでもなく返してくれたことに、少しだが気が楽になった。

 僕は1つ深呼吸をして、聞きたいことを聞いた。


「あの、真鍋さん。ま、守る?って、聞こえた気が、するんだけど…あの…」

「そうだぞ!遅くなってすまなかった。これからは安心してくれていいぞ!」


 これまたニコニコと返してくれた。違う違う。そうじゃ、そうじゃない。


「あの、その、守るって、どういう……」

「?そのまんまの意味だが?」


 とても真っ直ぐな瞳でそう返され、そして思い出す。

 真鍋さんのクラスでのあだ名、「表だけ女子」。その名のとおり、真鍋さんはとても素直でまっすぐで、まっすぐ過ぎるあまり会話がなかなか成り立たないこともしばしばあるのだ。


「す、すみません、聞き方がよくなかったですね。え、えと…」

「聞き方?別に悪くなかったぞ。良いというわけでもないがな!」


 ……こんな感じだ。


「守るって、なんで僕を?」


 3回くらい深呼吸して、ようやくどもらず端的に話すことができた。

 僕からの問に、真鍋さんは一切調子を変えずに応える。


「だって君、ステータス低いんだろ?だったらステータスの高いやつが守ってやるのは当然じゃないか」


 変なことを聞く人だな、と真鍋さんはまた笑った。そうだ。真鍋さんはこういう人だ。

 無表情女子といい真鍋さんといい、ウチのクラスにはカッコいい女子が多いのかな?

 パッシブスキル[無限の可能性]のおかげで、なんとか一人でも戦えそうな希望が見えてきたのだが、あまり目立ちたくない僕にとってはこれ以上ない申し出だし、[手抜き上手]の追加効果を考えると、これは最高のタイミングだ。

 強いて問題をあげるなら、僕のメンタルが持つか、というところぐらいか。

 でも真鍋さんとなら、上手にやっていけるかもしれない。


「あ、ありがとう。是非、お願いします。ち、ちなみに真鍋さんは、えっと、今、その、何Lv?だったりする?」


 ステータスとスキルの確認は重要だ。いざという時に真鍋さんのスキルを使う事があるかもしれないし。


「Lvは1に決まってるだろ。何を言ってるんだ?」


 本当に不思議そうな顔をして聞き返してくる。これにはさすがに僕も面をくらい、言葉がしばらく出てこなかった。

 ようやく絞り出せた言葉は、「なんでまだLv1なの?」だった。


「なんでって、これまで君を探していたんだぞ。Lvがあがらないのも当然じゃないか!」


 変なことを聞く人だな、とこれまた笑う。でも僕は笑う余裕なんてなかった。真鍋さんの言葉が心に深く入ってきた。


 あれから3週間。真鍋さんはその間ずっと、僕を探してくれていたのか。こんな僕なんかのために…と涙が出そうになった。が、大事なことに気付いた。


「ちなみに真鍋さん、ステータスを教えてもらってもいいかな?」


 事の重要性から、相手が女性とか考える隙もなく、スムーズに聞くことができた。

 真鍋さんは「もちろん!ほら!」と言って得意げだが、相手のステータス画面は見れないため、読み上げてもらうしかない。

 真鍋さんに画面が見えないことを伝え、読み上げてもらったが、僕は驚愕した。


 −ステータス−

 名前 真鍋 直(まなべ なお)

 Lv  1

 年齢 15歳

 性別 女

 職業 守護者

 体力 80

 筋力 10

 耐久 25

 MP   10

 賢さ 8

 器用 8

 速さ 8

 勘  8

 運  14

 属性 土


 体力と耐久以外、僕とそんなに変わらない!

 それどころか低いまである。おそらく職業的に防御力特化なんだろうが、これじゃぁ最弱モンスターですら倒すのに苦労するはず。


 チラッと真鍋さんを見ると、真鍋さんはとても明るい表情でこう返した。


「そんな心配そうな顔をするな!私が来たからにはもう安心だ!守ってやるから、一緒に逃げような!」


 そう言ってバンバンと僕の背中を叩く彼女に、僕は不安しかなかった。

 僕の旅は、いったいどうなってしまうんだろう………。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る