第5話 無職多難!不可避の選択!
一人では心細いと思っていたし、パーティを組んでる人を見ると羨ましくも思っていた。しかし、無職の俺がパーティを組むなんて絶対に不可能だと、クラスメイトの反応を見て思ったんだ。
そんな俺とパーティを組んでくれるという人があらわれるなんて、夢にも思わなかった。いや、実はちょっとこんな展開を期待したりもした。何せこちとら思春期の男の子なんだ。都合良く可愛い女の子とパーティを組んで一緒に冒険をしていると、これまた都合良くハプニングが発生して、親密度がアップして最後に二人は…?!なんてこと、誰でも想像するだろう。
だが実際そんな展開になってみると、喜びよりも戸惑いが勝っているあたり、分相応じゃない事を願うもんじゃないなと常々思った。
まず、女の子と話すの、ツライ。真鍋さんは1ミリも悪くない。全ての責は自分にあることは分かっている。それ故に、これではダメだと自分を奮い立たせているのだが、その決意に体がついてこず、簡単な言葉でもどもってしまうし、相手の目は見れないし、笑顔を作りたいけどキモかったらどうしようとか、真面目な顔で恐がられたらどうしようとか、そもそもこんなこと考えてる自分ってホントダメだなとか、そんなことばかり考えてしまうのだ。
次の問題は、シンプルに真鍋さんの火力不足。レベルは1で、僕よりもステータスが低い部分がいくつかあるこの状況は、とても喜べるものではない。
まず手抜き上手の追加効果(他人が倒したら経験値4倍)は見込めそうにないし、モンスターが現れたら逃げるか僕が倒すかの2択となってしまう。
ならばレベルを上げるしかないと思い、真鍋さんに提案したのだが…
「何を言う。モンスターを無理に倒す必要なんてないんだぞ。逃げればいいんだからな!」
と笑顔で即答されてしまった。それでも、いざという時の為にも、強くなっておいて損はないと言うのだが…
「それなら君が強くなればいい!私は守る係だし、自分からモンスターを攻撃する気はないよ!」
といった感じだ。これには本当にまいってしまった。
先にも言ったとおり、女子と話すという行為が、自分には本当にツライ。かなりの重労働だ。
それでも今後の事を考え、なんとかレベルをあげようと伝えたのだが、固い意志で断られてしまう。
どうしたらいいんだ…と悩んでいると、真鍋さんが突然声を発した。
「あっ!!!」
「うぉわ!!!ま、真鍋さん。もも、もう少し小さい声で話してもらえると…」
「すまないすまない!そう言えば忘れていたと思ってな」
「な、何を?」
そう言うと、真鍋さんは僕に向かって手を出してきた。その意味が分からず、僕は何もリアクションできず、ただただ真鍋さんが差し出した手を見つめていた。
「何か悩んでいただろう?それについて考えていたんだが、そういえば一緒に行動するのに挨拶もしてないと思ってな!」
そう言い、差し出した手をさらにずいっと僕に向かって突き出す。そして差し出された手の意味を理解するとともに、まずいことに気付く。
まず差し出された手だが、おそらく握手しようとしているんだ。「これからよろしく!」的なやつだろう。真っ直ぐな真鍋さんらしい儀式とも言える。
ここで問題なのが僕に女子の免疫がないこと、なんてくだらないことを言うつもりはない。もっと本気でヤバイことがある。
握手をするということは真鍋さんに触れるということ。
つまり、"無限の可能性"が発動してしまうのだ。
そうなると、今持っているスキルのどちかを上書きしないといけなくなる。
経験値2倍か、筋力アップのスキル、どちかを失うのはかなり痛い。できればこの握手は断りたい。
しかし、純粋な眼差しでこちらに手を差し出す真鍋さんを見てしまうと、とてもそんなことはできない。理由を話し、握手を回避することも考えたが、"無限の可能性"のことは話さないと決めているからそれもできない。
話さないと決めた理由だが、触れた人のスキルを使えるなんて能力が知れてしまうと、触れさせてくれなくなり、スキルがコピーできなくなると考えたからだ。
だってそうだろう?自分が一生懸命モンスターと戦い、レベルを上げて、ようやくゲットしたスキルを、何の努力もしてない、仲良くもな無職で友人でもない俺なんかがコピーして使うって聞いて、協力的なやつなんて絶対いない。俺でも嫌だ。
真鍋さんの事だから、人に話さないでねと忠告すれば守ってくれるとは思うが、不器用さからつい僕のスキルの事を口走ってしまい、結果バレてしまう可能性もあるから、それも望めない。
となると、僕のとれる行動は1つしかなかった。
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