第3話 無職光明!スキルも可能性も無限大?!目指せオンリーワン!

 2Lv ステータス微増

 3Lv ステータス微増

 4Lv ステータス微増


 他の職業が1Lvアップすると3〜5アップするところが、僕は最高で2。元々ステータスが桁違いで、上がり幅が人の半分以下の僕は、人と同じステータスになるのに倍以上かかる、ということだった。


 正直、王様の言葉がなければ心が折れていた。あの言葉があったから、スキルレベルがアップするまで頑張れた。

 経験値は山分け制。どんなカスダメージしか与えられなくても、モンスターにダメージを与えた人数で均等に分配される。

 人の手を借りるしかない僕は、経験値2倍のパッシブスキルを持っていても、険しい道のりだった。

 そして5Lvに上がると、ついにその時が来た。


 5Lv ステータス微増

 パッシブスキル Lv2


 キタ!キタキタキタキタ!

 みんなが2日で到達するレベルに、1週間以上かけてようやく到達した。

 これで未来が期待できないような上がり方だったら、もう諦めてやる!そう心に決めていた。

 バカにされ、哀れまれ、笑われ、ウザがられ、日陰人生だった自分には相当キツイ仕打ちだった。

 それも今日で終わりだ。解放される。これで諦めがつくってもんだ。

 そう思いながらステータス画面を開く。諦めようとしてるくせに、やたら心臓の鼓動が早い。

 頭では諦める、諦めると言っているのに、心の片隅には何かを期待している自分がいる。

 自分がヒーローにでもなれる、何かになれるんじゃないかと。そんなわけないの。


 ステータス画面に表示される、パッシブスキルに注目し、詳細画面を開いた。


【パッシブスキル Lv2】

 無限の可能性

【説明】

 無職。職がない。

 逆に言えば"何にでもなれる"。

 つまり、そういう事だ。

【効果】

 ・触れた相手のスキルを2つ使えるようになる

  ただし、スキル利用ステータスを満たしていない場合は利用できない

 ・スキルは2つしか保有出来ない

 ・相手に触れると、必ずスキルを選ばないといけない

  スキルを選ぶまで、今のスキルは利用不可となる


 ………増えている。

 保有できるスキルと、使用できるスキルの数が。これは果たしてどうなんだ?諦めるに値するか?


 だけど、1Lvアップしただけで保有スキルと使用スキルが1つ増えた。ということは、これからもドンドン増え続けるってことか?

 もしそうなったら…いや、でもいくらスキルが増えたところで、ステータスが貧弱では意味がない。物理攻撃も魔法攻撃も通用しないんだから。

 ステータスが貧弱…だか、ら?


 瞬間、僕の脳内に衝撃が走った。名探偵が何かに気付いたとき、電撃のようなものが走るが、まさにそれだ。


 僕は周囲を見回し、ある人物を探していた。その人物とは、職業”剣士”だ。

 飯屋で仲間たちと談笑しているところを発見し、こっそり近寄る。

 たまたま後ろの席に座ったように見せかけ、そしてこっそりと背中に触れた。

 スキルが発動する。


【無限の可能性】発動ーーー。

「スキルを選択してください」

 どこからか声が聞こえてくる。次の瞬間にステータス画面のような画面が表示され、相手のスキルと効果が分かる。


【剣士アクティブスキル】

 ・一閃(-3MP)

  横広範囲を剣でなぎ払う。

 ・二連突(-5MP)

  同じ箇所を二度突く。二撃目は必ず急所に当たる。


 クソ。アクティブスキルをもう2つも持っているのか。 ずるいだろ。というか、一体何Lvなんだ?

 でもお目当てはそこじゃない。俺が狙っているのは……


【パッシブスキル】

 ・一心振乱

  (筋力+速さ+器用)×10回剣を振ると、筋力が1上昇する。


 これだ!これこれこれこれ!


(一心振乱取得)

 頭の中で念じる。「かしこまりました」という機械音声のような声が聞こえてくると、スキルが追加された。


 ステータス画面。無限の可能性詳細確認。


【無限の可能性】

 ・手抜き上手

  経験値が2倍。

 ・一心振乱

  (筋力+速さ+器用)×10回剣を振ると、筋力が1上昇する。


 理解した。僕のパッシブスキル【無限の可能性】は、本当に無限の可能性を秘めている!!


 僕は他の人に比べてステータスが低い。

 剣士の人と比べてもそれは一目瞭然。特に、剣士は筋力、速さ、器用のステータスが高かったようで、「えー、600回も剣振って筋力1UP?クッソ使えねぇスキルじゃん」と言っていたのを覚えていたのだ。


 今の俺のステータスはというと。


 −ステータス−

 名前 平 和(たいら のどか)

 Lv  5

 年齢 15歳

 性別 男

 職業 無職

 体力 20

 筋力 8

 耐久 6

 MP   8

 賢さ 7

 器用 4

 速さ 5

 勘  8

 運  5

 属性 無


 これ。[一心振乱]で筋力が1あがるのに必要な回数は。


(8+5+4)×10 = 170回


 剣士の初期ステータスより低いという事実は悲しいものの、剣士の3分の1以下の回数で筋力が1上がるというのはかなりありがたい。

 本職はステータスの伸びも良く、レベルが上がれば上がるほど回数が現実的ではなくなる。

 しかし、僕は持ち前のステータスの低さ、ステータスのあがりづらさが幸いし、Lvが上がってもさほど影響はない。


「これが…俺のスキル…」


 今は2つしかないが、このままLvをあげていけば、いくつもてる?その時、ステータスアップ系のパッシブスキルをいくつも持って、Lv上げ、ステータス上げを続けていけば…


「考えただけで…ゾクゾクしてきたーーー!!!」


 僕は強くなれる。それも、周りのやつに負けないくらい強く!!!


 それから1週間、ひたすらLv上げとステータス上げに勤しんだ。

 日中、みんながいる時はおこぼれをもらいに奔走し、みんなが活動をやめたら素振りをする。


 1週間が過ぎる頃には、ステータスが見違えるようだった。


 −ステータス−

 名前 平 和(たいら のどか)

 Lv  9

 年齢 15歳

 性別 男

 職業 無職

 体力 24

 筋力 45

 耐久 9

 MP   12

 賢さ 12

 器用 7

 速さ 8

 勘  15

 運  8

 属性 無


 どうだ!見たか!この圧倒的筋力!

 勿論簡単ではなかった。最初から最後までかなり本気で振らないとカウントされないし、日付が変わると回数がリセットされてしまう仕様だった。

 それでもようやく、剣士の初期ステータスと同じ回数になった。しかし、剣士は速さも器用も高い。

 おそらく筋力だけの数値で言えば、剣士をはるかにしのぐ状態になったと言えるだろう。今のステータスに勝ってるかといえば、多分勝ってないだろうけど。


 そして今日、ついに僕は一人でモンスターと戦う決心をして、森の中にいる。

 一番最初。初期の剣士でも、最弱モンスターを倒せていたのだ。自分でもできるはず。

 ドキドキしながら、手には王様より支給されたナイフを持ち、最弱モンスターを探す。

 それはすぐに見つかった。岩陰からぽよっと現れたのは、誰もが聞いたことがあるモンスター。「スライム」だ。


「悪く思わないでくれよ…」


 武器を構える。僕の姿を見たスライムが、途端に臨戦態勢に入る。

 いつもはみんながいたから怖くなかったが、一人で対峙すると恐怖が体を支配する。

 え?スライムってこんなに怖かったっけ?


 ジリジリと近寄ってくるスライムに、ジリジリと後ずさる僕。両者の距離は縮まらなかったが、後ろの大木のせいで僕は下がれなくなり、距離がだんだんと近づく。

 スライムの射程距離になった瞬間、スライムが飛びかかってきた。


「ひぃぃぃぃ!最弱モンスターだったら倒せると思ってた時期が僕にもありましたーーー!!!」


 殺される!!!という恐怖から、頭を手で覆ってしゃがみ込む。女子が見たら120%引いているであろう、情けない姿をさらしていた。


 ブシュ!!!


「$#@%&ーーー!」


 なんとも言い表せない断末魔の声。よく聞いていた、スライムが息絶える音だ。

 なんでこんな時に!息絶えようとしてるのは僕の方だ!誰か助けて!!!


 ………ん?断末魔……?


 チラッと薄目を開けてスライムの方を見ると、スライムはナイフに刺さり絶命していた。


「ぼ、僕が倒したの……か?


 辺りを見回し、もうスライムがいないことを確認し、全力でガッツポーズをした。


「いーーーーっよっしゃーーーーー!!!!」


 経験値はそんなに大したことないが、「モンスターを自分一人で倒した」という事実が、僕に勇気と自信を与えてくれた。そしてちょうどLvも上がった。


 Lv5の時はパッシブスキルが強化された。果たしてLv10では……?!

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