第15話『完成パワードなスーツAA』



 シルヴィアと出会ったシルバーメイズ遺跡の地下で生活することはや三カ月が過ぎていた。俺はいまだ開拓村にもいかず森で狩りをして素材を集めしこしことパワードなスーツ製作に取り組んでいた。そして――


「完成だ」


 この三カ月で俺は二機のパワードなスーツを完成させた。

 壁に並ぶ二機のシルバーカラーの機体。


「おめでとうございますマスター」

「ありがとうシルヴィア」


 俺とシルヴィアはブラックボアの皮をなめし加工した全身フィットなボディースーツを着ている。素材が少なかったので袖や裾が若干短くなっており、出るところは出て、くびれる所はくびれているメリハリのあるシルヴィアのスタイルについつい視線が誘導されそうなのを我慢する。


 けっしてやましい気持ちで作ったわけではない、やっぱりパワードなスーツのインナーといったら全身フィットスーツがお約束だからだ。

 これは譲れない。男の俺だって一緒に着ているんだから免罪符も完璧だ。


「決してエロ目的ではない」

「どうかしましたか」

「い、いやなんでもない」


 どもってしまった。俺は気持ちを落ちつけ視線をパワードなスーツへと戻す。

 剣と魔法の世界には似つかわしくないSF風の流線形デザインが石造りの壁を背に立っている。うん、とてもミスマッチ、専用のハンガーでもあれば見栄えも変わっていただろうが、そんな余裕はなかった。

 ビジュアル的にもフック付きのクレーンとか天井に鉄骨のハリとかは欲しかった。シルヴィアに同意を求めても首を傾げられるだけだが、元プラモデラーとしては外見は大事にしたい。しかしこれ以上はこのシルバーメイズにとどまれない事情ができてしまった。


「食料が無くなる前に完成してよかったです」

「ああ、本当にな」


 SOネットではシルバーメイズ遺跡がある地域に冬到来を告げている。食べられる野草や果実が無くなり、動物系の魔物も冬眠に入ったのか姿を見なくなっていた。


「二週間前にブラックボアを討伐したのが最後だったな」


 それから食料の確保ができず。シルヴィアの節約料理のおかげで食いつないできたが、それもあと二日分とつきかけている。


「だが、これらが完成した以上もう節約する必要もないぞ」

「ついに開拓村に向かうのですね」

「おう」


 本当はもっといろいろ作りたかったけど、とりあえずは本体の完成で満足しておく。オート装着装置とかあれば楽に装着できるのだが、当然そんなものは作っている余裕はなかったので、鎧を装備するように、脚部パーツを履き、胴体パーツを着て、腕部パーツをはめて、背面パックを背負い、最後に頭部パーツを装着すればできあがりだ。

 各つなぎ目は魔導回路で接続されパラバラだったパーツがひとつのパワードなスーツへと完成する。


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■製造番号AW-01・機体名『フゥオリジン』

◇中量級射撃型 ◇カラー「ダークシルバー」

◇素材 骨合金、表面はコーティング剤で塗装。

◇機体構成

「コア(C)」上級魔結晶

「ヘッド(H)」サーチバイザーVer.5

「ボディ(B)」フゥオリジンボディ

「ライトアーム(AR)」ロックオンアーム

「レフトアーム(AL)」アルケミーアーム

「レッグ(L)」ホバーブーツ

「バックパック(BP)」大型ホバーコンテナ


◇武装

・メインウェポン(AR)……魔導式リボルバー(弾数36)

   〃    (AL)……四連ミサイルランチャー内蔵シールド(弾数0)

・サブウェポン(AR・AL)……魔力吸収型グライダーナイフ(弾数2)

   〃    (L)……狩猟用ニードルガン(弾数9)


◇補足

 カズマが異世界にて最初に生み出したアクティブアーマー。これから発展させることを考え、できる限りシンプルに仕上げ拡張性を持たせている。

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『心臓部』『頭部』『胴体部』『右腕部』『左腕部』『脚部』『背面部』の七つのパーツで構成されたパワードなスーツ。


「フゥオリジン。ここから始まる、輝かしい未来。妄想でもない、コスプレでもない、本当に稼働している俺のパワードなスーツだ」


 ホバーを起動させアイススケートのようにその場で一回転ターン、続いて盾を突き出し素早くミサイルランチャーの発射口を開き、最後はリボルバーを抜きポーズを決める。

 この角度が一番かっこいい影をバックに作り出す。もしこの機体がプラモだったらを考え、一番見栄えするポーズを機体に登録したのだ。命令ひとつで機体がかってにこの決めポーズをしてくれる仕組み。


「うん、完璧だ」


 まさに感動、この雄姿を動画投稿サイトに投稿できないのがとても残念である。


「シルヴィア、そっちは問題ないか」


 同じようにパワードなスーツを装着したシルヴィアに訪ねてみる。


「はい、問題ありません」


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■製造番号AW-02・機体名『ヴィアイギス』

◇中量級防御型 ◇カラー「プラチナ」

◇素材 骨合金、表面は念入りにコーティングされている。

◇機体構成

「コア(C)」上級魔結晶

「ヘッド(H)」ヘッドギア・アイギス

「ボディ(B)」ヴィアイギスボディ

「ライトアーム(AR)」ロックオンアーム

「レフトアーム(AL)」スパイラルアーム

「レッグ(L)」ホバーブーツ

「バックパック(BP)」小型コンテナ


◇武装

・メインウェポン(AR・AL)……魔力吸収型グライダーナイフ(弾数6)

   〃    (AL)……スカイシールド

・サブウェポン……(L)狩猟用ニードルガン(弾数9)


◇補足

 シルヴィアの美しさを最大限に引き出すためにデザインされたシルヴィア専用機。戦乙女をモデルに製作された当機は、女性のボディラインの美しさを失わせることなく、防御力を維持している。


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 パワードなスーツ二号機『ヴィアイギス』。性能はほとんど一号機のフゥオリジンと変わらないが、コーティング剤を大量に使用することで軽量化しながらもボディの強度を保つことに成功した機体だ。


 俺のフゥオリジンはごっつくて重厚なイメージだが、アイギスは角を削り丸みを帯び、シルヴィアの体に合わせて胴体パーツも細くしている。彼女は自前で検索ができるのでサーチバイザーは備わっていない、変わりに羽飾りのあるヘッドギアに変更している。


「シルヴィアもポーズコード01をやってみてくれ」

「了解、ポーズコード01を開始します」


 ポーズコード01とはさっき俺がやった決めポーズのことだ。


 その場で一回転して盾を突き出しリボルバーを構えるまでが一連の流れ、アイギスにはリボルバーが装備されていないので変わりにグライダーナイフを構えた。

 一回転するときに舞い上がったシルヴィアの長い銀髪がとても幻想的で、俺と同じ動きだとは思えないほど雅で様になっていた。


「やっぱりパワードなスーツは女の子が着るのが一番だよな」

「そうでしょうか」

「そうなんです」


 本当に動画投稿できないのが残念である。投稿できればきっと俺に賛同してくれる人はいるはずだ。


「では、開拓村へ出発ですね」

「ああ、だが最後に一つやり残したことがある」

「やり残したことですか」

「わからないかシルヴィア」

「はい」

「この二機は、俺が持てる知識をつぎ込み完成させた機体だ。なのでいつまでもパワードなスーツと大枠な呼び方ではなく、固有の名前を付けてもいいじゃないか」


 そうパワードなスーツはあくまでも分類である。


「なるほど、確かにマスターが生み出しのですから、マスターに命名する権利はあります」

「だろ、だから名付けよう。異世界にて生み出したパワードなスーツ、その名は『アクティブアーマー』だ」

「識別分類『アクティブアーマー』登録しました。以後、マスターが製作した魔導甲冑をアクティブアーマーと呼称します」


 こうして俺の夢を形にしたアクティブアーマーが異世界に誕生した。



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