第4話 逃げろ
「ホテル・・・?ゆっくりやすめ・・・っ!」
古い豪華ホテルのラウンジのような部屋に出た後肩をつかまれた。
急いで銃を後ろに向け振り返る。
「・・・? だ、誰もいない・・・」
振り返ってみても誰もおらず一切気配が無い。
壁を背にし5分ほど周囲を窺うもやはり何も出ない。
「本当になんだった ひゃあ!?」
壁を背にしていたはずが誰かに背後から囁かれた。
誰かいるはずが無いと思うも、もし本当にいたとしたら?という可能性を捨てきれず何度も何度も背後からの声や手の感触に驚いてしまう。
「凄い不愉快な場所ねここ・・・でも1時間歩いても化物がいない 化物はいないかもしれない?」
様々な憶測が出るもアサミヤ個人の考えでしかなくどこまで行っても答えは出なかった。考えている最中にも不意に人影や流れているジャズが急変するなど精神的な消耗は目に見えていた。
不思議とアーモンドウォーターを少量口に含み不快感が来る前に飲み込むと精神が安定し、一種の精神薬として役立っていた。
「もう3時間休憩したり歩いてる・・・どこかで休んでもこの感じだろうけど眠らなくていいから休もう」
廊下を歩きとある一室に入ると照明で照らさておりシャワールームなどもついており一時的な休息を取るには十分と言えた。
気配を感じない恐怖におびえながらシャワーを浴び備え付けのタオルを使い体を拭きアーモンドウォーターを口に含みうとうととしていると人の気配を感じた。
「誰!?・・・やっぱりいないか・・・鍵も閉めてるし入ってこれないよね」
再びうとうとしていると気配を感じ起きるという行為を5時間ほどしていると完全な休息と言えないもののかなり休息ができた。
「なんか授業中の居眠りに対抗する時間を永遠に繰り返していたみたい」
うとうととした気持ちはなくなるもこの空間は長期間の探索や長期間の休息はできない事は今回の事で確定した。
思いついたように部屋を見渡すと瓶に入っているミネラルウォーターを2本見つけた。冷蔵庫に入っていたこともあり冷えており飲むのに適している。
栓抜きがないか探すとテーブルの小物入れのような場所に入っており1本をごくごくと飲み干すと足りないのか2本目も飲み干す。
水分をかなりセーブしていたこともあり冷えた水が美味しく感じる。
冷蔵庫に飲み物を入れ2時間再び休憩し冷やした後に部屋を出て探索に出た。
「うーんなんもないなあ ラウンジと廊下だけ」
適宜部屋に入り水を確保しながら歩きながら2日ほど経つとスマフォの電源が切れスマフォを奥底にしまい探索を続ける。
「水は十分にあるけど満足に食べれてないからお腹減ってきたな・・・」
菓子パンも残り1個となりちびちびと食べ飢えを凌いでいた。
ラウンジの上部分に上っても何もなくごくまれにライターやタバコが落ちていた。
一応拾っておきライターが5個とタバコ7箱分が溜まり何かあった時の燃料にすることに決めたアサミヤ。
「そろそろ何か出てくれないかな」
とぼとぼ歩いていると普段ラウンジにない下り階段を見つけた。
階段は暗いもののライトで照らすとぼんやりだが階段が見えている。
「お化けとかでないよね・・・?」
階段を10分ほど下るといつの間にかライトが効かない事に気づいた。
階段を急いで登ろうとした瞬間後ろから声が聞こえ驚き階段を転げ落ちてしまった。
「ここ何も見えない・・・」
「ねえアサミヤ 早く行こう」
「え!?モトミヤ!?え?なんで!?」
暗闇にはアサミヤしかおらず友人などいるはずもないのだが確かに声が聞こえ反応してしまう。
「ここは誰もいない・・・いいから進もう戻れない」
20分ほど歩くも懐中電灯もきかず唯々暗闇を歩き続ける。
常に幻聴や何か巨大な物が這う音や幻聴であろう音が常に響いてる。
先ほどの空間で慣れていたのか無視しないといけないと思い込み冷や汗をぬぐいながらとにかく前へ進んでいく。
壁も天井もどこかわからず床を頼りに恐る恐るといった感じで一歩一歩歩いていく。
「早くどこか明るい所へ・・・きゃあああああああ」
足を踏み外したわけではなく床に入り込んでしまった。この世界に来る際に来た時同様に抜け落ちてしまった。
「どこここ住宅街!?・・・早く逃げなきゃ!」
いつの間にか暗闇から住宅街に落ち慌てていたのものの一瞬で冷静になる。
目の前に数体、およそ7匹の人ではない何かがアサミヤに迫っていた。
アサミヤは瞬時に動き出し銃を撃とうかと思ったがこの人数相手に発砲したところで弾の無駄だと思い近づいてきたものだけ撃つことに決めた。
「はあ!はあ!・・・やばい!家へ!」
後ろを見ると差は少し縮まっており目の前にも3体ほど来ているため横にある家へ駆けこむ。
「お願い!開いて!」
神に祈りながらドアノブに手をかけると開き家にかけこみ鍵を急いでかけ家にナニカがいないかを銃を構えながら探索する。
どうやら家には一切おらず缶詰なども豊富にあり窓にカーテンをかけ万全を期す。
ドアなどにテーブルを置き完全ともいえる防衛を短時間で行ったアサミヤ。
「はぁ・・・外は危険すぎる・・・音を出さないように家で過ごそう」
缶詰などを豊富にみつけ当分は生きることができると確信が出来るアサミヤ。
外の状況を考えるに当分は様子を見なくてはいけずガチガチに震えながら家に籠る。
10時間ほど経つも外の化物たちはドアにもおらずこの時間大丈夫なら大丈夫だろうと予想をつける。
缶詰を少量口に含み1時間ほど経ち何も起きない事が分かると急に空腹が来たのか缶詰をガツガツと食べ始める。
「美味しい・・・美味しい・・・」
ぽろぽろと泣きながらご飯の味を噛みしめる。冷たい肉の缶詰も今ではどんなご飯よりもおいしく感じた。
この空間は常に夜であることが分かるも今はご飯を食べる事に専念した。
この空間に来て24時間ほど経つも食料は細かく食べたら2週間ほどある。
雨など急激に降ってくるなど天候の変化は激しいようで寒いのもあり布団をくるみながら長い眠りについた。
「・・・すごいぐっすり寝てしまったけど大丈夫ね」
1週間ほど夜のまま過ごし考えを巡らしていると標識を見つける。
矢印の標識が同じ方向に向かって建てられている。
3つとも不規則に並んでおり同じ方向を指している。
「何かあるかも・・・」
ただし気になる点もある。
・どれほど進めばそこにたどり着くのか
・道中の危険度は嫌というほど分かっているが増減はするのか
・果たしてたどり着いたとしてそこは安全なのか
いずれにしても今までの空間の次の空間には結びつきがなくどこまでも意味が分からない空間が広がっている現実のバグのような世界だ。
どうするか・・・とりあえず考えてはいるが、アサミヤはここに来てまで現実に戻るという選択肢を捨てきれていなかった。
最もここでは生きていけないのだが優先事項を現実に戻るために進むという選択肢を頭の中に置いてしまっていた。
どこまでも命取りな性格、希望を持っていたアサミヤ。
「食料は後3つ・・・2つ食べて明日起きたらとにかく全力で走って看板へ進む」
決断をしてしまった。
戻れる事や他の道を捨て前へ進むというここぞという場面であり得ない勇気を出してしまった。
勇気ではなく最早蛮勇と言ってもいいのだがアサミヤ本人はいたってやる気でいた。
時間が過ぎ朝起き缶詰を一つ食べ隙を見計らって外に出ることに。
「いくぞ」
周囲を窺いながら小走りでとりあえず走り周囲の化物を寄せないように走る。
スライムのような物や人型のような者や犬のような物がこちらに向かって走る。
後ろを向いてしまった。これが命取りだった。
普段だったら警戒していた前や下の情報を捨ててしまった。
「なに!?・・・足が!あああああ」
銃をすぐさま向け排水溝が出てきた手を撃つと手は引っ込むものの食い込んだ傷が深い傷を残し歩行を困難にする。
「動いて!・・・くそっ!」
足を引きずりながら化物どもに弾を撃ち込んでいくと何体かに当たるものの一部はこちらに一定のスピードで迫る。
アサミヤが家に入ろうと家に向かう。
後30mとにかく長い30mをアサミヤは走る。
だが足が限界だった。
「うぅ・・・待って・・・動いて・・・お願いやだやだやだやだやだやだ」
後ずさりしながら銃をありったけ撃つと一体の犬のような化物が残り弾も無くナイフを振り回すとこちらを威嚇している。
「こないで!こないで!あと少しで家に・・・」
後10mだった。だが無情であるナイフを押さえつけられ首元を噛まれてしまう。
そのまま首から体全体を齧られ捕食されていく。
最後にアサミヤが見た光景は化物の顔に張り付く人間の憎悪を固めた顔だった。
「で・・・それがたまたま盗聴器をつけた人間の物語ってわけね 何とも悪趣味な物語だわ ローマとかで流行りそうな最後ね」
「ミヤタ・・・悪かった レベル1の時点で助けて置けばよかったんだが銃の携帯を目にしてしまってどうしようもなくなってな」
「気にしないでホリエ まあしょうがない危険性があれば疑うのはベター 恐らくレベル5とレベル9の途中はレベル6にでもいたんでしょ まあしょうがないわ」
「次からは尾行して組織に加わってくれるか聞いてみる事にするよ」
「そうね 日本人なら余計やりやすいわ」
「彼女の死は無駄にはしない」
「そうね」
「この空間はいずれ無くすか完全な統治下に置き有効利用させてもらうわ それまではいくらでも下手に出て犠牲をあげるわ」
「そうだな・・・そのための組織だ」
「ええ きっとここも人間様の物になるわ 次はどのような人間であれレベル1に来たのなら組織に入れましょう 説明すれば絶望して従うしかないわ」
「・・・ああ」
ログ:1287 次回からの侵入者対処
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