夏の終わり、彼氏は例のごとく私の体を貪っていた。


「本当に綺麗だよ」


 彼氏に組み敷かれ、欲望のリズムに揺れながら、私は彼の汗ばんだ額を眺める。


 綺麗という言葉は、私の体に向けられていた。もう彼は私を見ていなかった。


 ねえ、今までプラトニックだったのは私の体に魅力がなかったからなの?


 彼はもはや王子様ではなくなった。


 ツチノコ体型の、醜い巨漢。


 魔が差した、だなんて言い訳だけど、私は自分の美しさのほどをもっと見てみたくなった。蛇に変身してしまったあの夜、バーにいた男に私は電話をかけてみた。


 事はすらすらと進んだ。


「美しいでしょ?」


 それだけだったけど。


 季節は秋、生き物が冬を越すために蓄えるのと同じ。私は男たちを次々と丸呑みにしていった。ぐったりと果てた彼らが、私の美しさを証明する。彼氏に後ろめたい気持ちをいだきはするものの、私は夜な夜な街をヌルヌルと這い回った。


 美しくない女たちから獲物を横取りした。時には連れが隣の部屋にいる時でも男を食った。何食わぬ顔で二人して連れの元に戻って、苦い酒を飲む。連れの女が口にするのは私がしゃぶりきった骨。ざまぁみろ。


 バカな男どもめ。


 アホな女どもめ。

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