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『人を呪わば墓穴二つ』
誰かを恨み、呪ってしまえばその報いはいつか必ず自分に返ってくる。法律的な話じゃない。もっと人として、俗世を超越した話だ。記憶をたどってみると、それは祖母の教えだった。人を殺せば死の代償がある。相手と自分ので墓穴が二つ。私は理不尽さを呪って、その代償として自分を殺したくなかった。理不尽すぎる、そんなの。私から辛かったのに、どうして相手と一緒に苦しまなきゃならないのだろう。
けれど、悔しい。
暖炉に薪を焚べるように食べ物を頬張って、負の感情が燃え上がる。悔しさが込み上げる。もともと大きかった私のお腹は異様に膨れ上がった。外にはもちろん出かけなかったし、窓にさえ近づかなかった。運動はもちろん、太陽を見ることさえなくなった。
だって、見つかってしまうかもしれないから。
そんな引き篭り生活が続いて、唐突に私は臭いタオルケットを体に巻いたままリビングに姿を表し、潰れきった声で両親に言った。
『この町にはいられない』
ツチノコとその両親は、私の高校進学のために東京に出た。よく分からないが、ちゃんと中学は卒業したことになっていた。憎しみを込めて勉強はしていたから試験はどうにでもなった。高校ではなんとか登校した。人並みに傷付きながら、たまに笑ったりして、地味に慎ましく過ごした。両親はよく私の一人暮らしを認めてくれたと思う。見放したのとは違う。私は愛されていた。二人もかなり悩んだに違いない。ありがとう……それ意外の言葉が見当たらない。
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