第2話 最高で何もできないバトル

「今起きたことをありのまま話すぜ・・・・・・・」

 モスチキンはチキンパウダーまみれになりながら説明してくれた。

「俺はケンタッキー・フライド・チキンの秘密のスパイスレシピを手に入れたはずだったのに、同じ味が再現できないんだ」

「何言ってんだ。レシピ通り作ってんだったらオリジナルと同じはずだろ?」

 ファミチキが呆れたように蔑ろにする。

「だがら俺も信じれないからこそ、こうしてケンタッキーを敵視しているオマエラに相談してるんだろ!」

「たまたま、失敗したんじゃないのか」

 マックナゲットが高みの見物の如く、ハッピースマイルを雌犬に餌をやる。

「んんんッッ!? おうっ! おっ、お? おおおおんんんんッッ!!」

 雌犬は今日も元気です。レギュラー満タンですね!

「それが何度やっても、モスチキンになってしまうんだよ」

「なんですか? オタクのチキンが実はケンタッキーと一緒でしたってオチですか」

「バカにしてんのか? 俺のチキンがあんなギルガメッシュな訳ないだろ! いい加減にしろ」

 モスチキンは試作の『にせ・ケンタッキー・フライド・チキン』を雌犬に投げつけた。

「ムチチチチチチィッィィィィィ!! イエローサンオイルオーバードライブッッ!」

 雌犬は突如、全裸から見えない電流がほとばしるとマックナゲットに攻撃した。

「HAAAAAAAPPPPPPYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」

 命中したマックナゲットは、電流アクメ絶頂のアへ顔でダブルピース。

 そっと雌犬が耳元でささやく。

「ーーーーS M I L E・・・・・・・」

「ブゥンッッ!」

 マックナゲットのボディーラインが消し炭になり、千の風になった。

「あれ、おい? 誰かマックナゲットを見なかったか?」

 ファミチキが今気づいたかのように辺りを見渡す。

 だが、いるのは対面に座るモスチキンだけだ。

「もしかして、『真実』に到達したからじゃないか?」

 顔面蒼白のモスチキンが汗をダーッと垂れ流す光景にファミチキもヤバいと気づいたのだろう。

 ケンタッキー・フライド・チキンはいたって普通のチキンだ。

 だが、そのブランド力を己のエゴために行使している。

 それはあまりにも暴挙であり、競争社会において天秤を狂わせている。

 もし、ケンタッキー・フライド・チキンの『真実』に到達しようものなら、ケンタッキーの州兵が攻めてくるのはオセアニアじゃあ常識なんだよ。

 こうなったら今こそ立ち上がる時だ。

 我々はマックナゲットが残した『真実』に触れることで、奴と戦うことが出来るはずだ。

「おい、これ」

 ファミチキが脳内論争でいると、モスチキンが何かを発見したみたいだ。

「これは、人間の糞!?」

「どうしてこんなものがあるんだ! 衛生兵は一体何をしている! 清掃が薄いなにやってるの!」

「募集をかけても、誰も来てくれないんですよ」

「まったく誰が政治をしとるか!」

 ファミチキは糞を素手でつかむと、

「むむ? 温かい。まるでホットレモンティーのようだ」

「味はするか?」

 ファミチキは舐めると、

「ブゥンッッ!」

「あれ、ファミチキ?」

 モスチキンは突如目の前で消えたファミチキに驚きを隠せない。

「もしかして、この糞に『真実』があったのか」

 辺りを見渡しても、いるのは雌犬だけ。

「だとしたら、触れてはいけない。今すぐにでもここを去らなくては!」

 だが、もう遅かった。

 いや、動いたことが発動条件を満たしていたのだ。

「トラップカードオープン! スパイス防止法!」

「なんだって! スパイス防止法!」

「このトラップは、相手が企業秘密を他国、および社外に持ち出すとき発動することが出来る。法律に乗っ取り、雌犬を送ることで事件に関わった人物を世界から除外する」

 雌犬が仁王立ちすると、それは人間のメスのように語りかけた。

「クソ、タイミングを逃したのでチェーンが組めない・・・・・・・」

「諦めてスパイスを返してもらおうか」

「くっくっくっくっくっ・・・・・・・」

「何がオカシイ?」

「ーーーーだが、断るッッ!」

「『ドゥルン!!』」

「ブゥンッッ!」

 雌犬の『ドゥルン!!』にファミチキは痛みすら感じる前にこの世からエクスプローラーした。

 雌犬には慈悲がなかった。

 あるのはたった一つ、

「テメェーは著作権を侵害した。それだけだ・・・・・・・」

 雌犬は仕事をやり遂げクールに現場から去った。

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ショート短編集 無駄職人間 @1160484

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