第8話


 いや、分かってたことだけど本当に狭いな。


 私たち3人は今、3人ともお風呂に浸からずにシャワーのところにいる。


「夏葉軽く体流して最初にお風呂浸かってて。私マリナちゃん洗ってから入るから」


「分かった」


 夏葉はそう返事をすると20秒ぐらいサッとシャワーを浴びてお風呂に浸かった。私の言いたいことをあの言葉だけで理解してくれるとは、本当にうちの妹は頭がいいな。


「はい、じゃなマリナちゃんこの椅子座ってね。ってあれ?」


 私が声をかけたのに隣で固まったいるマリナちゃん。もうこの反応を見るのは何度目だろうか。


「あれは何だ?すいどうよりは長いし、水が広がっているように見えたが」


「これはシャワーって言ってる体を流すためのものだよ。ということで、早く座る」


 さっきから浴槽に浸かっている夏葉の目が怖いのだ。視線は私じゃなくマリナちゃんの方に向かっているようだが。


「お湯かけるから上向いててね。マリナちゃん髪長いから大変なことになるよ」


「ふん、そうやって我の顔に水をかけようとだろうのだろう。しかし、我はいっつも下を向いているから大丈夫なのだ」


 あっ、マリナちゃん湯浴びぐらいで、人にシャワーされる時の恐ろしさを知らないな。


「本当にいいんだね」


「だからいいと言っているのだ」


「じゃあいっきまーす!」


 私はそう言って勢いよくマリナちゃんの脳天にお湯をかける。


「おぉー、きもちぶああるばぁあばあるやべつで」


 シャワーによって髪の毛が顔に張り付いて息ができなくなっているマリナちゃんを見かねて、シャワーを止めてあげる。


「ぶはぁー。し、死ぬかと思ったではないか!」


「私最初から上向いてって言ってたじゃん。やっぱり酷いことなったでしょ」


「お姉ちゃんもっとやってやればよかったのに」


 えっ、何?うちの妹はマリナちゃんに恨みでもあんの?今日会ったばかりなのに。


「上向けばこんなふうにはならないんだろうな!」


「うん、多分ならないと思うよ。マリナちゃんが暴れない限り」


「わ、分かった。慎重にしてくれよ。我をさっきのような目に合わせたら次はお前の番だからな」


 いや、さっきのってマリナちゃんが自分でいいって言ってた気がするんだけど。まぁ、いっか。


 私は、恐る恐ると言った感じで上を向いたマリナちゃんの髪の毛をまとめておでこを全開にする。そして、おでこから髪の毛の方にお湯がかかるようにゆっくりシャワーを当てた。


 その間マリナちゃんは目をぎゅっと瞑ったまま一切こっちを見ようとしない。その力一杯を閉じている姿が可愛く見えてくる。


 私がシャワーをかけながら、マリナちゃんの髪を流しているとすごく気の抜けたような声が浴槽に響く。


「ふ、ふわぁ〜。な、何だこれは。さっきとは全く違って気持ちいではないか。目にも入らないし息もできて素晴らしいな」


「お客さん、お痒いところはありませんか?ないのでしたら、次はシャンプーに移りますよ」


「もう我は雪菜に全部お任せする」


「言質頂きましたからね」


 その後私はマリナちゃんの髪がピカピカの光沢が出るぐらいまで丁寧に洗ってあげた。お風呂から上がったら、今度はサラサラヘアにしてあげるつもりだ。


 頭の後は体も洗ってあげてからお風呂につっこむ。その頃にはマリナちゃんはツヤツヤの気分ふわふわ状態になっていた。


「よし、じゃあ私もパパッと洗っちゃうかな」


「違う、次私」


「えっ?」


「私」


 あれっ?さっきまでお風呂浸かってたはずだよね。いつの間にあがったの?私今から洗おうと思ってたんだけど。


「はぁ、分かった。夏葉が最初でいいよ」


「違うの。お姉ちゃんが洗ってくれるんでしょ?」


 私は結局、夏葉の体と髪の毛も洗ってあげて、自分の体は最後になるのだった。


 そんなことをしていたため、私がお風呂に浸かるときにはマリナちゃんが真っ赤な顔をして茹ってしまっていたのは必然のことだった。


「2人して我を茹だらせようよしたのか!」


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