第9話
「そんな怒らないでも。まぁまぁ、これでも飲んで落ち着いてよ」
私は顔を真っ赤にして怒っているマリナちゃんにコップに入ったオレンジジュースをわたす。
「おっ、それはおれんじゅーすではないか!」
「そんなに急いで飲まなくても」
「お姉ちゃん、私のは?」
私がマリナちゃんの飲みっぷりに呆れていると隣から夏葉がそう聞いてくる。
「ごめん、夏葉。今マリナちゃんが飲んでるので最後なんだよね。けど大丈夫。お茶はちゃんと作ったからちょっとぬるいけど飲めるよ」
「えっ?オレンジジュースって確か一本丸々あったよね。それはどこいったの?」
「え、えっと、、、、」
私は何も答えられなくなり、流石に目線をマリナちゃんのお腹に向ける。
「まさか、、、」
「そうです。マリナちゃんが全部飲んじゃいました。あっ、でも私も一杯飲んだから正確には全部ではないね」
「それでもでしょ!ちょっとマリナ飲み過ぎ!それ私の、ってもうない!?」
「雪菜、お代わり!」
「「だから、無いんだって!」」
部屋に私と夏葉のツッコミが響く。
「あ、あれで最後だったのか?」
「あ〜、あ〜。明日買いに行こう。明日。ちゃんと夏葉が飲める分も」
「いいもん。私が行くし」
「夏葉は受験生だから土曜も学校あるでしょ。だから、私とマリナちゃんで行ってくるよ」
「ずるい、、、、、」
「えっ?なんか言った?」
「何でもない。2人で仲良く行ってくれば!じゃあ、私勉強しないといけないから上がるね」
そう言うと夏葉は勢いよく上がって行ってしまった。
「夏葉は何に怒っているのだ?」
「さぁ、オレンジジュースが相当飲みたかったんじゃない?」
「多分、違うと思うのだが」
「夏葉上がっちゃったし、私たちも歯磨きして上がろっか。マリナちゃんも今日は色々ありすぎて疲れたでしょ」
「そうだな。ところで歯磨きとは何だ?」
「いや、歯磨きは向こうの世界にもあったでしょ」
「いや、我は歯なんて磨いたことなんてないぞ」
「ちょっと待ってマリナちゃん口開けて」
私はマリナちゃんの衝撃発言に思わず口の中を見せてもらう。
「あーー」
「ピカピカだ。めっちゃ綺麗な歯並び&歯の色。いやいや、でもこっちの世界に来たなら磨かなくちゃね」
前に虫歯になった歯が疼く。何でマリナちゃんがならなくて、ちゃんと磨いてた私が虫歯になるんだろうか。そう思いながら洗面台から新しい歯ブラシを出してマリナちゃんに渡す。
「これをこうして、水で濡らして口の中を磨くの」
「うむ。これをこうするのだな」
むにゅ〜〜。
「出し過ぎ出し過ぎだから!そんなに出したら口の中に大変なことになるよ!あっ、」
歯磨き粉が大量に乗ったマリナちゃんの歯ブラシはもう毛が見えていないかった。しかし、私が言ったときにはもう遅く。
「ゴホッ!ガハッ!ゴホッゴホッ。うぇ〜。何だこれは毒か?やっぱり毒なのか?いやでも、雪菜はそのまま口に入れてたし」
「歯磨き粉だよ。マリナちゃんのはただ単に出しすぎなだけ。あとはミントだからちょっと口に合わなかったのもあるかな。明日美味しい歯磨き粉も買おっか」
「??」
マリナちゃんが不思議そうにこちらをみているが明日驚くこと間違いなしだ。
そんな会話の後、2人できっちり三分間歯磨きをして2階に上がる。私は押入れから友達が来てもいい用の布団を出す。
「マリナちゃん今日はベット使っていいよ」
「べっと?」
「その少し段差がある布のことだよ」
「これをベットというのか。向こうのとは全然違うな」
「いや、一般的なやつで向こうにも合ったでしょ」
「我のは上にカーテンみたいなのが付いててもっとデカいやつだったからこんなのもあるんだなと感心したのだ」
あぁ、そういえばマリナちゃんって魔王様だったな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
よろしければ応援、レビュー、作品のフォローしてくれると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます