第5話


「誰よ、その女!」


 へ?


「お姉ちゃん、答えてよ!そんな変な格好した女は誰なの!?お姉ちゃんの何なの!?」


「ちょい、ちょい落ち着いて。一旦落ち着こう夏葉」


「落ち着けるわけないじゃん!お姉ちゃんが私の知らない女を連れてきたんだよ。しかも、そんな変な格好の!」


 私の宥めに落ち着く様子のない夏葉。うちの妹ってこんなキャラだっけ?


「おい、そこの女。これは変な格好じゃないだろう!私のお気に入りなのだぞ。バカにするな!」


「はいはい、マリナちゃんは少し黙っててね」


「いや、しかし」


「ね!」


「わ、分かった。悪かった雪菜」


 私は会話に入ってくるマリナちゃんを一旦黙らせてから、夏葉の方を向き直す。すると、水道を初めてみた時のマリナちゃんと同じ顔をしていた。


「夏葉?どうしたの。そんな顔して」


「マリナちゃん、、、、?雪菜、、、、?」


「貴様にマリナちゃんと呼ばせることを許可した覚えは無いぞ!、、、ひっ!」


「ひっ!」


「マリナちゃんごめんね。本当に少しだけ黙ってろ」


 私は無理やり笑顔を作ってマリナちゃんに警告する。でも、それによって夏葉まで怖がってしまっているので反省、反省。


「お、お姉ちゃん?その女のこと名前で呼んでるの?」


「うん、そうだよ。本名はもっと長いらしいけどもう忘れちゃった」


「へー、名前で呼び合うほど仲がいいんだ。私にも紹介して欲しいな」


 夏葉はにっこりと笑って私に紹介を求めてくる。でも、目が笑ってないからマリナちゃんも怖がってるよ。


●●●●●


「じゃあ、お姉ちゃんは今日の3時ぐらいに帰ってきた異世界の勇者で、そこにいる女はなぜかこっちの世界で倒れていた異世界の魔王なの?」


「そう言う事。はい、マリナちゃん。自己紹介して」


「ふん!何で我が雪菜のいうことなんて聞かねばいけない」


「じゃあ、これから先貴方は『その女』呼ばわりされ続けるけどそれでいいの?」


 私は少しいじけているマリナちゃんに向かってそう嫌味ったらしく言う。


「それはっ、、、、。はぁ、我の名前はマーファリナ・クイン。雪菜からはマリナと呼ばれている」


「です。はい次、夏葉自己紹介」


「長瀬夏菜」


「えっ?それだけ?」


「14歳中学3年生身長体重は内緒、趣味は美術品鑑賞と写真。以上!まだ聞きたいこと、言わないといけないことある?」


「「な、無い(です)」」


 夏葉の勢いに私たちはビビる。


「あれ?けど夏葉って美術品鑑賞なんて趣味だったの?」


「一般的なものはそんなに。私は私の美術品を眺めてるだけでいいの」


 夏葉は大事そうにスマホをぎゅと抱きしめる。自分の妹ながらたまに行動が意味不明なところがあるんだよな。そんなふうに思っていると私の声では無い声で妹に問いかける声があった。


「えっと夏菜?中学というのは何だ?」


「夏葉って呼ばないでください」


「じゃあ、なんて呼べばいいのだ!」


「私のこと呼ばなければいいじゃ無いですか」


 マリナちゃんが質問してくれたというのにこの態度。なんか今日の夏葉不機嫌じゃない?


「雪菜、中学というのはなんだ?」


 夏葉に断られたマリナちゃんが私にし聞いてきたので言葉を返そうと口を開いた瞬間に夏葉の声が響く。


「お姉ちゃんにも話しかけないで!」


「しゃあ、我はどうすればいいのだ!」


「この家から出ていけばいいんじゃないですか?」


 この2人仲良いのかな?さっきからマリナちゃんはいちいち夏葉に解決法聞いてるし、夏葉は夏葉でちゃんと答えてあげてるし。


「夏葉、ちょっと落ち着いて。マリナちゃんここでても帰るところないから」


「ホテルとかに泊まればいいじゃん!」


「いやお金がないから」


 ここで私はある疑問を抱く。


「あれ?マリナちゃんって何歳なの?」


「なんだ?唐突に」


「いいから、答えて」


「今、16だが」


 あぁ、未成年だった。しかも、私と同い年。


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