第3話
「はっ!死んでないだと?!これは遅効性の毒なのか?では、おかわり!おかわりをくれ!」
「いや、だから毒じゃないからね」
空になったコップをすごい勢いでこちらに差し出してくる魔王。どうやらオレンジジュースをとても気に入ってくれたようだ。
「はいどうぞ。あとそれも、もうちょっとしかないからゆっくり飲みなよ」
「何だと!我に早く死ねと言うのか!」
「いや、だから毒じゃないって言ってるでしょ。と言うか魔王が何でこの世界にいるの?」
「我も知らん。お前に倒されたと思ったら、気づいた時にはお前に起こされていたと言うわけだ。我も聞きたいのだが、ここは何処なのだ?見たことのないもので溢れているが」
急に話を振ってみたのだが魔王がちゃんと返してくれてホッとする。しかし、この状況を魔王も知らないとなるとどう言うことなんだろう。
「ここは日本、地球という星にある国。私が魔王のいる世界に行く前に住んでいたところ」
「思ってたのだが、その魔王っていうのはやめてくれんか。お前にも負けたし、もう魔王ではない。もとより、我は戦いたくて戦っていたわけではないからな」
「えっ、いまなんて「我の名前はマーファリナ・クインだ」
私が聞き取れなかった後半を聞き返そうとするとそれを遮るように魔王は自分の名前を名乗った。
「マーファリナ・クイン、、、、。じゃあ、マリナちゃんだね」
「マリナちゃん?!」
「嫌だった?」
「べ、別にお前がそれで良いなら呼ばせてやることもないぞ」
「じゃあ、よろしくね。マリナちゃん!」
「ふ、ふん!」
なんか、魔王改めマリナちゃんは新手のツンデレみたいなのになってるんだが、これは元からの性格なのだろうか?向こうでは魔王と話す機会もなかったから新鮮で面白いな。
「あっ、そういえば私もお前じゃなくて雪菜だからそう呼んでね」
「何で我がそんなことせねばなら「良いよね。マ・リ・ナちゃん」
「わ、分かった」
「それでマリナちゃんは向こうの世界に帰る方法は分かるの?」
「そんなものは知らん。向こうの世界に未練があるわけでもないし、ニホンにいた方が楽しそうだ」
私の質問に飄々と答えるマリナちゃん。まぁ、私の思いとしても向こうの世界に帰られたら困るからそれで良いんだけど。
「あっ、そういえば魔法とかって使えるの?ほら、私に向かって遠慮なく打ち込んできたやつとか」
「、、、、、、、何にも使えん。ここでの我は人間と同等だということだ」
「えっ?ちょっと待って今ここで魔法使おうとしたの?」
「そうだが?」
「ここ、家の中!分かってる?わ・た・しとわ・た・し・の家族が住んでる所なの。もし、魔法が発動してたらどうするつもりだったの!?」
「いや、普通に魔法で直せばいいだけだろ」
私の質問に飄々と以下略。前言撤回。やっぱり日本にいてもダメです。
「こっちの世界には魔法なんてないから!当たり前でも普通でもないから、、、」
「じゃあ、どうやって生活しているのだ!嘘をつくではない!」
「嘘じゃないって、科学技術の進歩だから魔法使わなくてもあっちの世界より便利な世界だと思うよ」
「証拠だ!お前っ、、、、雪菜、証拠を出してみせよ」
魔法一つでそこまで言うなんて、本当にマリナちゃんが魔法使えなくてよかった。使えてたらと思うと、そう考えて首筋に冷たいものが走るのを感じで考えることをやめた。
それよりも証拠だ。
「う〜ん、証拠、証拠って言われるとなぁ」
「「ぐぅ〜」」
私のその言葉に返事するように2人のお腹が同時になったのだった。
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