第2話
私はその道端に倒れている見覚えのある姿を見て叫ばざるを得なかった。
「何でここに魔王がいるの!!?」
真っ赤な髪に真っ黒なドレス。
間違えるはずもない。私が異世界で倒したはずの魔王がそこにいたのだ。
「うぅ〜ん、、、、」
私の声に反応したのだろうか魔王が少し唸るような声を出す。私はその様子を見て、ここに置いておくか、拾って帰るか迷う。しかし、ここに置いといて後で問題になるものめんどくさいので、とりあえず起こして連れて帰ることにした。
「ちょっと、起きて!何で魔王がこんな所にいるの?」
「うん?っ!貴様は勇者!我は貴様にやられたはず、って!ここはどこだ!?貴様は何をしたのだ!?」
「はいはい、ちょっと落ち着く。分かったからちょっと移動しようね〜」
「貴様何をする!」
目を覚まして暴れ始めた魔王を俵担ぎするようにして家まで持って帰る。私たちが叫びすぎたせいでギャラリーが集まり始めてたからね。
私に担がれながらヤイヤイと叫ぶ魔王を宥めながら何とか家にたどり着く。いゃ〜、周りの目が痛かったね。すれ違う人一人一人に2度見されるんだもん。もうやりたくないね
「目的地に着いたなら我を離せ!と言うか降ろせ!」
「何?あなた、また私に斬られたいの?」
「っつ!」
私の家の前に着いてもまだ叫んでいる魔王。いい加減うるさいし、私は向こうの世界で身につけた殺気を放ちながら告げる。それには魔王もビビったらしく急に静かになった。その後、家の鍵を開けて静かになった魔王を招き入れる。
「まぁ、とりあえず上がってまたここで叫ばれるのも面倒くさいし」
コクン。
魔王は私の言葉に静かに頷いておずおずと家の中に入ってくる。って、
「ちょっと靴!靴脱いで!」
「ヒィッ!」
いや、なんかショック。まさかの家の中に土足で上がり込んできたことにも驚きだけど、そんなに怖がらなくてもいいじゃん。さっきまでの威勢はどこに行ったの?
「ここで脱げばいいのか?」
「うん、そこは玄関。今私がいる地面と高さも素材も違うでしょ」
「いちいち靴を脱ぐとは何と面倒な、、、」
「文句は言わないの。ここ日本ではそういうところがほとんどだからね」
「にほん?」
私の言葉にポカンとしてただ繰り返す魔王。本当に私と同じで何も理解できていなさそうだ。
「とりあえず座ってよ。話したいこともあるし」
「そ、そうだな。我もお前に聞きたいことが山ほどあるからな」
2人でリビングにある机で向かいように座る。短い時間だったが色々なことがありすぎで喉が渇いた。冷蔵庫に飲み物を取りに行って、魔王の分も出してやった。
「はい、オレンジジュース。お茶作り忘れちゃっててこれしか無いから。文句は無しね」
「何だこの変な色の液体は?それにそれを入れている入れ物は何だ?こんなもの見たことないぞ。はっ!まさか、我が動揺しているうちにこの毒で殺す気だな!そんな手には、、」
「はいはい、毒なんて入ってないから。現に私同じの飲んでるでしょ。それに入れ物はこっちには当たり前にあるものだから」
私の言葉にいろんな角度からグラスに入ったオレンジジュースを眺め出す魔王。なんか、私が向こうで戦っていた時と全然違って驚いている。向こうで倒した魔王はこんなに可愛くなかったと思うんだけどなぁ。
「うっ、、、、」
そんなことを考えるていると、魔王がグラスを口につけた状態で固まっている。
「ちょ、ちょっとどうしたの?大丈夫?」
「う、うま〜〜い!何だこれは!?美味すぎる。こんなもの飲んだことないぞ!はっ、やっぱり、最後の晩餐ということだったのか!どうせ最後なら全部飲み干してくれるわ!」
いやいや、違うから。
コップに入っているオレンジジュースを勢いよく飲んでいる魔王を見ながら私はそう思うのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
頑張って書いていこうと思いますので、よろしければ応援、レビュー、作品のフォローしてくれると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます