第10話 1.2.3 家出の事情

 5月下旬。俺はさっそく京に琴音と朱音が星野プロに所属したいと言っていることを相談した。


「履歴書見たよ。この子たちなら充分アイドル声優になる素質があると思うよ」


「マジか!?じゃあ2人の星野プロへの所属を認めてくれるのか?」


「ただし、条件があるよ」


「条件?」


「君が2人のマネージャーをすることだ」


「ええええ!?」


「君まだモデルの駆け出しだから仕事少ないでしょ。アイドル声優のマネージャーはいい勉強になると思うよ」


 家に帰って星野プロへの加入の条件が俺がマネージャーになることを話した。


「お兄ちゃんがマネージャーなら一安心ですね」


「お兄がマネージャー!?なにそれ!?嬉しすぎる!!」


「よろしくお願いします、お兄ちゃん」


「よろしくね、お兄!!」


 こうして俺は2人のマネージャーになることになった。勉強時間が、勉強時間がさらに減ってしまうのだが……。


 ☆


 5月上旬。今日は麗華の家庭教師初日だった。まずオリジナルのテストを受けてもらった。採点したら5教科で86点(満点は500点)と酷い状況だった。数学に至っては算数の九九から怪しかった。


「麗華、九九の7の段言えるか?」


「7の段!?7×1=7、7×2=14、7×3=21、7×4……7×4=29?」


「28だな」


「7の段とか激ムズでしょ!!」


「いや、小学生レベルなんだけどな……」


 あと、家庭教師をして分かったのだが麗華の集中力はミジンコレベルだった。5分勉強したらスマホを弄るか雑談をするかだった。


「麗華、どうしたら勉強のやる気が出る?」


「うーん。……えっちぃご褒美くれたらやる気上がるかも!!」


「えっちぃご褒美!?」


「うん。せっかくセフレになったのに光介全然手を出してくれないんだもん」


 いや、セフレっていうのは一方的な宣言だったんだが……。


「分かった。具体的には何をすればいい?」


「まずは手を繋ぎたいかな。……あっもちろん恋人繋ぎね」


 恋人繋ぎか。それならセーフかな。もっとエロいことを要求されるかと思ってたから一安心だった。


「じゃあ、ひとまず30分勉強したら恋人繋ぎでいいな」


 よっぽど恋人繋ぎをしたかったのか30分集中してくれた。


 30分後、ついに俺たちは恋人繋ぎをした。


「えへへ、光介の手あったかーい」


 手を繋いでいる間、麗華は終始幸せそうだった。


 ☆


 6月上旬。


 俺は直奈ちゃんの部屋の前にいた。今日、俺は琴音からの宿題である家出してきた理由を聞くのだ。ドアをノックする。


「はーい」


「直奈ちゃん俺だけど入ってもいいかな?」


「いいよー」


 それで俺は直奈ちゃんの部屋に入る。


「光介君、何の用?」


「そういえばなんで家出したのか聞いてないと思って……両親と喧嘩したの?」


「いや、両親はこの家出のこと認めてくれてるよ」


「え?」


 てっきり両親と喧嘩したから家出してきたのかと思ってた。


「じゃあなんで家出したの?」


「あー、兄と姉がいるんだけどね、2人がセックスしてたの」


「え!え?ええええ!?セックス……マジで?」


「両親がいないときに兄の部屋で物音がするなと思って覗いたらヤッてたんだ……。気持ち悪いじゃん。兄妹なのにそんな目でお互いを見てたなんて。次の日、姉が謝ってきたんだ。もう私訳が分からなくなって2人と距離置きたくて家出したんだ」


「両親にはその……2人がヤッてること言ったの?」


「ううん。兄から両親には言わないでくれって懇願されたのとうちの両親優しすぎるから悲しませたくなかったの」


「そうなんだ。家出の許可はどうやってとったの?」


「両親には自分探しの旅に出たくなったって言ったよ。ね、優しいでしょ。優しすぎて2人の関係もあっさり認めるんじゃないかって心配なんだ」


 家出の理由は結構、深刻だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る