第9話 1.2.2 双子とアイドル声優

 5月中旬。今日は東京でモデルの仕事があるので新幹線に乗っていた。新幹線に乗っている間はもちろん勉強していた。得意科目である地理の参考書で勉強していた。


 2時間後、俺は東京に着いた。2時間ほどスタジオで撮影の仕事をした後、東京事務所に寄った。今日、楽しみにしていることがある。それは大人気アイドル声優、七瀬カレンに会うことだ。普段、俺は大阪事務所、七瀬カレンは東京事務所に所属しているので会う機会がほとんどない。だから東京の仕事は待ちに待った仕事だった。


「お疲れ様でーす!!」


 彼女、七瀬カレンが来た。


「……」


 本物の七瀬カレンを前にして緊張で言葉が出なかった。本物は写真の10倍以上可愛かった。


「お疲れ様ー。君……君に言ってるんだよ」


「……お、お疲れ様です」


 なんとか言葉が出た。


「君、かっこいいね。モデルさん?」


「はい……モデルです。……あのあのサインもらってもいいですか?」


「サイン?もしかして私のファン?照れるねえ。全然大丈夫だよ」


「あ、ありがとうございます。七瀬さんがキミキセで演じる小泉詩音がきっかけでファンになりました」


「そうなんだ。じゃあキミキセの詩音ちゃんのセリフ言ってあげようか?」


「いいんですか?」


「全然大丈夫だよ。君の名前を教えてくれるかな?」


「高坂光介です」


「じゃあ、行くね。……おっはよー光介君。光介君、大好きだよ」


 詩音ちゃんのボイスで大好きとは……感無量だった。まるで詩音ちゃんに大好きと言われてるみたいで嬉しくなる。本物の七瀬カレンは想像以上にサービス旺盛だった。


 ☆


 5月下旬。ある日の夕食。


「お兄ちゃん、私と朱音から話があります」


「お兄にぜひ聞いてほしいビッグニュースだよ!!」


「キミキセで新キャラのオーディションがあったこと知ってますよね」


「ああ、募集されてたな、CMで見たぞ」


「それで私と琴音ちゃんで参加したんだ」


「……初耳だな。いつの間に参加したんだ?」


「それで結果なのですが……なんと!!」


「1次審査合格したんだー」


「マジか!? 2人はアイドル声優になるのか!?」


「お兄ちゃん、まだ1次審査、1次審査ですよ。少し気が早いんじゃないですか」


 琴音が苦笑する。


「すごいね。おめでとう、2人とも」


「1次審査は書類選考だったのですけどね。……2次審査の条件として芸能事務所に所属していなければならないという条件があったんです。そこでなのですが……」


「星野プロがいいかなと思うんだ」


「な、なんだと!?」


「星野プロには七瀬カレンさんが所属してるじゃないですか。詩音ちゃん役の。七瀬カレンさんの元でアイドル声優についていろいろ教わりたいと思いまして」


「あとあとお兄が所属してるってのも決め手だよね。お兄がいたら一安心だし」


「分かった。それなら京に話つけとくよ」


「これから先輩としてよろしくお願いしますね、お兄ちゃん」


「よろしくね、お兄」


 こうして琴音と朱音はアイドル声優の卵として1歩踏み出すことになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る