第7話 1.1.6 義姉襲来
直奈ちゃんとの同棲から1ヶ月が経とうとしていた。直奈ちゃんは持ち前のコミュ力で2人の義妹琴音と朱音と打ち解け今ではすっかり姉妹のような仲になっていた。
直奈ちゃんと琴音、朱音は共通点としてキミキセなどのアニメ、マンガ、ラノベなどのオタクである点とVAOという共通のゲームをしている点が挙げられる。
VAOー正式名称はヴェルデルフィア・アドベンチャー・オンライン。VAOとは炎龍によって国を奪われた姫騎士サクヤ・フォン・リッテンフェルトが炎龍を討伐することで勇者として名を馳せ、何十回もの戦争で勝ち進んでいくというストーリーである。ちなみにサクヤは西の勇者であり、東の勇者は魔王を討伐したシグルド・フォン・ヴェルデルフィアである。シグルドは主人公サクヤの親友であり幼なじみである。シグルドは第1次オリーヴ戦争で戦死するという設定である。シグルドの戦死によって絶望するサクヤだが(闇堕ちする)周囲の助力により徐々に気力を取り戻していくというストーリーである。
VAOはタワーディフェンス、クエスト、アリーナ、アドベンチャー、クランバトルという5つのメインコンテンツから成り立っている。タワーディフェンスでは自分でダンジョンを作って攻めてくる敵を迎え撃つというコンテンツである。クエストでは7人編成できるリアルタイムバトルでありアニメーションの必殺技を楽しめる。アリーナでは対人戦を楽しめる。アドベンチャーではストーリーを楽しめる。クランバトルでは毎月1回クランメンバーと一緒に強敵に立ち向かうというコンテンツである。
ちなみに俺と琴音がランクカンスト勢で上級者、朱音が中級者、直奈ちゃんが初心者だった。必然的に俺たちが直奈ちゃんに教える形になった。俺と琴音が上級者なのになぜ朱音が中級者なのかというと朱音は飽き性で毎日同じルーティンをこなすということが出来なかったからである。
だからランクは200である。(俺と琴音は274)
また直奈ちゃんは料理が琴音と同じくらい上手で俺たちの胃袋をすっかり掴んでしまった。他にも勉強が俺と同じかそれ以上にでき、すっかり朱音の家庭教師となった。ちなみに朱音は勉強が大の苦手であり、頭を使うより身体を動かす方が好きである。テニス部に所属しており全国大会に出場するほどの腕前である。そんなこんなで直奈ちゃんと琴音、朱音はすっかり仲良くなった。
「家族会議です、お兄ちゃん」
1ヶ月ぶりに家族会議が開かれた。
「直奈さんの件ですが……半年」
「え?」
「半年猶予をみようと思います」
「マジか!? ありがとう!!」
「まー、琴音ちゃんがそう言うなら私は反対しないかな。私も直奈ちゃんのこと大好きだし」
「お兄ちゃんに課題です。この半年で直奈さんの家出の理由を聞き解決すること、これが課題です。やはり同棲というのは不健全ですからね」
「……分かった」
☆
4月下旬。ゴールデンウィーク。俺が直奈ちゃんと琴音、朱音とアニメを見ていたときだった。
ピンポン! ピンポン! ピンポーン!!
チャイムが鳴った。
「宅配かな……俺が出るよ」
「よろしくお願いします、お兄ちゃん」
そう言って俺が玄関に向かう。
「会いたかった……会いたかった!! 光介大好きー!!」
金髪碧眼の美少女が俺に抱きついてきた。
「ユリシア姉、久しぶり。……そろそろ離れて?」
彼女の名前はユリシア。俺の義姉である。彼女の両親は飛行機の墜落事故で死亡し、親戚のいなかったので彼女の両親と友達だったうちの両親が引き取ることにした。金髪碧眼な見た目をしていてアメリカ人とのハーフである。ボンキュッボンというグラマーな体型をしておりまるでグラビアアイドルのような見た目だった。ちなみに重度のブラコンである。俺たちはリビングに入る。
「あ、ユリシアちゃんだ。帰省したんだ」
「そうだよ、朱音。大学もゴールデンウィークで休みだからね」
ユリシア姉は東京にある東都大学に通っている。一人暮らしだ。
「お姉ちゃん、おかえりなさい」
「ただいま、琴音。……この女の子は誰?」
「直奈ちゃんだ。……俺の彼女」
「は?」
「だから俺の彼女」
「はああああ!?」
「桜木直奈です。よろしくお願いします」
「ああ、よろしく。……ってあんた凪咲ちゃんと付き合ってたんじゃないの!?」
「いや、凪咲とは別れた」
「え! え? ええええ!? 凪咲ちゃんも呼んで!! 詳しい話聞かせてもらうわよ」
凪咲も呼んで家族会議となった。
「で、なんでこんなことになってるのか話してもらうわよ」
「実は……」
ユリシア姉に隠し事は無理だったので正直に話した。俺は受験を理由に凪咲と別れたこと、幼稚園時代の初恋の相手直奈ちゃんと再会したこと、告白したらOKだったが条件として同棲しなければならなくなったこと、凪咲に2番目の彼女宣言をされたことを話した。
「あんた、馬鹿、馬鹿なの!? 凪咲ちゃんというかわいい彼女がいながら他の女の子に浮気するなんて」
「浮気じゃない。……凪咲とは別れたし」
「別れを切り出したとき泣きながらこう言ったのよね!?『……え……嘘。私、待ってるから……。受験が終わるのずっと待ってるから』って。これ受験終わったら絶対付き合う流れでしょ」
「それは……すまないと思ってる」
「あんたが凪咲ちゃん一筋で相思相愛だからこっちも身を引いたっていうのに。っていうか凪咲ちゃんも2番目の彼女でいいの?」
「よくはないです。でも2番目の彼女じゃないとコウ君との関係が続かないと思って……」
「凪咲ちゃん、よく考えて二股よ、二股。人として最低のクズ野郎よ」
「私はコウ君が少しでも私のこと見てくれるならいいかなって思ってます」
「光介、あんた、聞いた? こんな健気でかわいい彼女を悲しませるような真似したらお姉ちゃん許しませんからね」
「ああ、俺は直奈ちゃんと凪咲両方責任をもって幸せにするつもりだよ」
「……いや、二股とか絶対無理でしょ」
「俺は二股してもしなくても後悔するなら俺はする後悔を選ぶ!!」
「……決めた。私も光介のハーレム要員になる」
「ユ、ユリシア姉?」
「私も桜木さんや凪咲ちゃんと同じくらい……ううん、それ以上に光介のこと大好きだから。光介が二股する不届き者ならいっそのことハーレムを作ろう!!……あ、私は凪咲ちゃんの次でいいからね。あくまでハーレム要員だから」
「俺たち姉弟だぞ!?」
「義理だから問題ありませーん」
「いやいやいや……」
ハーレムとか俺はただただ困惑するしかなかった。
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