第5話 1.1.4 スカウト
タイムリープを自覚して数日後。俺は勉強の息抜きに散歩していた。東都大学医学部に受かるために平日4時間(授業を除く)、休日15時間の勉強をしていた。塾や予備校に行くことも考えたがお金がなかったので参考書で自学自習することにした。
参考書での勉強では弊害もあった。それは参考書マニアになったことである。本屋の参考書コーナーではワクワクして自分なりの参考書ルートを組んだり、使わないのに大量の参考書を買ったりという有様である。もちろん買った参考書は全部こなそうと頑張っているが供給が需要を上回っている状況である。
「お兄さん、カッコいいね……。一緒にお茶しない?」
まさかの逆ナンだった。ショートカットの快活そうな美少女だった。正直に言うとめっちゃタイプだった。いかんいかん、俺には直奈ちゃんがいるんだから……。
「あー、結構です」
「まあまあそう言わずに……まだ分からないかな私だよ、私、
「え! え? ええええ!? 京!?」
姫川京。俺の小学校時代の親友である。京は1年上の先輩である。当時はメガネをしていてロングの地味そうな少女だった。そんな俺たち2人は親友の誓いをした仲である。
夕方。公園のジャングルジム。
「俺たち今日から親友な!!」
「……親友!なんかカッケー!!」
こんな感じである。
京は中学生のときに名古屋に引っ越した。それからずっと連絡をとっていなかった。3年振りの再会だった。俺たちは積もる話もあるので喫茶店に入った。それから俺たちは小学生の時の思い出話、中学生の時の話、キミキセの話をした。京もキミキセのファンで成瀬唯推しである。
「……それで本題なんだけどモデルやってくれない」
「モデル?」
「うん。モデル。私はこういう者なんだ」
そう言って京は名刺を渡してくる。その名刺には星野プロダクション代表取締役社長姫川京と書いてあった。
「ええええ!? 社長!? 京が!?」
「うん。高校生社長として芸能プロダクションを経営してるんだ」
「……なんていうか、すげーな」
「えへへ、ありがとう。……君は輝いてる。モデルやってくれないかな?」
「いや、俺は勉強しないといけないから無理だ」
「報酬は月収10万円だよ」
「……ちょっと考えさせてくれ」
俺はシトラス症候群の研究のためにお金が必要だった。月収10万円。そこらへんでバイトするよりも多いではないか。このお金を貯めて投資で運用すればシトラス症候群の研究資金になるのではないか。ただモデルになると勉強時間が減るのがネックだな。
「ちなみに
「入ります」
即答だった。
だってあの七瀬カレンだぞ。七瀬カレンは今をときめく大人気声優でアイドル声優としても活躍している。キミキセでは俺の推しの小泉詩音ちゃんの声優である。その七瀬カレンと同じ事務所だぞ。入るしかないだろ。
「じゃ、これからよろしくね、光介」
こうして俺はモデルとして一歩を踏み出すのであった。
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