第3話 1.1.2 元カノ兼幼なじみ

 翌日。


 日曜日の今日、俺は外出していた。


 今日、俺は直奈ちゃんと映画館デートをするのである。


 待ち合わせの10分前、俺は駅前にいた。


 同棲してるのなら一緒に家を出ればいいという意見もあるだろうがそれだとデートの雰囲気が出ないので待ち合わせにした。


 10分後、直奈ちゃんがやってきた。


 今日もかわいい。


 俺の彼女かわいいだろうと街に歩く一人一人に自慢したくなるくらいかわいい。


「おはよう、光介君。待った?」


「いや、今来たところだよ」


 今日の彼女はおとなしめのコーデをしている。


「その服、よく似合ってるよ」


「ありがとね」


「だーれだ?」


 その時突然俺の目が誰かの手によって隠される。


 背中に当たっているこの幸せな感触は……。


「その声、凪咲なぎさか?」


「ピンポン! ピンポン! ピンポーン!!」


 彼女の名前は入江いりえ凪咲。


 俺の幼なじみで幼稚園時代から中学3年までクラスが一緒という腐れ縁である。


 また、中学時代付き合っていた彼女というのが凪咲である。


 彼女はツインテールというのだろうか(あまり女子の髪型に詳しくないので分からない)地雷系の髪型をしており、地雷系のファッションをしている。ザ・オタサーの姫といった感じである。


 ただ容姿が悪いのかというとそうではなく直奈ちゃんと比べても劣らないくらいの美少女である。


 子犬のように元気で喜怒哀楽の感情表現が激しい美少女である。


「あなたのかわいい彼女、凪咲ちゃんだよっ」


「は? 彼女?」


「だって受験に集中したいと言って別れて受験終わったらまた付き合おうって約束したじゃん」


「いやいやいや、そんな約束してねーから」


 いきなり来て何言うんだ!?


 こいつは。


 直奈ちゃんがいるのに。


 直奈ちゃんの方見てられないじゃないか。


「っていうかその女誰?」


 凪咲がトーンを下げて聞いてくる。


「桜木直奈ちゃんだよ。幼稚園時代同じクラスだったろ」


「ああ、桜木さんか。久しぶり」


「久しぶり。入江さん」


「何で二人で会ってるの?」


「俺の彼女だから」


「は?」


「だから俺の彼女だから」


「はあああ!?」


 凪咲が大きな声を出す。


「ヒドイ。私という美少女な彼女がいながら他の女と二股してたなんて。ヒドイよ。うっうっ」


 凪咲が泣き出す。


「いやいやいや、俺たち付き合ってないだろ!?」


 周りのギャラリーが騒ぎ出す。


「おい、あの男、美少女二人連れてるぞ」


「あの男、女の子を泣かしたぞ」


「二股? サイテー」


 ボロクソに言われてる。


「だーっ! とりあえず凪咲泣きやめよ。ほら手繋いでやるから」


「ぐすっ……。えへへ、コウくんの手あったかーい」


 凪咲は昔からコウくんと呼び懐いてきていた。


「直奈ちゃん、ごめんね」


 初恋の彼女に平謝りする。


 彼女がいるのに他の女と手繋ぐなんてほんとどうかしてるぜ。


「あっ。私は全然気にしてないから大丈夫だよ」


 女神だ。


 女神がいる。


 この後、俺たち3人は映画館に向かった。


 キミキセの劇場版を観賞した。(俺は10回目)


 観賞後、俺たち3人は映画館横のカフェでお茶をすることになった。


「面白かったー」


「うん。感動したよね。……ちょっとお手洗いに行ってくるね」


 直奈ちゃんはそう言って席を立つ。


「なんで二人は付き合ってるの?」


「実は昨日……」


 俺は昨日起こったことを話した。


 俺はとある女の子に一目惚れしたこと、キミキセのファンだったこと、幼稚園時代の初恋の相手直奈ちゃんだったこと、告白したらOKだったこと、ただし条件として同棲することになったことを話した。


「ど、どどど同棲!? ……ふーん。初恋だったんだ。っていうか再会して1日で告白! やば!」


 そこで一息入れる。


「それで告白したんだ。ふーん。……もし桜木さんに告白してなくて今日私に告白されてたらどうしてた?」


「その時は……」


 分からない。


 その時は凪咲と付き合っていたかもしれない。


「好きです。付き合ってください」


「……ダメだ。俺には好きな人がいるんだ」


 でももう出会って再会してしまったんだ。


 初恋の彼女と。


 初恋は特別だ。


 これは本当に奇跡なんだ。


 本当にすまないし申し訳ないと思ってるんだ。


「いいよ。今は2番目の彼女で」


 そう言って凪咲は俺をビシッと指さす。


「でも最後は1番目の彼女になるから。幼なじみが負けヒロインだなんて私は認めない。覚悟してなさい」


 そう言って凪咲は店から出て帰った。




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