第38話 変わってしまった親友
いやー、なんかやる気がみなぎって来たな!
俺はそもそも、ああ言う娘を助けたくてヒーローになりたかったんだしな!
「よし、ロゼッタ!これからすぐ作戦会議だな!」
「そうですー!やってやるですよ!ってあれ?サボリ先輩はどこですかクロード?」
「はぁ!お前まさか置いて来たんじゃないだろうな!サボリさんは目が見えないんだぞ!」
「はわわわ!た、大変ですー!そもそもクロードが勢いよく飛び出すから悪いんですー!私はそれに釣られて…!」
「このバカ!バカだバカだとは思っていたけど、よりにもよって自分を庇ってくれた先輩を置き去りにするなん……」
「お前等…どっちもどっちだ!この馬鹿野郎共が!」
サボリさん!よかった、生きてた!
「サボリ先輩〜!ごめんなさいですー!でもダメですよー!勝手にいなくなったら!」
『うふふ、ダメよ二人共、先輩を置いて行っては。これからは気をつけなさいね?』
「これはミッシェルさん!わざわざすいません!ロゼッタの分まで謝ります!」
「ミッシェル様!ごめんなさいですー!クロードのアンポンタンが迷惑かけたですー!」
「お前等いい加減にしろ!ワインバーグ子爵、迷惑を掛けたな…これで失礼する。行くぞロゼッタ!クロード!」
『うふふ、また来て頂戴ね』
俺とロゼッタも別れの挨拶をして、ミッシェルさんとは別れた。
それから俺達はこれからの事を話し合う為に、ウェクトルと待ち合わせている、ミルキーウェイに向かっていた。
「ったく、ロゼッタのせいで散々だぜ!サボリさん、そこ段差があるんで気を付けて下さいね。ロゼッタは信用なりませんから」
「うるさいですよクロード!さぁサボリ先輩、私の手を離してはいけませんよ!もうすぐミルキーウェイに着きますからね!」
クソー!ロゼッタの奴め!
「ハハハ!お前等はホントに仲が良いな!これから合流するもう一人も愉快な奴なのか?」
「いえいえ、ロゼッタと同じでタダのバカですよ。期待しないで下さいサボリさん。」
「そうです、クロードと同じでタダのアンポンタンですねー。サボリ先輩は私だけを信じて下さいね。」
「ククク、こりゃ楽しくなりそうだ。」
それからロゼッタと悪口を言い合いながら歩いていると、いつの間にかミルキーウェイに着いていた。
扉を開け中を見渡すが、まだウェクトルは来ていないみたいだ。
「サボリさん、まだウェクトルのやつ来ていないみたいなんで、適当に座り……」
「おーい!クロード!こっちだこっち!ここだよ!」
ウェクトルの声に反応し、また店内を見渡すが、やはり姿が見えない。
モヒカンに肩がギザギザのレザージャケットを着た男が手を振っているが、気のせいだろう。
「クロード…さっきから変な男の人が手を振ってますよー?知り合いですかー?」
「いやいやロゼッタ、俺があんな世紀末にいそうな雑魚に知り合いがいる訳ないだろ。寝言は寝て言え」
全く、俺も付き合う人くらい選ぶっての。
「おーい!クロード!ロゼッタ!無視すんなよー!俺だよウェクトルだよ!目合ってんだろー!こっち来いよー!」
いやいやいやいやいやいや!
お前最近有給使って休んでたけど、何があったらそうなるんだよ!
「ウェクトル…なのか?」
「バーカ!他に誰に見えんだよ!まぁ、座れよ。っお!そっちの人がサボリさんかい?ロゼッタ、紹介してくれよ!」
バカはお前だよ!お前以外の何かにしか見えないよ!
「サ、サボリ先輩…こちらの世紀末雑魚のモヒカンがウェクトルですー。いえ、ウェクトルだった何かですー。」
「いやいや、俺はウェクトルだよ!そりゃ多少見た目は変わったがな!どうだ?似合うだろ!」
多少ってレベルじゃないだろうが!
「ククククク、どうやら期待通りに愉快な野郎みたいだな。見えねぇのが残念に思ったのはこれが初めてだぜ。ウェクトル、俺がサボリだ、宜しくな。」
自己紹介が終わった俺達は、適当に飲み物を頼み、ウェクトルにミッシェルさんの家であった事を話した。
「………と言う訳だウェクトル。道はより困難になった訳だよ。」
「…なるほどな!こりゃあ余計に特級ポーションを作らなきゃならない理由が増えたな!やる気が出るってもんよ!」
「でもでも問題はー、誰が何処に行くかですよねー。それに行く時期も大事ですー!」
俺の滅子爵領行きがもう三週間を切ったからな…。
「俺とネルさんが魔道具のコンクールに出たら開発部門も暇になるから、ウェクトルも魔石の注文が無くて暇になるだろ?その時はどうだ?」
「ああ、確かにな!それにもし注文があってもいい様に、多めに集めとけばいいしな!マリアさんに相談してみるよ!最近帝都の近くに大型のダンジョンが発見されただろ?かくいう俺もそこで修行してたんだけどよ、これまた魔石の落ちがいいのよ!」
え?なにそれ初耳なんだけど。
「ああ、あの突如現れたかの様なダンジョンですねー!でもでも最近はダンジョンの出入りも厳しく管理されてるのに、よく許可がおりましたねーウェクトル。」
「
「いえいえ、俺じゃなくて会社の力ですよ!うちの会社の社長が結構顔が効くみたいで、すぐ許可がおりたんです!ラッキーでした」
へー、うちの社長もやるもんだな。
「いい会社なんだな…って話がそれちまったな。確かクロードが[滅子爵]の領地カースティに行くんだったな?残りは[審侯爵]領の断罪の丘とオプタム高原だが…[審侯爵]領の方は俺に任せてくれないか?」
「え?でも大丈夫なんですか?サボリさんはその…目が…。」
「そうですよー!それにこれは元々、私のせいなんですからー、サボリ先輩は家で待ってて下さいよー!」
「まぁ、待てよ二人共。サボリさんも男だ…きっと曲げられねぇ物があるんだろうぜ…。」
うるせぇ雑魚。
「ウェクトルの言う通りだ…と言いたいとこだが、実は[審侯爵]のジャッジメンター領は俺の故郷でな、顔も効くし伝手もある。下手にお前等が行くより良いと思っただけなんだ…。だから分かってくれロゼッタ。」
なるほど…それなら有りなのかな?
「でもでも、サボリ先輩は…頼んでもいないのに…勝手に庇って…怪我しちゃうお人好しですから……心配です…。」
声が震えてるぞロゼッタ…。あんまり無理するな。
「7つも8も下のお子様に言われちゃ俺も形無しよ!安心しろロゼッタ!俺は案外凄いやつかも知れないぜ?だからお前は友達を助けてやれ。ウェクトルも一人じゃきついだろ?」
「そうだぞロゼッタ…俺を助けろ。いくら修行したからって人はそんなに早く強くはなれないからな…。それにこっちを早く終わらせれば、サボリさんを手伝えるじゃないか!」
本当にタダの雑魚じゃないか…そこは手伝いなんか要らないって言う所だろ!
「情けない友達を持って私は残念ですー!」
「何をー!元々無償で手を貸しやってる親友に対して何だお前は!この口か!この口が悪いのか!」
「ウェクトルこそ、昔から迷惑ばっか掛けてたのによく言えるですー!この頭ですか!この頭が空っぽだからですかー!」
やめろやめろ馬鹿二人、店員さんがこっち見てるぞ。
「ハハハハハ!本当に楽しい奴等だぜ!だけどよ、そんなに気負う必要はねぇよ、元々は他人事なんだからよ。それに目が治んなかったら田舎にでも引っ越すつもりなんだ、魔力さえ使えりゃ、目が見えなくても何とかなるからな。」
「それでしたら、田舎に行く必要は無くなるかもしれませんよ?…実はこれは内緒なんですが、うちの会社ではこんな物を作ってまして…。」
俺は試作品のリングをサボリさんの腕に嵌める。
「……クロード…こんな危険な物を何故待ち歩いてやがる!?お前にはこの危険性が分からないのか!」
シー!サボリさん!声抑えて!危険性は俺が一番分かってるわい!
「サボリさん落ち着いて下さい、それは試作品です。大きな魔法は使えない様になっています。今日はサボリさんに会うと思って、許可を貰って持って来ただけなんですよ。」
「サボリ先輩もクロードも…そのリングは何なんです?」
「ロゼッタ…よく聞け、これは帝都の中でも魔法が使える様になるリングだ…。今も俺の魔力感知でお前等の体型や物の位置が手に取る様に分かる。」
「えー!クロード!そんな物作ってるなんて聞いてないですー!内緒なんてずるいですー!」
「おいおいクロード、こんな大事な事、俺達にバラしてよかったのか?まぁ、喋ったりしねぇけどよ。」
いや、ロゼッタにバラしたのは失敗だったな。こいつはうっかりバラしそうだ。
「いいんだよ、お前等ならな。それに三週間後には世界にバラす事になるからな!それが早まっただけだ。」
「クロード…お前、これをコンクールに出すつもりだな?世界が変わるぞ…お前にはその覚悟があるのか?」
それはもう何千回と自問自答したよサボリさん。
「はい、俺はもう迷いません。これは帝国の皆を幸せにしてくれると…そう信じます。それにまずは医療機関や警魔隊に優先して置かれる様に手は打ってあります。」
「なら俺が言う事はもう無い!それにしてもまた話しがそれちまったな!まとめるとクロードは[滅子爵]領の月光草、ウェクトルとロゼッタはオプタム高原にユニコーンの角、そして俺が[審侯爵]領にマンドラゴラを取りに行く!出発はクロードに合わせた三週間後でどうだ!?」
「それでいいでーす!そうと決まったら乾杯ですよ!乾杯!」
「そう言えば喋ってばっかでまだしてなかったな!ほらクロード、お前が言えよ!」
何で俺が…まぁいいか!
「それでは…成功を信じて!乾杯!」
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