第35話 危険な発明

 

 「ただいまー」


 あー飲んだ飲んだ。

 

 あの後、いつもより少し多めに酒をのんだ俺は家に帰ってきていた。


 本来なら夜のパトロールに出るとこだが、魔道具のコンクールの為にオホッピーさんに話をしなければいけなかった。


 「おう、お帰りクロード。遅かったな。またすぐ出るのか?」


 「いや、今日はオホッピーさんに知恵を借りたくてね。今度魔道具のコンテストに出るんだけど何かいい案はないかい?」


 「あん?魔道具だぁ?…あるぜとっておきのがな!」


 思った通りだ、流石はオホッピーさんだぜ。


 「早速教えて貰ってもいいかい?急ぎなんだよ。あと、複数あれば、なお良しですオホッピーさん。」


 「けっ、泡食うんじゃねえよ!まずはこれだ!どんな洗濯物も絶対にとんでかねぇ伝説の洗濯バサミだ!」


 次!


 「お、おう、随分反応が悪いじゃねぇか!お次はこれだ!魔力によって耳がピコピコする猫ミミだ!」


 こ、これは有りより無し!次!


 「な、なに!?これは自信作だったんだぞ!ならこれだ!アンチマテリアルフィールド内でも魔法が使えるようになるリングだ!」


 お前はまたなんて危険な物を……


「オホッピーさん、それはダメだろ。何のためにアンチマテリアルフィールドがあると思ってるんだよ。」


 「まあ聞けよクロード…どんな物も使い方しだいよ。これがあれば医療機関や警魔隊もだいぶ楽になるぜ?」


 「確かにそうだけど…緊急時には部分解除装置があるじゃないか。まぁ大型だし、発動まで時間はかかる上に魔石の消費が激しいけど」


 「分かってるじゃねぇか、部分解除装置の欠点をよ。それが手に収まるサイズに、それに魔石のコストも下がるとくりゃぁ、作らない手はないぜ」


 俺も魔法絶対主義者マギアイストなんてものがいなければ、二つ返事で作るだろうな。


 「でも、もしこれが敵の手に渡って誰かが犠牲にでもなろうものなら…俺は耐えられないかもしれない」


 「かぁー!お前は考えすぎなんだよ!包丁で誰かが傷つられたとして、包丁を作ったやつが悪い!なんて誰かが言うか?いたとしたらそいつはただの馬鹿だろ?剣や槍だってそうだ!」



 「オホッピーさん、言いたいことは分かるよ…だけどそうじゃないんだよ、俺の良心の問題なんだ」

  

 「そこまで言われちゃあ、俺も無理強いはしねぇよ。だけどあと残ってるのは魔力で動く猫の尻尾ぐらいしかないぜ。それか魔道型映像配信機器だな。お前が前にいた世界のテレビだか何だかに似てる魔道具だな」



 最後にええのあるやん。


 でも電波とかどうすんの?アンチマテリアルフィールド内だから魔力も通らなくない?



 「まぁ、そう思うやろな。だがな帝都には馬鹿でかい女神像があるやろ?それに雷の魔石を加工してだな、俺特製の回路を使えばちゃんと受信出来るようになるんや!まぁ帝都内だけだけどな!」


 よし採用。


 「それいいじゃない!最初から言ってよオホッピーさん!早く設計図書いて下さい!」


 「あ?お前はんまさかタダで教えてもろおうと思てへんやろな?え?どないやねん?」


 流石にそんな甘い話はないか……。


 「なにをお望みですか?オホッピーさん。俺の給料じゃそんなに高いものは……。」


 「せやなー?ピッカピカに磨いてもらわな割にあわんでホンマ!え!?やれるんか!?」


 安いやつやなこのヤカン。


 「わ、分かったよ…なんとか頑張るよ」



 この後めちゃくちゃ綺麗に磨き、なんとか設計図を書いて貰った。


 次の日、夜のパトロールが少し長引き、少々寝不足だった俺はギリギリに起きてしまった。


 「ヤバい遅刻だ!行って来ますオホッピーさん!」


 「クロード!設計図忘れてるで!何してんねん!」


 「あ、ありがとうオホッピーさん!それじゃあ行って来ますー!」


 俺は急いでるあまり設計図が2枚もある事に気が付かなかった。




 「悪いなクロード……。この国は平和ボケしすぎやねん。そんなんじゃ乗り切れんで。」

 



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