第33話 出揃う情報

 

 次の日、俺はいつもより早く出社した。


 マリアさんに話を聞くためだ。


 マリアさんはいつも誰よりも早く出社しているので、多分いるだろう。


 居なくても待ってればいいよね。


 「おはよーございまーす。って誰もいな…」


 「おはようございます、クロードさん。家の時計でも狂ってたんですか?そうではないなら早く病院に行った方がいいでしょう。」


 この人は俺をなんだと思ってるんだろう?


 「違いますよ!今日は少しマリアさんにお話しがありましてね、ちょっとお時間頂いてもよろしいでしょうか?」


 「お話しですか? ……ついに働く事も嫌になったのですね……。それでこの会社をやめたいと……」


 「だから!違いますって!今日は三番街のミッシェルさんの執事のレイモンドさんとの関係を聞きたいんですよ!それともし可能ならミッシェルさんに話があるので渡りを付けてもらえないかなと思いまして。」


 「なぜ貴方がそんな事に興味を持つんですか?それにミッシェル様に話とは?」


 「実は……」

 

 俺は今回の事について事細かく説明した。


 マリアさんには真剣に向き合った方が力を貸してくれそうな気がしたからだ。


 

 「……そういう事情がおありでしたか。いいでしょう、私からミッシェル様には話をつけておきます。それとレイモンドとの関係は貴方に話すような事ではありません。」

 

 まぁレイモンドさんの事は今回の件には関係ないしな、ミッシェルさんに話しをつけて貰えるだけ良しとしよう。


 「‥‥わかりました!ありがとうございます!流石は一番街の[女帝]マリアですね!助かりました!」


 「…私をそう呼ぶのはやめなさい。誰が言ったか知りませんが困ってるんですからね。

 さぁクロードさん、そろそろ始業時間ですよ。開発室に行きなさい。」


 

 俺はマリアさんに礼を言い、今日一日真面目に仕事に勤しんだ。


 「ふう、やっと15時か。コーヒー休憩の時間だな、ってウェクトルじゃん、何しに来たんだ?」


 後ろを振り向くとコーヒーを2つ持ったウェクトルが開発室に入ってきた。


 「コーヒー淹れてきたぜクロード、それにネルさんも。」


 「ん、ありがとうウェクトル君。」

 

 「サンキュー。ってかウェクトルが開発室に来るなんて初めてじゃないか?一体どうしたん

だ?」


 「いや、仕事が早く終わったからよ。丁度15時休憩の時間だったから昨日のほら…あれだよあれ。」


 ウェクトルはネルさんをチラチラ見ながら俺に解れと目線を送ってくる。


 「なんだい?仲間はずれかい?お姉さん寂しいな。」


 「いえ、違くて!おいクロード!どうにかしてくれ。」


 「いやいや、お前からこっち来たんだろが!まぁネルさんにも協力して貰おうぜ、この際だしな!」


 「お前がいいなら別にいいけどよぉ、なら説明は任せたぜ!」


 「お前というやつは…。ネルさん、実はカクカクシカジカマルマルウマウマなんですよ。」



 「ふむふむ、月光草にマンドラゴラそれにユニコーンの角と特級ポーションね…なかなか面白い事してるじゃないか。」


 「どうですか?どれか聞いた事あります?」


 「残念ながらないね。でも昔の同級生に植物に詳しい子がいてね、マンドラゴラについて話していたような気がするが、なにせ昔の事だからね、うろ覚えだよ。」


 「どんな事でもいいですよ?」


 「そうかい?しかし本当に断片的にしか覚えていないからなぁ。たしか、無実の罪人が処刑された時の血か体液によって生まれただの、墓地の近くに生えやすいだの、抜く時の叫び声を聞くと狂うとか言ってた気がするよ。」


 「もしかしてその同級生の名前ってリリィって言いませんか?」


 「ん?そうだよウェクトル君。知り合いかい?」


 「はい、大学の時に世話になった先生が同じ話をしてたもので!俺も昨日話を聞きにいってたんですよ!」


 「そうか、彼女は先生になってたんだね。卒業してからは会ってなかったから…懐かしいよ。」


 「リリィって、リリィ助教授のことか!って事はネルさんの歳って…」


 「私の歳かい?今年で30になるね。私は自分に無頓着だからね、そういう事は気にしないんだよ。それに知り合いが、女は40を超えてから本当に楽しくなるものだと言っていたからね、10年後が楽しみだよ。」


 「…なんかネルさんってカッコいいですね。……って今はマンドラゴラの話でしたね、ウェクトル、他にはなんて言ってたんだ?」


 「……あ、ああ。他にはな、[審侯爵]のジャッジメンター領の外れにな、[処刑台の丘]って呼ばれてる所があるらしいんだよ!なんでも何百年も昔に罪人を処刑してた場所らしいんだがな、今じゃ誰も近寄らない心霊スポットらしいぜ。」


 「なるほど、さっきの情報と合わせたらマンドラゴラが生えてる可能性は……限り無く高いな。まっ、情報が正しければの話だけどな。」


 「でも、当てもなく探すより100倍ましじゃないか、お姉さんも応援しちゃうぞ。」


 「で、ですよね!流石はネルネルさんだなぁ!」


 ウェクトル…お前ネルさんに惚れたな。


 「…そうですね、間違ってても振り出しに戻るだけですもんね、マイナスにはならない。なら行動しない事には始まらないか。とりあえずこれで全ての素材の情報が揃ったぞ。」


 「なに!?もうそんなに進んでたのか!?

一体いつの間に?」


 「まっ、詳しい事は今日の夜にでもな。ほらそろそろ休憩も終わりだ、帰った帰った。」


 「な、なんだよ!まだいいだろ!ケチ野郎め!…あっネルネルさん、また来ます。」


 

 2度と来るな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る