第32話 依頼完了とアクシデント


 

 「依頼だぁ?ついにボケちまったのか?杖なんか持ちやがって、爺いになるにはまだ早いぜ。」


 「違ぇよ!仕事で目をやっちまったんだよ!見りゃ解んだろ!」


 「てっきり眠てえのかなと思ってよ。まぁ生きてりゃ目を失う事もありゃな。っで?依頼ってのはなんだ?まさか目を採って来いなんて言うつもりじゃねぇだろうな!?」


 「言わねぇよ!オプタム高原かユニコーンの角の情報を集めて欲しかったんだよ!」


 「オプタム高原だぁ?あんな危険な場所に行く酔狂な奴はいねぇよ。それにユニコーンの角だと?そんな幻の一品……いやちょっと待て。」


 そう言うと髭面の熊バートさん、いや違うギルバートさんはどこかへ行ってしまった。



 「やっぱりーダメですかねぇー?そんな簡単には行かないですよねー。」


 「まぁそんな簡単に行ったら苦労しねぇさ、やるだけやってダメなら諦めるだけよ。」


 「ダメですー!絶対に治しますー!」


 「こ、声がデケェよロゼッタ!お、ギルバートが戻ってきたぞ。」


 目を向けると、何やら紙の束を持っている熊バートさんが歩いてきた。


 「待たせたな。これは数年前に開催されたある競売の出品リストと買取人リストなんだがな、ここを見てみな。」


 そこには出品リストにユニコーンの角、そして買取人リストにミッシェル・ワインバーグと記されていた。


 ミッシェル・ワインバーグ?はて、どこかで聞いたような聞いた事ないような。


 「サボリ先輩!これは重大な証拠ですよ!やりましたね!どうやらこのミッシェルさんて方がユニコーンの角を買ったみたいですよ!」


 「お、落ち着け!喋り方が普通になってるぞロゼッタ。ギルバート…そのミッシェルって人は知り合いか?」


 「直接は知らねぇが、なんでも貴族様だとよ。どこにいるかは分らねぇがな。」


 …貴族?…ミッシェル?


 「ああー!!このミッシェルって人、俺の会社のお得意様ですよ!もしかしたら話を聞けるかも知れません!サボリさん!」


「本当ですかクロード!偶にはやりますね!褒めてあげます!」


 「助かるぜクロード。ギルバートもありがとうな。ところで一応オプタム高原の調査も念の為依頼したいんだが、誰かできそうな奴はいるか?」


 「いる訳ねぇだろ。まともな奴なら違う仕事してるか、違う国に行ってるわ!他の国ならまだ冒険者の仕事が結構あるみたいだからよ。」


 「…そうか、まぁいい。それで今回の料金なんだが、いくらくらいだ?」


 「ふっ。お前は友達だからな、おおまけにまけて金貨10枚でいい。一括な!」


 「高すぎですよー!私の給料の3ヶ月分ですー!」


 「ギルバート、言ってなかったが俺達…実は警魔隊でな、それでさっき見た競売のリストってまさか闇の……」


 「金貨2枚でいい!ちくしょう嵌めやがったな!」


 「ギルバート…持つべき者は友達だな!じゃぁまた来る」


 「2度と来るな!帰れ!」


 熊バートさんは怒って執務室に入ってしまった。


 「俺達も帰りましょう、サボリさん。」


 俺達が出口に向かって歩いてると急にサボリさんが転んだ。

 

 「なにするんですか!目の見えない人に!最低です!」


 『はぁ?知らねぇよ!勝手に転んだんだろ!』


 「何言ってるんですか!足かけるとこ見たんですよ!」


 『証拠はあるんですかー?何時何分メメント・モリ何周ですかー?』


 「私は警魔隊です!現行犯で逮捕しますよ!」


 『……なんだ帝国の犬かよ。申し訳ございませんでしたー。ワンワン』

 

 なんて煽りが上手い連中なんだ…いっそ惚れ惚れするね。


 「馬鹿にして!こうなったら本当に逮捕…」


 「やめろロゼッタ!行くぞ、ドブネズミに構ってる時間は無い。」


 『誰がドブネズミだオッサン!死ねや!』


 「あぶな…きゃぁ!」


 「クソ!テメェらロゼッタに何した!?」



 おいおい、コイツら普通に女の子殴りやがったよ。

 

 俺はこの力を人助け以外使わないと決めているが、友達に手を出されて黙ってられるほど大人じゃない。


 「おい…お前ら!俺が相手だ!」


 『なんだテメェ!すっこんでろ!』

 

 「ダメです!クロードには無理ですー!逃げて下さいー!」


 俺はロゼッタの前で戦った事が無いから心配されるのはしょうがない。

 

 相手は3人か余裕だな。


 『やっちまえ!お前ら!』


 俺は避ける。相手の攻撃を避ける全て避ける。

 もうそれはすごい避ける、よそ見しながら避ける。偶にロゼッタと会話しながら避ける。


 3分はそうして避けていたら、攻撃していた3人は地面に這いつくばっていた。


 『ゼェゼェ…ウッ、ウップ。あたら…ハァハァねぇ…ハァハァ……。』


 『ヒューヒュー……こ、こいつ…ハァハァふざけ……ゼェゼェやがって……オエー。』


 「ふん。普段から運動しないからだ。これに懲りたら少しは自分の生活を見直すんだな!行くぞロゼッタ、サボリさん!」


 『ま、まち…ハァハァ…やが……ヒューヒュー…れ……オロオロオロ』





 俺達は冒険者ギルドを後にし帰路についていた。

 

 「今日は最後あんな感じでしたけど、結構良い情報が集まりましたね!サボリさん!」


 「本当ですー!でもでもクロードがあんなに避けるのが上手いなんて知らなかったですー!スカッとしたですよ!」


 「それは俺も見たかったな。目が治ったら見せてくれな!」


 「はは、機会がありましたらね。とりあえず俺からミッシェルさんにアポ取ってみるんで、行けそうだったら連絡しますね!」


 「ああ、頼むぜクロード。ロゼッタに言ってくれれば、俺に伝わるからよ!」


 「お願いしますよークロード!ではさよならですー!」


 「じゃあなクロード!またな!」


 解散した後俺もすぐに家に帰った。

 

 そういえばミッシェルさんの所の執事のレイモンドさんとマリアさんが知り合いみたいな事言ってたな。


 明日マリアさんに聞いてみるか。

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