第27話 ロゼッタの苦悩


  毎度お馴染みの酒場ミルキーウェイの扉を開け室内を見渡すと、右奥の丸テーブルに飯を食いながらチビチビやってるウェクトルと、既に出来上がってるロゼッタがいた。


 「わり!遅れた。」


 「遅えよ!こいつの相手をするのがどんなに大変だったか!なにしてやがった!」


 「ちょっと困っているお婆さんを助けててな……ってかどうしたんだロゼッタ?随分荒れてるじゃないか。」


 「サラッと嘘つくんじゃねぇ!こいつは俺が誘う前からここで飲んでたんだよ!めんどくさいったらありゃしねぇ!」


 ちなみにお婆さんを助けてたのは本当だ。

 信じてもらえそうにないから言わないが。


 「うぃ〜クロード〜来ましたね〜駆けつけ3杯ですよ〜。うぃ〜。」


 「ロゼッタ、水飲め水。少しは楽になるぞ。」

 

 ここまで荒れてるロゼッタも珍しい。

 これが社会人になると言う事なのか?


 「わらひは大丈夫でふよ〜。ほら〜ウェクトルも〜イッキれふ〜。ウッウップ!」


 「馬鹿野郎!ここで吐くんじゃねえ!バケツ!いやトイレ行けトイレ!」


 ロゼッタが凄い勢いでトイレに駆けて行った。


 「おい、ウェクトル。なにがあったか聞いたのか?あんなロゼッタ見たことないぞ?」


 「いや、俺も聞いたんだけどよ。既にベロンベロンでな、所々しか分からなかったよ。なんでも任務がーとか先輩がー。とかな。」


 「うん。全くわからんな。とりあえず飲むか。お姉さーん生1つねー!」


 元気のいい返事と共にすぐにビールが運ばれてくる。


 「とりあえず乾杯……でいいのか?」


 「やめとこうぜ。あんな姿見たらとても乾杯なんかできねぇよ。」


 「だな。じゃぁお疲れ様ってことで。ーーーふー!やっぱ最初の一杯は格別だな!それにしてもロゼッタに何があったと思う?」


 「さぁな。でもあいつ警魔隊だろ?この前の新聞の記事と関係があるんじゃないかと俺は睨んでるぜ。」


 「ああ、魔法絶対主義者の幹部だかなんだかを捕まえたってやつか?ってかお前、魔法絶対主義者って知ってた?お、俺はと、当然知ってたけどよ。」


 「あ?うんなの学校出た奴なら知ってんだろ?教科書にも書いてるし。」

 

 「ま、マジ?いやいや!そうだよな!常識だよ常識。とにかくその新聞の事件が原因だよ!間違いないね!」


 「ああ、俺もそう思うぜ。ってかよロゼッタやつ遅くねえか?まさかトイレと友達になってんじゃねぇだろうな!ちょっと店員さんに見て来てもらおうぜ。」


 店員さんに頼むと案の定ロゼッタはトイレとマブダチになっていた。


 これ以上は迷惑になると思った俺たちは、俺の家で飲み直すことにした。


 「クロードの家に行くのは初めてだな?借家だろ?広いのか?」


 「普通の一軒家だよ。お前ら2人くらいなら余裕さ。それよりロゼッタは大丈夫か?」


 ロゼッタはウェクトルが背負っていた。


 「ああ、ずっと背中でぶつぶつ言ってるよ。」


 確かに耳を澄ますとロゼッタの声が微かに聞こえてくる。

 

 「先輩ごめんなさい先輩ごめんなさい先輩ごめんなさい………」


 「………………。」



 しばらく歩き、いつもの路地を曲がると見慣れた青い屋根の家が見えてきた。


 「着いたよ。ここが俺の家だ、まぁ上がってくれ。」


 「へぇ〜なかなか綺麗ないい家じゃないか。お邪魔しますっと。」


 俺たちがリビングに入ると一つの影が近づいて来た。


 「やいクロード!飯食いに行くんじゃなかったのか?随分早いじゃねぇか!」


 「………おいクロード。俺も酒が回って来たみたいだ。ヤカンが浮いて喋ってやがる。」


 

 「大丈夫。お前は正常だ。オホッピーさん、友達を連れて来たよ。なんか適当にお酒と飲み過ぎに効きそうな飲み物を出してくれるかい?」


 「っち。しょうがねぇな。座って待ってな。」


 「おいおいおいおい!ダメだろヤカンが喋っちゃー!おいクロード!どうなってんだ!」


 「近所迷惑だ静かにしろウェクトル。ちゃんと説明するから。まずは座れよ。」


 「絶対だぞ!おい!待てって!おいクロード!」

 

 ったく。喋るヤカンがいたっていいだろ。

 

 いいよね?

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