第26話 平和な日常

 

 

 俺ももうこの会社に入って半年か。

 今じゃもう立派な社会の歯車の一員だな。

 

 あっ、そろそろ定時だ。帰ろ。


  

  「お疲れ様でーす。マリアさんお先に失礼しまーす。」


 「これはこれは、友達が大変かもしれないって時に人一倍早く帰ったクロードさんじゃないですか。お疲れ様です。」


 「ぐふっ!そんな一カ月も前の話を振り返さないで下さいよ!謝ったじゃないですか!」


 「いえいえ私は気にしていませんよ?いやーあの時は大変でした。病院からウェクトルさんを保護したと連絡は来るし、柄の悪い冒険者にキャンセル料は取られるし。ええ本当に全くこれっポッチも気にしていませんので。」


 「マリアさんマリアさん、怒る相手が違いますよ!全ての原因はウェクトルです!こう言う時こそガツンと言ってやりましょう!そうだ!そのキャンセル料もあいつの給料から引けばいいんですよ!ふははははは!」


 「…………友達を売るなんて最低ですね。見損ないました。」


 「もももももももちろん冗談ですよ!?やだなマリアさんたらそんな恐い顔してー、このこのー。」


 「……ウェクトルさん後は好きにしていいですよ。」


 「やだなぁマリアさん。もうボケたんですか?俺はウェクトルじゃなくてクロ……や、やぁウェクトル君。帰ってきてたんだね。じゃあ僕はこれで。」



 「待てやクロード。誰が全ての元凶だぁ?キャンセル料を給料から引くだぁ?言ってくれるじゃねぇか!」


 「ち、違う!言わされたんだ!あそこにいる悪魔に誘導されただけなんだ!」


 流石1番街の[女帝]マリアだぜ。

 油断も隙もねぇ。 


 「って言ってますよマリアさん?っあマリアさん、依頼の魔石取ってきましたよ。確認お願いします。」


 「はい。ウェクトルさんもグレースもお疲れ様です。」


 「っあ!グレースさん!帰ってきてたんですね!」


 この金髪でメガネでポニーテールの長身の女性は先輩のグレースさんだ。

 

 1人でBランクの魔物を相手取れる一流のハンターでもある。


 「ふふふ。君たちのやり取りは本当に面白いね。ああクロード君、今帰って来たばかりさ。近くでばったりウェクトル君と会ってね、一緒に来たという訳さ。」


 「うちの会社、結構出張多いですもんねー。また賑やかになりそうで嬉しいです。」


 「ふふ、僕も可愛い新入り達を見れて嬉しいよ。ではまたね。」


 「はい、お疲れ様です!」


 「っあ!グレース先輩!このあと食事……行っちまったか。」


 「…なに?ウェクトル。グレース先輩のこと好きなの?」


 「………お前には関係ねぇ。それより飯だ、飯!飯行くぞクロード!」


 「…はぁ。お前昔からメガネフェチだもんな。

お前の振られた話を肴に酒でも飲むか。」


 「まだ振られてねぇ!そうだロゼッタも誘おうぜ!そろそろ俺たちも社会人になって半年だ!集まってもいい頃合いだろ?」


 「お前とは毎日顔合わせてるだろが…。まぁ俺もロゼッタは気になるし……いいか。じゃあお前はロゼッタ誘って先に店に行っててくれ。俺は一回家に寄ってから行くから。」


 「分かったぜ。早く来いよ!店はいつもの酒場ミルキーウェイでなー!」


 「わかってるよ!じゃあまた後で。」


 ロゼッタに会うのも久しぶりだ。

 学生の時はよくこうして集まってご飯行ってたな。


 考えながら走っていると誰かにぶつかってしまった。


 「うおっと!あっ、ごめんなさい!」


 「こちらこそすまなかったでござる。」


 そう言うとぶつかった人はそのまま行ってしまった。


 危ない危ない。

 考え事しながら走るのはやめましょうってね。

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