第25話 炎の逮捕劇 <終>


 「ーーーー っとまあこんな感じの事があった訳だ。」


 「ちょちょちょっと待って下さいっすよ!肝心の黒い魔物はどうなったんすか!?」


 「まぁ落ち着きたまえよ。えーーサラなんだったかな?すまないどうも物覚えが悪くてね。」


 「サラリス・ココノブレッドっす!サリーと呼んで下さいっす!」


 「そうだそうだ。えーサリー君。ここからは機密事項なんだが……、まぁいいだろう。変な風に記事を書かれても困るからね。そう、回復を終えた我々はダンジョンのーーーー」





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「ゼニガタのとっつぁん、ミランダ。現実問題追っかけてどうすんだ?恥ずかしながらここにいる全員でも勝てる気がしないぜ。」


 「それは…まぁそうだが。あそこに一生いる訳にもいくまい。帝都にはウォルター警魔長もいる。あと噂に聞いただけだが特別国防隊なるものも帝都にはいるらしい。」


 「そうだ!ウォルターの名前を聞いて思い出したぜ!俺は生き残ったらあいつを殴り飛ばしてやると決めてたんだ!」


 「アロン…気持ちはわかるわ。けどね、あんなイレギュラーな存在がいるなんて誰にもわかる訳ないじゃない。」


 「だけどよ‥ミランダ。俺は悔しくてしょうがねぇんだ……。本当は分かってんだ。ウォルターは悪くねぇってな。本当に悪かったのはあいつらを守れなかった俺だってわかってんだよ!」


 「アロン、俺も警魔隊に入って20年だ。むかつく同期も、仲の良かった先輩も、生意気な後輩も。沢山の名前が共同墓地に刻まれてるよ。だから怒りを抑えろと言う訳じゃない。だが、いつだって自分を許せるのは自分しかいないんだ。だから…強くなれアロン!」


「……とっつぁん、ミランダ。わかったよ。今はあいつらの仇を討つ事だけに集中するよ。悩むのはそれからだ!」


 それから俺達は会話もなく出口まで走り続けた。

 怪我人や拘束したマギアイストもいるため、そこまで速さは出せなかったが、なんとかダンジョンから脱出することができた。


 「クソ!連絡係りの本部の隊員2名が殺られてる!アロン!ミランダ!すぐに機甲車両に乗って帝都に向かうぞ!」


 「ええ、まだ近くにいるかもしれないわ。気を付けて進みましょう。」


 ここから帝都まで20kmくらいか?

 とばせば10分くらいだな。

 奴がまっすぐ帝都に向かっているなら見つかるかもしれないが。


 途中どこかの森にでも入られたら…。

もう安心して眠れる日は来ないかもしれないな。


 「えー、こちらアロン。とっつぁん応答してくれ。どうぞ」


 「こちらゼフだ!どうしたアロン!?どうぞ。」


 「あー、例の黒い魔物が誰かと戦ってる。どうする?車を止めるか?どうぞ」


 「もちろんだ!車を止めろ!降りるぞ!終わり」

 

 だ、誰だ!?誰が戦ってるんだ?

 すぐに助けに入らなければ!

 

 「あ、あれは!黒仮面卿!?」


 「嗚呼!黒仮面の君!来てくれたのですね!今お側に!」


 「ま、待てユリウス!ロゼ!サボリを頼んだぞ!」


 いくら黒仮面卿でもあの黒い魔物は危険過ぎる。

 このおっさんの力が少しでも役に立てば……




「おい、ゼニガタのとっつぁん。こいつは夢か?」


 「まさか…。彼の力がここまでとはね…。」


 勝負は一瞬だった。

 

 黒い魔物が黒仮面卿に飛び掛かる。

 それを限りなく最小限の動きでかわし、カウンターの蹴りを黒い魔物の腹に喰らわした。


 そして天高く上がった黒い魔物の所までジャンプで追い付き、渾身のパンチで黒い魔物を肉片一つ残らずこの世から消してしまった。


 黒仮面卿はこちらを一目みるとバツの悪そうに帰って行ってしまった。


 「嗚呼!お待ちを!黒仮面の君!私はユリウス・J・カエサルムです!私をお側に!」


 ユリウスは黒仮面卿の姿が見えなくなるまで叫んでいた。


 「アロン、ミランダ。奴の身体が少しでも残ってたら再生するかもしれん。一応見て回るぞ。」


 「ええ、そうね。でも多分大丈夫よ。あなたも見たでしょ?あの光景を」


 「……とっつぁん。俺…あれくらい強くなるよ。いやなってみせる。」


 それからは余り語る事なく順調に進んでいった。

 黒い魔物の身体は一欠片も見あたらず、そのまま俺達は帝都の本部まで帰って行った。


 ーーーーーーーーーー



 「-----------以上がおおまかな報告になります!ウォルター警魔長!詳細は後日書類で提出します!」



 「……まずは皆さんお疲れ様です。そしてアロン。本当にすまなかった…謝ってすむ事ではないけど私にはこれしかできない。」


 

 「………次はねぇぞ。」

 そのままアロンは部屋を出て行った。


 「……皆も疲れてるだろう、今日のところは解散だ。ゆっくり休んでくれ。」


 「失礼します…警魔長もあまり思い詰めずに。」

 

 そして俺たちは全員会議室から出て行った。

 

 「炎の逮捕劇…帝都に巣食う…夏の夜のゴミ掃除祭り…か。お前らは決して許さん。アダム!」

 

 一人しかいない会議室から机を叩く音だけが響いた。


ーーーーーーーーーー


 「--------っとまぁこれが事の顛末という訳だよサリー君。」


 「はえー。人に歴史ありというか、帝都に歴史ありというか。私達が安眠してる中そんな大変な事をしてたんすねー!頭があがらないっすよ!」


 「そうだろうそうだろう。だから君、殉職した隊員や怪我して復帰が絶望的な隊員のためにも、いい記事を頼むよ。」


 「了解っす!見出しは…そうっすね、[炎の逮捕劇!]これでいくっすよ!楽しみにしてるっす!本日はありがとうございましたっす!」



             炎の逮捕劇 完

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