第24話 炎の逮捕劇 <拾参>
「どうしたでござるか?まさかもう終わりとは言わないでござるよな?」
「お前みたいな化け物が警魔隊にいるなんて情報はなかった!お前は何者だ!」
「拙者はただ一宿一飯の恩を返してるだけで、警魔隊とやらには所属してはいないでごさる。名は…まぁ悪党に名乗る名は無いでござるな。」
「くっ、貴様の様なイレギュラーに我らの計画を邪魔させはせん!消えろ!」
俺は一度に5発、計10発の特大属性弾を奴に向かって放つ。
「その弾は先程とは比べ物にならんぞ!これで終わりだ!」
しかし奴はまるで素振りでもするかのように軽やかに特大属性弾を一度に切ってしまう。
「馬鹿の一つ覚えでござる。他に引き出しはないでござるか?」
悔しいが今の俺では通用しないらしい。
だが俺に負けはない。
「貴様は強い。俺も本気を出さねばならんらしいな。知っているか?
固有魔法はもう一段階進化する事を?」
「お主程度に固有魔法なぞ必要ないでござる。御託はいいさっさと見せるでごさるよ。」
「その舐めた口に風穴を開けてくれるわ!!
撃ち滅ぼせ!<
俺の両手の銃が黄金に輝き眩しいくらいに光を放つ。
その発光は少しして収まり、発射口が二つある神々しい拳銃に変化していた。
固有魔法の進化。
長年ダンジョンに篭っていた俺がこの最下層の階層主と戦っていた時に目覚めたこの力。
我々はこの力に目覚めたものを覚醒者とよんでいる。
「この銃は一秒間に120発の高速発射が可能の化け物銃だ!威力も先程とは比べ物にならん!遺言を言うなら今の内だぞ?」
「それはそれは楽しみでござるなぁ。」
「もういい!くたばれ!<
俺の2丁の拳銃から秒間120発、合わせて240発の魔力弾が奴を襲う。
俺は一分間奴に向かって撃ち続ける。
魔力弾があちらこちらに当たり砂埃で何も見えなくなる。
奴が動く気配はない。
俺は勝ちを確信した。
「ハァハァ…流石に魔力の消費が大きいな。だが!どうだ!手も足もでまい!いやもはや生きてはいまいな。」
段々と砂埃が晴れ視界がひらけてくる。
そこにはあいつがピンピンと立っていた。
服はボロボロだが、少ししか傷ついていない様子だ。
「馬鹿な…あれを喰らってその程度なのか…?」
「いやー流石に肝が冷えたでござる!先程までの無礼を詫びるでござるよ。拙者が傷を負うなんて久しぶりでござるなぁ。」
俺は全てを悟った。
こいつと俺ではレベルが違う。
俺とは違う遥か高みにいる存在だと。
「我々の計画は完璧だった。貴様さえいなければ今頃帝都は阿鼻叫喚の地獄絵図だっただろう。」
「拙者がいなくてもお主らの計画は頓挫しているでござるよ。帝都はそんなに柔じゃないでござる。」
「っふ…。お前ほどの男が言うならそうなのかもな。最後に一人の戦士として貴様に勝負を挑む!私は[銃聖]ジョン・ドゥ!行くぞ!」
「なら拙者も名乗るでごる。[海燕流]皆伝!九十九 ツバメ! 参るでござる。」
勝負は一瞬だった。
俺は全力の[踊り狂う聖銃]を奴にお見舞いする。
後の事は考えない魔力の込め方をしたせいで魔力弾の大きさ、威力ともに凄まじい事になっていた。
だが、まさに奴に着弾する寸前に全ての魔力弾が消えてしまった。
「[海燕流]奥義 "凪" 」
うっすらとそんな言葉が聞こえた時にはもう、俺の2丁の拳銃は2つに両断され、俺の腹は大きく切り裂かれた。
「っがはぁ!…み、見事!」
「お主もなかなかの戦士でござった。そのままでは苦しいでござろう?介錯するでござる。」
奴がまさに俺の首を刎ねようとした瞬間に突然の浮遊感に襲われた。
「アダムは殺させない!!」
「え、エヴァ…、な、何故ここに?」
「命令違反をお許し下さい!予定の時間を過ぎても何の合図もないものでしたので!来てしまいました!」
「は、離…せ、負けて命…を拾おうと…は思わ…ぬ。」
「ボスには!いいえ私には!アダム!貴方が必要なのです!後で殺されてもいい!貴方を連れ帰ります!」
「私を…その名で…呼ぶ…な。九十九ツ…バメ殿。最後に…聞かせて…欲し…い。ウォル…ターは…この作戦に…なんて名前…をつけ…ていたの…だ?」
「……………炎の逮捕劇!帝都に巣食う!?夏の夜のゴミ掃除祭り!……でござる。」
「ふはははは!か、完敗…だ。流石は…我が永遠の…ライバル!」
「……………。」
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