第22話 炎の逮捕劇 <拾壱>
ちきしょう! ちきしょう! ちきしょうがぁ!!
なんなんだあの化け物は!
ロットもライラもマックスもあの化け物に殺られちまった!!
サルサとセブルスも瀕死の状態だ!!
こんな化け物がいるなら教えといてくれよ!
恨むぜ警魔長ウォルター・オールドー!
最初は順調だったんだ!
俺たちの連携で4体のAランクの魔物は、多少手こずったが誰も傷を負うことなく倒せた。
「隊長ー余裕ですな!あと1匹ですぞ!帰ったらたらふく酒を飲みたいですぞ!」
これがマックスの遺言になっちまった。
奥で何もせずたたずんでいた1匹の魔物。
まるで巨大なスライムみたいな不定形の身体から何本もの触手が伸び、俺たちが倒した魔物を吸収してしまった。
すぐに奴の身体は変化を起こし、小柄な1匹の黒いライオンに変わった。
「これはだいぶ倒しやすくなりましたね。」
これがロットの最後の言葉だ。
俺たちが動き出した瞬間、まずサルサとセブルスが吹き飛んだ。
次にマックスの首が飛び、ロットの脇腹が噛みちぎられた。
俺は考えるより先に体が動き固有魔法<
俺の魔力で形作られたその聖樹からは、常に回復や強力なバフを味方全員に与えてくれる。
しかも聖樹から枝が触手の様に伸び敵を自動攻撃してくれる非常に強力な固有魔法だ。
「ライラ!お前はサルサとセブルスを回復して退けー!!!」
「わ、わかりま……っがは!」
奴は俺とユグドラシルの波状攻撃から難なく抜け出し、後ろへ走っていたライラの心臓をその鉤爪で刺し貫いた。
これが冒頭までに起こった一瞬の出来事だ。
だが泣き言ばかりも言ってられねぇ!
サルサとセブルスを助けるためにはこの状況をなんとかしないと!
「待たせたわねアロン!状況を簡潔に説明して!」
「ミランダ!た、助かったぜ!魔物の中の1匹が他の魔物を吸収して変わっちまったんだ!部下は3人殺された!あとの2人は生死不明だ!」
「サルサとセブルスなら大丈夫よ。私の部下が治療しているわ。とにかくあの魔物をどうにかしないといけない訳ね。」
「気を抜くな!一瞬で持ってかれるぞ!こいつはSSランクはあると思え!」
「じょ、冗談でしょ?そんなの私達だけじゃ手に負えないわよ!」
「死なない事だけ考えろ!せめて部下が逃げる時間くらいは稼ぐぞ!」
「ええ、そうね。隊長としての責任を果たします…。最後まで付き合ってもらうわよ<
ミランダの隣に現れる白い全身鎧の騎士。
こいつも今日で見納めだな。
俺とミランダは同期だ。
ミランダの隣にはいつもこいつがいた。
任務中にミランダと喧嘩した時はよくこいつをけしかけられたものだ。
ダメだ、昔の事が走馬灯のように浮かんできやがる。
そんな思考をしながらも俺とミランダの攻撃は止む事はない。
昔とった杵柄か、息はピッタリだ。
「ミランダ!昔を思い出すなぁ!最後がお前とでよかったぜ!」
もう黒い魔物の攻撃を防ぐのが厳しくなってきた。
段々と身体が悲鳴をあげているのがわかる。
もういつ殺されてもおかしくない。
「私は最後があんたなんて最低よ!…でも我慢してあげるわ…」
その言葉と共にまずミランダの<隣人の騎士>が粉々に破壊され、ミランダも吹き飛ばされた。
「ミランダ!!!てめぇ!よくもミランダを!!!」
俺は最後の力を振り絞り、人生の中で最高の攻撃を黒い魔物に喰らわせる。
「どうだ!!テメェみたいなやつにただで殺られるか!
俺の名前はアロン!
樫の木という意味だ!
俺は警魔隊の大樹!だから俺は!
最後まで折れねえ!」
だが奴は何もなかった様に起き上がり、俺の頭目掛けてその大きな口を開け、目に見えない速さで突進してくる。
(もう身体が動かねえ。…でもなミランダ、一撃は喰らわせてやったからな。あの世で自慢してやるぜ。)
「マギアイストゆるさーん!!マギアイストは殲滅だー!!」
最後に俺がみるはずだった黒い魔物の口内の景色は、赤く発光したゼニガタのとっつぁんが、黒い魔物を殴り飛ばす姿に変わった。
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