第15話 炎の逮捕劇 <肆>


 「Mr. ジョン・ドゥ。全ての準備が整いました。すぐに始めますか?」


 「まぁ待て。観客は多い方が良いだろう?これまでの我慢に比べれば誤差みたいなものだ。」


 今日、まさに今日この日こそが我々マギアイストの歴史に残る記念すべき日になるだろう。

 

 あの忌々しいアンチマテリアルフィールドが発明されてから50年。

 今日の計画はそこから始まった帝国とマギアイストの戦い、それに終止符を打つ一手になるだろう。


 私は私の役割を見事に果たしてみせる。

 

 「しかし、Mr.ジョン・ドゥ。奴等は本当に来るでしょうか?」


 「来る。まず間違いなくな。潜り込ませているスパイにこちらの情報を流す様に言ってあるからな、ウォルターのやつなら必ず食いつく。」


 「警魔長のウォルター・オールドーと面識が?」


 「ああ、昔に少しな。…お、どうやら10階層に役者が揃ったようだぞ?もう少しかかると思ったが。流石はエリート揃いの警魔隊と言ったところか。エヴァ、おまえも10階層に跳べ。そして予定の時間になったら全員を連れて拠点に転移しろ。」


 「わかりました。しかし本当に一人で大丈夫なのですか?Mr.ジョン・ドゥ。」



 「私はこの数年ダンジョンに篭り続け、ついに覚醒するに至った。だから心配は無用だエヴァ。私は私の役割を果たす、だからお前もお前の役割を果たせ。」

 

 

 「わかりました。ではご武運を。」


 固有魔法で10階層に跳んでいったエヴァを見送り、このダンジョンの最下層のさらに奥、ダンジョンコアがある部屋で最後の仕事をする。


 この9割ほど赤に染まったダンジョンコアを私の魔力で完全に染色し、支配権を奪う。そして強制的に"ダンジョンの大変異"を引き起こす。


 ダンジョンの大変異の副産物、魔物の大発生によるスタンピードを帝都まで誘導することにより、彼奴等はアンチマテリアルフィールドを解除せざるを得ない。


 その時帝都に潜んでいる我が同胞とともに革命をおこす。

 なんて完璧な作戦なんだ!


 「作戦名は、……そうだな。「必殺!スタンピードで帝都は壊滅!?夏の夜の魔物スペシャル!!」だ!ククク、これにはウォルターもかなうまい。」


 我が永遠のライバル、ウォルター・オールドー。

 これは私が一歩先をいってしまったかな?

 っと、その前に。


 「そこのお前そろそろ出て来い。」


 「気づいていたでござるか。あまりにも作戦名がダサすぎて気を緩めてしまったでござる。」



 「ふん。この良さが分からんとは、センスのない奴め。貴様はウォルターの手の者か?」



 「我が雇い主、ウォルター殿は貴殿の動きを全て見切っているでござるよ。観念してお縄につくでござる。」


 

 「お前如きができるとは思えんが、できるものならやってみろ。」



 「では稽古をつけてあげるでござるよ。」


 「ほざけ!来い!」


 俺はすぐさま固有魔法<偽りの聖銃ビスマルク>を発動させる。


 突如として俺の手に現れる2丁の拳銃。

 長年連れ添った愛銃だ。


 2丁の拳銃から様々な属性の魔力弾が奴に向かって発射されて行く。

 魔力弾の威力は数発でAランクの魔物を苦も無く倒せると聞けばその威力も推し量れるだろう。


 「ふん。でかい口を叩くもんだからどんなもんかと思えばこれで終わりか?」


 「それは少々気が早いというものでござるよ?」


 奴は涼しげにそう言うと、所持していたバカ長い刀で全ての魔力弾を一太刀で切ってしまった。

 

 「なかなかやるじゃないか。どれ、少し本気を出そう。」


 予定の時間までにこいつを倒し、スタンピードを起こさねばエヴァ達も、帝都に潜んでいる同胞達も撤退してしまう。


 それは事実上作戦の失敗を意味する。

 そんな事は許されん!

 必ず成し遂げてみせよう!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る