第13話 炎の逮捕劇 <弐>
警魔隊本部に着いた俺は受付をしている女性に警魔手帳を見せながら尋ねる。
「あー本部長のウォルター殿にとりついで貰えるか?火急の案件でな。」
「えーと第三警魔隊のゼフ隊長ですね。少々お待ちください。」
アポも無しに来たのは早計だったと反省していたが、すぐさま受付から声がかかる。
「第三警魔隊のゼフ様。お待たせいたしました。第一会議室にいるから来て欲しいとの事です。」
受付の女性に短く礼を言い、急ぎ会議室に向かう。
ウォルター警魔長。
赤門である警魔隊専攻大学を主席で卒業し、27歳という異例の若さで警魔長の地位に駆け上がった傑物である。
俺はこのまますんなり報告だけで終わりますように、と願っている間に会議室に着いてしまった。
ため息を深く吐き出し、ドアをかるく2回叩く。
「第三警魔隊隊長のゼフです。失礼します。」
そう言ってドアを開けるとそこには警魔長の他に第一警魔隊の隊長アロンと、第二警魔隊隊長のミランダもいた。
「これはこれはゼニガタ隊長、本日は如何されましたか?」
「先程私の部下がダンジョンに異変が起きているとの報告を持ってきましたので、至急調査せねばと思い知らせに来ました。」
「第三警魔隊でも情報を掴んでいましたか。実は我々も丁度その事について話し合っていたんですよ。ナイスタイミングですね。」
「ウ、ウォルター警魔長も<ジャック>から聞いたんですか?それにしては情報が回るのが早いような……」
「ジャック?いえいえ私はここにいるアロンとミランダからですよ。彼等にはマギアイストの最近の動向を探らせていましてね。そしたらなにやらダンジョンでマギアイストの連中が不穏な行動を起こしていると、報告をうけたのですよ。」
「な、なるほどそのせいで本来出るはずの無い高ランクの魔物が低階層で出るとゆう事態になってるわけですな。」
「なに!?ゼニガタのとっつぁん!それは本当かい!?」
「急にどうしたんだアロン!この事は知らなかったのか!?」
「俺達の掴んだ情報はグレーリストにある連中が頻繁にダンジョンに出入りしてる事と低ランクの冒険者の死者数の増加ぐらいだ。なぁミランダ?」
「ええ、そんな情報は私達第二警魔隊にも入ってきておりません。ウォルター警魔長、これは作戦の練り直しが必要では?」
グレーリスト。マギアイストの疑いがあるが、確固たる証拠が無く見張り段階の連中の事だ。
そんな奴らがダンジョンに出入りしていたとはな。
何故第三警魔隊には情報が回らなかった?
いや情報が漏れないように秘密裏に動いていた段階だったのか。なるほどな。
「私もそう思ったところだよミランダ君。でも丁度いい戦力が来たじゃないか。第三警魔隊にも協力してもらおう」
「ゼフ隊長なら異論はありません。是非協力してもらいましょう。」
「ああ俺もゼニガタのとっつぁんなら問題ねぇぜ。他の所のクソみたいな隊長とイケすかない隊長に比べれば100倍ましってもんだぜ。」
「な、なにがなんやら?協力するのは構わないのですが、詳しい話しを聞かせてもらえますか?ウォルター警魔長。」
「もちろんですとも、ゼニガタ隊長。ですがそう難しい話しではありません、誰が聞いても一度で理解できる作戦を立てるのが私の仕事ですからね。」
「流石は警魔長ですな!"賢者"の異名は伊達ではありません!」
「ふふっ、ありがとうゼニガタ隊長。
まず、グレーリストの連中及びダンジョンから監視の目を全て引き上げさせる。マギアイストの連中が行動しやすい様にコントロールするわけだね。そして、マギアイストの計画が大詰めになり、一同に会する時に警魔隊の合同部隊がこれを捕縛するというわけだ。」
「な、なるほど!しかしそんな上手く行くでしょうか?」
「上手く行く行かないの話では無いよ、ゼニガタ隊長。そうなるようにコントロールするんだ。もちろん今話した作戦は簡単に言っただけだからね。細かいところは私が調整するよ。」
「私ごときが意見をはさみ申し訳ありません!ウォルター警魔長にはまことに感服の至りですなぁ。」
「っけ、おべっかもその辺にしときなゼニガタのとっつぁん。話しが進まねえ。」
「す、すまんアロン。そんなつもりではなかったんだが。」
「私はかまいませんよ?警魔長が讃えられるのは当然の事ですもの。ウォルター警魔長、この後2人で食事でもどうです?」
「魅力的な誘いだが、この後も業務が詰まっていてね。すまないなミランダ君。」
「あら振られてしまいましたわ。」
「とにかく私の予想では作戦決行は2週間後だ。隊長達は突入時のメンバーを決めて、書類に書いて提出するように。細かい変更があれば、おって伝えるよ。最後に……」
「さ、最後になんでしょうか?ウォルター警魔長?」
「最後に…………作戦名は「炎の逮捕劇!帝都に巣食う!?夏の夜のゴミ掃除祭り!」これに決定だ!以上解散!」
「あーあ、これさえなきゃ完璧な人なんだがなぁ。」
「悔しいけど、そこだけは同感ですわ。アロン」
警魔隊の賢者の最大の欠点は作戦名がクソダサいというこれ一点だ。
とにかくやっと帰れそうだよウル、そして我が妻テレサよ。
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