第9話 お前を助けるのは2度目だな

 

   「我輩が来た!もう大丈夫なのである!」


 ってもう意識失ってんじゃん!

 特に目立った外傷はなさそうなのに。

 全身墨だらけなのが原因か?

 

 「とりあえず回復しておくか。[全能の極光オムニポテンス]!」

 

 俺の固有魔法"全能の極光オムニポテンス"は回復に特化した魔法だ。

 傷や毒、病気などあらゆる状態を治すことができるが、魔力消費が多くあまり多様できないとゆう欠点がある。

 

 「あと問題はあいつらだけだな。しかしまたなんでこんな階層にいるんだ?」


 争いをやめ、俺を見ながら震えているタコとイカを見て俺は思考する。

 

 過去に起きたこのような魔物の異常発生の原因として、[魔王の復活]または[ダンジョンの大変異]が関係していたと、学校の授業で習った気がする。


 だが、どちらも何千年前に起こった事だと文献に書いてある。


 「考えるのは後々。それにしても震えてるくせになんで逃げないんだこいつら?」


 ダンジョンによって刻まれた意思か、Aランクな魔物としての矜持かはわからないが、こいつらは俺と戦うことを選んだらしい。

 

 「無駄な殺生はしたくないが…。このまま放置すると無駄な犠牲が出そうだからな。恨めよ!」


 音速を超える俺の動きに2匹の魔物は当然反応できるはずもなかった。


 デビルオクトパスの魔石がある目と目の間の弱体部位に突っ込み、魔石を抜きさる。


 魔石をとられたデビルオクトパスは生命活動をやめ海底に沈んでいく。

 

 キラースクイードの弱点部位は目と目の間の下らへんだが、学習したのか沢山ある足で守りを固めている。

 

 相手は持久戦をお望みのようだが、ご希望には添えそうに無い。

 俺は火事の時にも使った"輝く吐息"をキラースクイードに思いっ切り吹きかけ、海ごと凍らせる。

  「イカの氷漬け……見事なものだな」


 氷漬けになったキラースクイードから素早く魔石を取り出し、海底に沈める。


  「ふ〜終わった〜!あとはウェクトルを運ぶだけか。っふ、お前を助けるのもこれで2度目だな。」

 

 最初に助けたのは、中等部に入学したばかりの頃、まだ友達どころか喋ってもいない時だ。

  

 まぁ昔話は長くなるからこの辺にしよう。

 今は早く帰りたい。お腹すいたし。


 散らばっていたウェクトルの荷物と大剣を拾い集め、ウェクトルと一纏めにして担いで出口まで一直線に飛んで行く。

 

 15階層まで普通の人なら3時間以上はかかるが、

俺なら10分もかからないだろう。

 

 

 「ふー今日は怒涛の一日だったなぁ。流石にこれ以上は何も起こらないだろ。」

 

 途中何人かの人に見られたが、気にしないでダンジョンを脱出し、帝都の病院の前まで飛び続ける。


 「火事にダンジョンの異変…、帝都に何も起こら無いといいのだが。そんな事よりお腹すいたな…今日何食べよう…」


 ウェクトルを病院の前に降ろし、そんな事を考えながら帰路についたのだった。

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