第5話 第三警魔隊



 俺は第三警魔隊隊長 ゼフ・ニンテ・ガッタフォードだ。

 親しい人からはゼフ、隊長、またはフルネームを略してゼニガタと呼ばれている。

 みんなも好きに呼んでくれ。


 「おいサボリ!まだ着かないのか!もっととばせ!」

 

 「隊長…見りゃわかんでしょ?朝の通勤ラッシュに捕まっちまいましたぜ。」

 

 俺のマイホームがある辺りから火事の通報があり、とても焦っていた。


 家には息子のウルと妻のテレサもいる。

 しばらく泊まりこみで働いていて家に帰れていないので余計に心配だ。

 

 「隊長ー、自分の家かもしれないからって焦りすぎですよー、そんなんじゃ他の隊員も浮き足だっちゃいますよー?」

 

 「す、すまんロゼ!しかし家には妻と息子、それにローンがあと30年もあるんだ!」


 この間延びした喋り方の小柄な女性はロゼッタ。

 今年大学を卒業して配属された期待の新人だ。 

  「気持ちはわかりますけどねー、って!さっきまでモクモクと上がってた煙がなくなってますよー なにかあったんでしょうかー?」

 

 「な、なに!本当か!?サボリ!窓開けろ窓!それにもっとサイレン鳴らせ!」

 

 「へいへい。えー前を走行中の皆様、第三警魔機甲車両が通りますよー。どいてくださーい。」


 本当に煙が消えている!

 もしかして人力で消せる程度のボヤだったのか?

 これなら大丈夫かもしれないな!


 「地獄の業火に焼かれし虫は

  希望という名の蜜にいざなわれ

  その身を悪魔に捧げやれ

  振り返った後には何も無し」

 

 

 「おいユリウス!今はその頭の痛くなるポエムをやめろ。しかも不吉じゃねぇか!」

 

 「隊長ー!そろそろ着きますぜ〜!」

 

  「了解だ! 総員現着準備!」


     「了解!!」


ーーーーーーーー

 



 なんだ?これが俺の家か?火事は?

 なぜに氷漬けに?妻は?息子は?

 あれ俺って誰だっけ?朝飯食べたっけ?

 オヤツは300円までだっけ?バナナは?


  バシィ!!!

 

 突如俺の頬に衝撃が走る。


 「隊長!しっかりして下さい!早く指示を!」

 

 「す、すまん!もう大丈夫だロゼ!

 サボリはアンチマテリアフィールドの部分解除装置を起動させろ! ユリウスは周囲の人の避難誘導! ロゼは装置起動後に家の氷を溶かせ!建物が崩れるかもしれないから慎重にな!

  総員動け!」


 俺の指示を受け隊員達が素早く動き出す。


 話を聞けそうな人がいないか周りを見わたすが、どこか皆の視線が冷たい気がする。


 気のせいか?

 ご近所付き合いをおろそかにし過ぎたかな?



  「あなた!」 「パパ〜」


  「テレサ!無事か?ウルもなんともないか!?一体何があったんだ!?」

 

 「ごめんなさいあなた!ウルが寝てる間に買い物してたら火事になっちゃったみたいで…ホントにごめんなさ〜い」

 

 「2人が無事ならそれでいいんだ!でもそれならウルはどうやって助けたんだ?誰か助けてくれたのか?どうなんだテレサ!?」

  

  「おじちゃんが助けてくれたんだよパパ〜」


  おじちゃん?おじちゃんとは誰だ?

  まさか一般の人が命をかえりみず助けてくれたのか?

 ならお礼を言わねば!


  「黒仮面卿様が助けてくれたのよ!空から颯爽と現れ、ウルを助けてくれたの!あの神々しさたるや…あなたにもみせたかったわ!」



 黒仮面卿…か、この帝都バラクーダに突如として現れた要注意人物。

 

 民衆からはヒーローとして扱われるが、我々法を取り締まる側からは危険極まりない存在だ。

 アンチマテリアフィールドのなかでも様々な魔法を行使できる存在。 

 

 いやあれはそもそも魔法なのか?謎は深まるばかりだ。

 

 だが今日だけは感謝しよう。


 「そうか黒仮面卿が…。テレサ後のことは我々に任せ、ウルを早く病院に連れて行きなさい。煙を吸っているかも知れない。部下に送らせよう。」


 「わかったわ、あなた。仕事が終わったら私の実家に来て頂戴。愛してるわ。お仕事頑張って。」

 

 「ああテレサ私も愛してるよ。お前たちには苦労ばかりかけるな。」

 

 妻を見送り仕事に戻るが、最近の火事の多さは異常だ。

 

 まさか放火か?

 

 これは捜査をもう一回やり直さなければいけないかも知れないな。

 

 まずこの火事の出火原因の特定だ!

 これが放火なら絶対に許さん!

 

 アイムホーム!私の30年ローンの家よ!

 


  

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