第4話 救出劇
「だれか〜助けて〜!まだ子供が中にいるのー!」
「バカヤロウ!なんだって子供一人残して出かけてやがるんだ!」
「うう〜 ごめんなさ〜い!寝てる間に買い物にいってしまったの〜 許して私の坊や〜!」
「第三警魔隊はまだ来ないのか!バケツリレーでもいいから水持ってこい!このままじゃあ周りの建物まで燃え広がるぞ!」
「無理だこの勢いじゃ、文字通り焼石に水だ!」
「ちくしょう! 見てるだけしかできないのか!魔法さえ使えたら!」
「アンチマテリアルフィールドを部分解除できるのは軍か警魔隊だけだ!だから俺達にできるのは早く警魔隊が来るのを祈るくらいしかねぇんだよ!」
「そんな事みなまで言われなくても知ってるわ!ちくしょう!誰かなんとかしてくれ!、」
野次馬の阿鼻叫喚があちこちから聞こえてくる。
どうやら子供が一人取り残されてるらしい。
「なるほどな、事は急を要するらしい。待っていろ…すぐにどこにいるか見つけてやる!」
俺の能力の一つ透視を発動させる。
(どうやら2階の奥の部屋にいるみたいだな)
俺は目にも止まらぬ速さで家の中に突っ込む。
頼むから無事でいてくれよ!と祈りながら壁も火も関係無しに一直線に進んで行く。
「ママ〜 ゴホゴホ あちゅいよ〜 ゴホ
たちゅけて〜」
聞こえた! 無事だ! 声の主のもとに素早く移動し、優しく抱き上げる。
「吾輩が来たからにはもう大丈夫である」
この喋り方は身バレ防止で始めたらいつのまにか定着してしまい、やめるにやめられなくなった。
もちろん声も変えてある。
おれがただの黒仮面ではなく、黒仮面卿と呼ばれるようになった由縁だ。
「おじちゃん誰〜? ママは〜?」
「おじちゃんではない…。お兄さんと呼びたまえ。それより口を閉じていなさい、煙を吸ってしまうからな。すぐにママの所に連れて行くのであるからして、しっかり捕まってるのであるぞ?」
そう言って俺は子供を抱えたまま上空300mまで飛翔する。
「うわ〜すご〜い、 たか〜い!」
「ふふ、そうであろうそうであろう。今日は風が冷たいからな。これで熱くなった体も少しは冷えたであろう?」
「うん!もうあちゅくないよ!ありがとうおじちゃん!」
「おじ……もういいのである。それではママの所に向かうであるぞ」
上空からゆっくり群衆の中心に降りていくと、鼓膜が破れそうな人の声がピタリと止んだ。
「ママ〜!!」
「ああ、坊や無事だったのね!」
"うおぉぉぉ 黒仮面卿が子供を助けたぞ!'
"流石だぜ! 帝都の守り神!'
"素敵! 抱いて!'
"いつもありがとうな!ついでに金貸してくれ!'
"子供ばっかたすけやがって、このロリコンやろーめ!ww"
あちらこちらから感謝の声が爆弾のように破裂していく。
たまに悪口もまざっているが。
貴様らの顔は覚えたからな……。
いつか目に物を見せて……。
いやいやそれよりまだ火ぃ消えてないではないか!
こんなことしてる場合ではない!
「まぁ待ちたまえ諸君!まずこの激しく燃え盛る業火を静めようではないか」
"頼むぜ! ちゃっちゃと消してくれ!'
"もううちの店にまで来そうなんだ!頼む!'
"このままじゃあ仕事になんねぇ!おまんま食い上げだ!'
"昨日スロットで有金全部なくなっちまったんだ!貸してくれ!'
"ばあさん 飯はまだかいのぅ?もう3日も食べておらんのじゃが'
ええ〜い、やかましい!金は貸さないし、ばあさんは飯ちゃんと食わしてやれ!
そんな思考をしながら俺は、目一杯に息を吸い込む。それを極限まで体内で冷やし、火事に向かって吐き出す。
するとあっという間に火は消え、家は氷漬けになる。
いわゆる'かがやく吐息' ってやつだ。
「諸君!これにて一件落着という事でよろしいかな?」
"ありがとう!ほんとーにありがとう!"
"それに比べ警魔隊はなにしてやがる!"
"税金を黒仮面卿に使いたいくらいだぜ!"
"そうだ、そうだ!余ったら俺にくれ!"
"取材を!ちょっとだけ取材させて下さいーっす!!"
うんうん、やっぱり平和が1番だ。
さて後始末は警魔隊の皆さんに任せようか。
警魔隊にもメンツってものがあるからな。
ヒーローはやっぱり仕事が終わったらすぐに帰る、スタイリッシュさが肝心だな。
「では諸君さらばだ!今日も一日 "平和と子供を大切に!"」
"""平和と子供を大切に!""'
いつもの決め台詞を決め、群衆もその言葉を叫び見送ってくれる。
「おじちゃん〜ありがとう〜」
「コラ!坊や黒仮面卿様でしょ!
黒仮面卿様本当にありがとうございます〜!」
助けた親子の感謝の声の余韻に浸り、皆に見られない上空まで移動する。
(今日も太陽が綺麗だ………、ってこんなことしてる場合じゃないな。ミッシェルさんの家に急がないと。)
ヒーローも仮面を取ればただの人って訳だ。
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