第2話 薄闇の中

「・・・君?」

私の問いに君は微笑んだまま、闇に消えていった。


「な~んだ・・・」

私の呟きは小さいまま、何でも無かったかのようにフェイドアウト。


「ハァッー・・・」

タメ息と共にバッグを床に置いて。


私はドスンと。

ソファー兼用のベッドに腰を下ろした。


窓に映る自分の顔。

深夜の交差点に走るヘッドライト。


何もかも。

日常のまま。


当たり前のこと。

魔法も何もない、現実の世界。


そう。

そう、なのです。


私の大好きだった。

彼が目の前にいるなんて。


あり得ないことなのだから。


その時。

あのメロディーが頭の中で鳴った。


君が弾いた。

アルペジオ。


私が大好きだった曲なのでした。

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