アルペジオ

進藤 進

第1話 寂しいですか?

「ふぅ・・・」

疲れて帰った夜。


アパートのドアに差し込むキーが。


上下が違って。

二度目でやっと、開きました。


真っ暗な室内。

外廊下の灯りで、ボンヤリと浮かんでいます。


今日は疲れた。


部長のいつものクドイ指示は、相変わらずで。

明日に残すのは嫌だから、結局、頑張っちゃった。


頑張らなくても、良いんだよ。


この頃。

よく聞く、フレーズです。


フッ・・・。


笑うしかないよね。

そんなの、できる筈無いじゃない。


頑張らなきゃ。

怒られるんだよ。


寒い。

五月も終わりだというのに。


寒いよ。


≪フフッ・・相変わらずだね・・・≫


えっ・・・?

どこかから、声が聞こえた。


空耳かな?


ふと。

顔を上げると。


君が。

微笑んでいました。


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