第67話 王都にて & エルフ魔王の故郷

 戦禍の跡は凄まじい。

 瓦礫の山、死体の山、まさに地獄絵図だ。


【酷いな】


〖人間も似たようなことをあたし達にやったんですよ?〗


【戦争ってくそだわ】


 俺は眉を顰める。


【ほのぼの炎】


 俺は『殺試合』をまだ発動させている。

 ミルキスや魔王軍が何かよからぬことを起こさないとも限らないし、逆に教皇軍がいきなり魔物に襲いかかるなんてこともありうると思うのだ。


 俺は、傷ついた街の……せめて木々や人々を癒やしていく。


 教皇が溜息し、


「本当に凄まじい魔力量だ。貴方がいれば、医者いらずですな」


【確かにな】


「どうです? 医者になられては? 王都でも教皇庁でも貴方なら稼げますよ?」


 教皇の思惑はなんだろう?

 いや、単純だ。

 俺を人の側に縛り付けたいのだろうな。


【いや……俺はミルキスの故郷に行ってみたい】


〖……〗


 ミルキスが俺をじっと観てくる。

 綺麗な瞳がより輝かしくなってる気がした。


「そうですか。それは残念。もし、何か力になれることがあったら遠慮無く言って下さい」


【おう】


 俺は『ほのぼの炎』で傷ついた全ての人を癒やし。戦後処理を行っていった。

 財務のことなどはよく分からなかったが、一応魔王軍に対する皆殺しは止めてくれたみたいだ。

 手ぬるい、そう罵詈雑言が来たらしいが……教皇の尽力もあり、なんとか収まったらしい。


 一週間ほど、魔王軍に労役を与え、取りあえず故郷に帰してよいということになった。

 賠償金や領土割譲の話はその後行うことになるらしい。

 ここは俺は分からないが、魔王ミルキスの戦後処理提案に教皇は頷いていたから段取りはすんでいるようだった。


 で、俺はミルキスに連れられ、魔王軍の本拠地へと向かった。


〖勇者様、もう少しです〗


【おう】


 俺はミルキスに抱かれながら彼女の家へ向かう。

 魔王軍の残党も一緒だ。


 黒い森。

 国境を越えた大森林地帯を抜けると、魔王城があった。

 赤く光った紅玉の宮殿が、漆黒の茂みの中に君臨している。

 三百メートルはあるだろう宮殿が魔力を帯びて光る。


【すげえな】


〖あはは。まぁ、魔力はかなりありますよね〗


【……】


 ぐー、と俺のお腹が鳴った。


【あ】


〖あははは。仕方ないですね。じゃあ、御飯にしましょうか〗


 ミルキスはそう言って、彼女の服を少し脱いで俺の口元におっぱいを当ててきた。

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