第64話 転生勇者【敵の美少女と結婚したいです】
教皇は青ざめた顔で、首をこれでもかと横に振った。
「い、いけません!」
【なぜですか? 俺がエルフ魔王に求婚して何が悪いってんですか?】
教皇は目を瞠り、掠れ声で言う。
「勇者ユシア様。貴方は英雄ですよ!?」
【だから何だよ】
「反社会組織どころか、犯人現組織のボスを相手に求婚なんてどうかしてる! そもそも、どこが好きになったんですか?」
俺は一瞬押し黙り、答えた。
【美少女だから】
「は!?」
教皇がぽかんと間抜けな口をする。
いや、教皇だけじゃない。
魔王軍も教皇軍も……人間も魔物も分け隔てなく同じ表情だった。
ミルキスはちょっと顔を赤らめている。
やっぱ彼女は可愛い。
【一目惚れでした】
「黙れ……この、若造が……黙れ!」
教皇のあまりの言い方にムッとなってしまう。
俺は頬を膨らせて、腕組みした。
【人間の自由の為に戦ったんですよね? なのに人間が誰を好きになるかって自由を制限するなんておかしなことです】
「魔王ミルキスは沢山の人間を殺してきました。その数、百万人以上」
多いな、それなりに。
「魔王ミルキスは処刑以外ありえません。これは、人類の殆どが同意するでしょう。でないと示しがつきません」
【王族がエルフを性奴隷として扱ったりしてたんだよな?】
俺の言葉に、その場の全員がピリッとした空気になる。
人間の兵士の中には俺を血眼で怖いくらいに睨んでくるものもいた。
対して、魔物の中には俺を見て驚き涙するものもいた。
「ふざけんな、クソ勇者! 魔物なんて人間より劣った存在、殺したり玩具にしていいんだよ!」と誰かが言って「そうだそうだ!」と野次を飛ばす人間の兵士達。
〘あんなことを言ってくれる人間がいるだなんて。勇者とはやはり特別な方のようだ〙〘だな〙と慰め合う魔物達。
うーん。
両者の対立は、相当に溝が深いようだ。
深刻だね。
俺が溜息すると、ミルキスと目があって……ミルキスは涙目で俺にお辞儀した。
ちょっと悔しそうなのが、また可愛かった。
俺はほくそ笑み。教皇を見て、
【敵の美少女と結婚したい】
「だめです。絶対にいけません!」
【戦利品として敵魔族の居住地と魔王をいただいてもいいですか? あとは勝手に口説くんで】
「っく」
教皇が悔しげに握り拳をした瞬間だった。
俺に向かって女性の声が聞こえた。
「ユシア! 何言ってるの!?」
俺の母、セレスだった。
おっかない顔で俺を睨んでる。
まずい……母は掌に息を吹きかける。
お尻ペンペンする気だ!
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