第60話
俺の魔力が増大していく。
殺試合(デスゲーム)の仕様だ。
俺の魔力が増大するのをミルキスは感じたのがギョッと驚いていた。
殺試合(デスゲーム)は登録者の数が多ければ多いほど使用者の魔力を上げる効果がある。
ミルキスの魔力がドス黒く濃密になったのも、恐らくこのスキルのせいだろう。
ならやることは単純だ。
登録をお願いするように呼びかけるだけ。
【皆さん、お願いがあります】
――――――――――――――――
:久しぶり~~
:配信なんかやってる場合か?
:エルフ魔王倒せよ
:前見ろ、前!
――――――――――――――――
俺が前をチラ見すると、ミルキスが一瞬で距離を詰め攻撃してくる。
俺はミルキスに狙いを定め、
【ほのぼの炎!】
スキルを放つ。
しかし俺が攻撃の攻撃を――ミルキスは技の発生場所を見抜いて一瞬で移動し躱した。
っく。
戦闘経験の差、えぐいな。
当たり前だが、エルフ魔王は俺の一挙手一投足から動きを読んでくる。
俺は明らかに劣勢に見える。
「強固防壁」を張り続けそれが立て続けにミルキスの魔法で割られ続ける。
こちらの攻撃は一向に当たらない。
このままではジリ貧だ。
俺はスマホをチラ見した。
――――――――――――――
:早ぇええええええええ!
:動き見えない
:あの魔王の攻撃をここまで防ぐなんて
:赤ちゃん強すぎて草
――――――――――――――
意外とネットのコメントは甘口だった。
人間の方がやっているのだろうか?
中には敵対的なコメントもあるが、概ね俺を応援してくれているようだ。
俺がチャンネル登録者数を見ると、なんと一億人にいっていた。
一億……これは嬉しい。
数字を認識した瞬間、俺の魔力がブワっと迸る。
一気に吹き上がった魔力が衝撃波となってミルキスを吹っ飛ばした。
〖――っ!〗
これだけ全魔力が増えたなら、俺のスキルに込められる威力も増えるだろう。
そう思って俺はミルキスを狙った。
【ほのぼの炎!】
ミルキスは俺の動きを完全に見切っている。
避けようとする動き、タイミングは完璧だった。
しかし、今までの攻撃とは規模が違う。
今までは精々、直径百メートル。
今回のは二キロメートルくらいはある。
ミルキスに炎が当たり、彼女は炎上する。
〖ぐわああああああああ!〗
ミルキスの絶叫が聞こえる。
ズキン、と俺の心臓が痛んだ。
あんな若い女子を傷つけるのは俺のポリシーに反する。
……これで倒れてくれるといいのだが。
〖ほのぼの炎!〗
【!?】
ミルキスが自身に炎を放ち、彼女の体を回復させた。
彼女の体は完治していたが……その魔力量はかなり減少している。
〖やりますね、勇者様〗
【随分、魔力減ったな】
〖貴方の考えた呪文は貴方には最適なんでしょうが、私はあまり合わないんですよ。
必要魔力量が術者によって違うんです〗
ミルキスは険しい顔を俺に向けた。
無理も無い。
……俺は劣勢だと思ったが、勝利を確信している。
今のやり取りで分かった。
この勝負、俺に分がある。
いや、もう勝負はついたと言っていい。
俺の勝ちだ。
【ミルキス、降参しろ。命は俺の名誉にかけて保証する】
〖ありえませんね。人間は魔物との約束を守ったりしないので〗
彼女の瞳に迷いは無かった。
……きっと裏切られ続けてきたのだろう。
彼女の心を、俺は助けたい。
でも、この思いは……きっと届かないのだろうな。
ミルキスは、掌を合わせ詠唱を始めた。
俺は即座に「強固防壁」を展開し警戒を強めたが、何も起こっていない。
〖大いなる命の繋がりよ。我を媒介とする。全てを、吸い尽くせ……バース〗
ミルキスの言葉と姿勢は祈りに似ていた。
綺麗な彼女の祈りが天地に届いたかのように、次々にあちこちから魔力がミルキスに集まっていく。
そして、
〖はぁ!〗
ミルキスは一瞬で俺に近づいてくる。
俺が魔力を発動しようとする一瞬の隙もなくミルキスは俺を「強固防壁」ごと抱きしめてきた。
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