第57話 

 十三本の支柱と天地に設置された巨大な魔法陣――殺試合(デスゲーム)の仕様だ。


 それとは違う系統のデザインが、まるで遊園地のような可愛らしい階段や乗り物が次々に現れていく。

 そして魔王軍の纏う魔力が一段階上がった。


〖「一撃必殺」を付与〗


 ミルキスが詠唱すると同時に、魔王軍の纏う魔力がさらに強くなる。

 っち。

『強固防壁』と『一撃必殺』なら『強固防壁』のが強い仕様になっているが……俺が付与する魔力が弱まった瞬間、教皇軍は蹴散らされてしまうだろう。


 俺も殺試合(デスゲーム)を発動するしかない。

 ミルキスが殺試合(デスゲーム)を発動し、そのせいで俺まで殺試合用のスキルを発動出来ている。

 ……俺とミルキスが、同時にこのスキルを展開したら何が起こるか分からないが……やるしかないだろう。


【殺試合(デスゲーム)、発動】


〖!?〗


 俺の詠唱に、戦場の戦士達が驚いていく。

 ミルキスの設置した十三本の支柱の間に均等になるように俺の設置する十三本の支柱が出現する。


〖……とんでもない魔力ね。流石、勇者〗


 ミルキスは俺を警戒し、彼女の纏う魔力を放出した。

 王都近くに敷いた陣営はもはや影も形もなくなっていく。


 ミルキスの魔力と俺の魔力が周囲を呑み込み、混沌とした風景へと化していく。


 俺がふと気付くと、王都の住居が分解され宙に浮いている。


 地面は草茂る土の大地だったのが、固い石の床に。

 仄かに紫色の炎が怪しく光る松明の数々が。

 不気味な石造りの巨人型彫刻があり、今にも動き出しそうな雰囲気を醸し出している。


【何だ、ここは……】


 俺が焦燥感を抱いた瞬間、ミルキスが笑う。


〖魔王城ですよ〗


【何……】


 ミルキスはニヤリと笑い、更に黒い魔力を解き放った。


〖あたしの魔力を使って魔法結界を作り出しました。魔王城は魔王がいるところに魔法結界を作る難易度Sランクの魔法なんですよ。『一撃必殺』、付与!〗


 ミルキス含む魔王軍が怪しい魔力を強く放った。

 やばい。

 あれを喰らったらさっきまでの『強固防壁』では歯が立たないだろう。


「『強固防壁』!」


 俺が俺を含む教皇軍にさらに防御を上げる。

 しかし、次々と俺が付与した『強固防壁』が魔王軍の戦士達の攻撃によってヒビができていく。

 攻撃が強すぎる。

『一撃必殺』は自分の攻撃力を上げ、相手を一撃で絶命させるはずの技だ。

 それを耐えるだけの『強固防壁』を張れてるだけで凄いことだと思う。

 だが……このままでは負ける。

 負ければ、全て終わりだ。


〖てい!〗


 俺に向かってミルキスが突撃してきた。


【!?】


 ドン、と飛ばされる。

 俺はくるくると転がって、【殺試合(デスゲーム)】内の支柱に激突。

 俺の体を纏っていた『強固防壁』に大きなヒビが入る。


【っく……】


〖あはは。勇者様、倒せないかと思ったけど……そうでも無さそうですね?〗


 ミルキスはニヤリと俺を見て笑い、さらに大きな魔力を迸らせた。

 このままじゃ、まずい……。

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