第53話 スマホ、作成成功
どうしよう。
このままじゃ皆死ぬ。
〖さぁ、魔王軍よ。人間達を蹴散らせ!〗
ミルキスの号令と共に、魔王軍のメンバーは雄叫びをあげた。
〘ひゃっはー、汚物は消毒だぁ!〙
〘はっはっは、圧倒的ではないか我が軍は〙
〘十分後に貴様らを待っているのは、死だ……〙
〘あははは、面白いように人間の攻撃が効かないや!〙
ミルキスは教皇軍と魔王軍の戦闘をスマホで撮影し、配信し始めた。
〖はい、皆さん。こんにちは~。今日は教皇軍を一方的に殴りつけていきたいと思います。勿論、舐めプです〗
っく。
俺、あんな感じのことしていると思われてたのか。
自分でやるのは気にならないけど、やられたらうざいな。
ミルキスの配信に対し、教皇軍は何もできない。
教皇はミルキスの相手をするのを止め、人間の兵士達を庇うように立ち回っていく。
だが、劣勢なのはまるで変わらない。
次々に教皇軍兵士達はやられていき、魔王軍の攻撃に防戦一方である。
教皇は懐から投げ槍を取り出し、それに魔力を込めてミルキスに向けて放った。
「っはぁ!」
投げ槍は魔力がこもっていて、ミルキスのところまで行くがミルキスはそれを難なく躱した。
〖今のは良い魔力だったね。当たれば少しダメージあったかも〗
「残念だったな、ミルキス」
〖?〗
教皇が掌に魔力を込めると、ミルキスが躱したはずの投げ槍がUターンして再びミルキスに向かって行った。
すると、ミルキスでなくミルキスの持っていたスマホに命中した。
スマホは壊れてしまう。
〖――〗
すると、殺試合(デスゲーム)の天蓋や支柱が薄くなっていった。
スマホが破壊されたことで発動できなくなりつつあるのだ。
「ふはははは、エルフ魔王……人間を舐めるなよ!」
教皇は高笑いし、教皇軍が雄叫びを上げた。
奮い立った人間の兵士が魔王軍を押し戻していく。
ミルキスが発動した『強化防壁』の効果も弱まっていってるのだ。
よし、これなら勝敗は分からなく――。
あれ?
どうして、ミルキスは笑っているんだ?
〖あはは。残念でした、教皇〗
ミルキスの不気味な笑みに、教皇も戦慄する。
「何……」
〖コピーアンドペースト〗
魔王ミルキスは一瞬で新品のスマホを作成した。
それを戦場にいる全ての者が凝視。
教皇の目が大きく見開かれる。
「ば、馬鹿な。これでは……いくらスマホを破壊しても、無駄ということか……」
ミルキスは勝ち誇ったように、スマホで教皇の写真を撮影した。
あれを全世界に配信するのだろう。
〖あはははは! コピーアンドペーストは作成したものを魔力が尽きない限り、無限に作成することができる。あたしのスマホをいくら破壊しようとも、この呪文で即座に再生してみせるわ〗
「万事休す、か……」
教皇の顔が絶望に染まる。
人間の兵士達も武器を落とし、戦意喪失しているものが多数現れた。
だが、俺に突如として光明が差し込める。
勝機はまだある。
俺は掌に魔力を込める。
「ユシア、何してるの? もう終わりなのよ?」
俺は母を無視してスキルを発動。
「ぼびーばんぼべーぶぼ」
俺の掌にドス黒い魔力が発生。
それを宙に浮いたミルキスはガン見してきた。
その瞬間、ミルキスは俺を狙って高速で急襲――一直線に、飛んでくる。
俺の掌に新品のスマホが作成された。数日前スライムと戦った時にコピペした情報がまだ残っていたのだ。
だが、スキルの発動が間に合わない、そう思った時。
俺の目の前に父がいた。
壁になって、ミルキスの攻撃を受け止める。
「ぐぐぐ」
〖させて……たまるかぁあああああ!〗
グサリ、という鈍い音。
辺りに血が飛び散る。
父の体をミルキスの腕が貫通した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます