第52話 魔王〖○○○(○○○○○)〗
っぐ。
俺は芝生に転がった。
幸いなことに、俺は吹っ飛ばされたものの母が守ってくれたのと芝生がクッションになったのでダメージは軽微だった。
「ば、ばぶ」
だが事態は窮地と言って良い。
少し離れたところでは火を纏った教皇と魔王がバトルしている。
そして、空高く舞う魔王が詠唱するのが聞こえた。
〖殺試合(デスゲーム)、発動〗
な――。
ざわざわとする教皇軍。
上空に位置するエルフ魔王はニヤリと笑った。
〖ははははは、スマホに魔力を込め……鍛錬に鍛錬を重ねて、とうとうできるようになったわ。これで貴方達を倒してあげる!〗
なんてことだ。
あのスキルは本来俺専用スキル。それを魔力のごり押しとセンスで発動させたっていうのかよ。
あれを発動されてしまったら、大変だ。
〖出でよ、魔王軍〗
魔王ミルキスが手を振りかざすと、召喚陣があちこちに出現し多種多様な魔物が出てくる。
ドワーフやオーガ、オーク、コボルド、ウンディーネ、ドライアド、ケンタウロスまでいる。
まさに魔王軍の大軍団だ。
千名以上はいる。
いや、まだまだ増えていく。
教皇軍は一万名以上集めたらしいが、ミルキスが殺試合(デスゲーム)を発動させた今となっては数の有利などないに等しい。
そもそも魔物の方が人間より自力が上なのだ。
そして、俺の懸念通りのことが起こった。
空から十三本の支柱が降りてきて、空に天蓋のような魔法陣が、地にも魔法陣が設置される。
まずい、このままでは!
教皇が魔王ミルキスに突撃する。
足に火球を放ち、その噴出で飛んだようだ。
だが魔王ミルキスは難なくそれを放った。
「エルフ魔王……」
〖あはは、教皇。今日で貴方達は終わりです。じゃあ皆さん?〗
ミルキスは高笑いして告げる。
〖今から、殺し合いをしてもらいます〗
人間の兵士達は絶叫した。
恐怖に寄り逃げ出す者が多数現れ、もはや陣形は機能していない。
魔物がそこを魔法で狙い撃ちにし、ただでさえ劣勢だ。
なのに、魔王は追い打ちをかける。
〖魔王軍の者達に、「強化防壁」を設定。攻撃力はそのまま。さぁ教皇、どうしますか?〗
「っく……」
教皇は火球を足裏から放ち続け、宙に浮いたまま肩を震わせる。
俺も加勢したいが、どうしようもない。
〖あははは。どうしますか、教皇? 隠れている勇者に期待しますか? と言っても、全てのスマホを破壊したからもはや出てこないかもしれないですけどね。腰抜けなら戦って華々しく散るという考えもないでしょう〗
っち、言いたい放題言いやがって。
〖勇者よ、もしいるなら出てきなさい! あたし自ら殺してあげましょう!〗
上空にて高らかに魔王ミルキスは宣言した。
だが俺は、だぁとかばぶしか言えない。
一騎打ちしても勝てないが、相手の言葉を聞くことしかできないのであった。
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