第51話 魔王襲来
なんてこった、スマホが壊れちまった。
しかも、俺だけじゃなく他の人達のも。
どうしろってんだよ。
〘あー、あー、マイクのテスト中〙
ハスキーな声が王都に響く。
そしてその声が魔王の声だと教皇軍の全員が分かった。
絶叫する兵士達。教皇さえ、青ざめた顔になる。
「ゆ、勇者ユシア様! どうしましょう、スマホが使えないと貴方の戦力は」
「ば、ばぶぅ……」
俺は冷や汗を永しながら指をいじいじと弄る。
教皇は舌打ちする。
「っく。勇者もこうなれば役に立ちませんな」
「べ、べんぼぶばい」
「残念ですよ。これで我々は……最強の存在と再び対峙しなければならない。お逃げ下さい」
「!?」
教皇はまるで特攻隊のように決死の覚悟をしているようだった。
張り詰めた顔は聖職者というよりも、戦士と言った顔立ち。
これがこの世界で人類を守りに守ってきた英雄の顔ってわけか。
「足手まといです。戦場にただの赤子がいるなんて邪魔なんですよ。ゼウル、セレス、勇者様を頼みます」
「はい」
母が俺を抱えたまま教皇に頷く。
「ユシアを必ず逃がします」
「頼みましたよ。我々が足止めしている間、何としてもスマホを入手し……殺試合(デスゲーム)を発動させるのです。そうすれば必ずや、勝機はあります」
俺の父ゼウルが教皇に向かって、苦い顔を向ける。
父は耳に手を当てて、緑色の魔力が耳を覆っている。
「教皇様。しかし、もしかしたら、先ほどの攻撃は……人間の持つスマホそのものを攻撃したのではないでしょうか?」
「何!?」
「俺の風魔法で隣町の魔術師に聞いたところ、どうやら隣町の方でも全員壊れていると」
「ま、まさか……それでは、勇者殿が」
そうだな。
俺、ただの赤子になってしまったってことだ。
どうしよう。
と思ったら。
ソニックムーブが突如発生。
辺りの兵士が音速の刃に切り裂かれ、傷ついていく。
教皇も攻撃の余波を受けて、傷ついたらしい。
「っく」
〘あはははは。教皇、今日こそ貴方の終わりです〙
そこにいたのは、エルフ魔王だった。
天使が琴を弾いたかと思うほどに綺麗なハスキーボイス。
流れるような蒼髪と輝く緑色の瞳。
棚引いた黒マントが白い肌とのコントラストを成立させている。
綺麗だった。今まで見た誰よりも。
「ほのぼの炎!」
〘ほのぼの炎!〙
俺が考えた技を教皇と魔王が放つ。
むず痒いものがあるが、その威力は本物で人を殺せるだけの威力ある攻撃が宙で激突する。
ドン、という爆発が起きて俺も母もその他の人も皆吹き飛ばされるのだった。
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